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生放送! 霊視と除霊と暴言のオーケストラ

夏の夜の風物詩、ゴールデンタイムの生放送特番『真夏の心霊ミステリー・大除霊スペシャル』。

スタジオの祭壇の中央に鎮座するのは、金と紫の派手な装束に身を包んだ自称・天才霊能力者、天翔院てんしょういんヒミコである。「魂の声を聴く奇跡の霊媒師」として中高年の女性から絶大な支持を集めているが、業界内では「事前の身辺調査とコールドリーディング(話術)の達人」と囁かれる胡散臭い人物だった。


「先生、ピンマイクの位置を少し直しますね」


音響スタッフに扮したケンゾウが、ヒミコの背後に回り込む。そして、襟元を直すフリをして、彼女のこめかみにある秘孔をスッと突いた。


「あら、ご苦労様。……ん? なんだか急に頭が冴え渡ってきたわ」

「本番、5秒前! 4、3、2……」


重々しいBGMと共に、カメラの赤いランプが点灯した。司会者が深刻そうな顔で口を開く。

「さあ、続いては天翔院ヒミコ先生による、生放送での公開除霊です。最初の相談者は、最近原因不明の肩こりと不幸に悩まされているという、主婦のAさんです」


ヒミコは目を閉じ、数珠を擦り合わせながら、おごそかに口を開いた。


■ 霊視(コールドリーディングの暴露)

「視えます……。あなたの背中に、黒い影が……水にまつわる因縁ですね。ご先祖様で、水難事故に遭われた方が……いるわけねえだろこの情弱オバサン! お前の肩こりは単なる運動不足とスマホのいじりすぎだよ! スマホゲームに課金しまくって旦那と喧嘩したのが不幸の原因だろ! スタッフの事前アンケートに全部書いてあったわボケ! 私の霊視じゃなくてスタッフのリサーチ力に感謝しろ!」


スタジオが一瞬、シーンと静まり返った。相談者の主婦はポカンとしている。司会者が「せ、先生!? 何かに憑依されているのでしょうか!?」と慌ててフォローに入ろうとするが、ヒミコの暴走は止まらない。


■ 除霊の儀式(金銭欲求の暴露)

「ええい、悪霊退散! 迷える魂よ、光の元へ還りなさい!……還る前にお布施を置いていけ! 私の時給いくらだと思ってんだ! この祈祷水、中身ただの水道水だけど1本3万円だ! お前らの不安と不幸は私のタワマンの修繕積立金なんだよ! もっと泣け! もっとすがれ! そして私の口座に全財産ぶち込めヒャッハー!!」


ヒミコは白目を剥きながら、手元の数珠を振り回し、カメラに向かって中指を立てた。副調整室サブではディレクターが「CM! 早くCMに行け!」と叫んでいるが、ケンゾウの細工によりシステムはダウンしていた。


■ 心霊写真の鑑定(ヤラセの暴露)

放送事故をなんとか誤魔化そうと、司会者が強引にコーナーを進める。

「つ、続いては、視聴者から送られてきた心霊写真の鑑定です! 先生、この窓ガラスに映る顔は一体……!?」


モニターに、不気味な顔が映り込んだ写真が表示された。ヒミコはそれを一瞥し、鼻で笑った。


「ああ、これは強い怨念を持った地縛霊の……って、ただのガラスの反射じゃねえかバカヤロウ! 後ろで写真撮ってるおっさんのマヌケ面が映り込んでるだけだ! こんなモン送ってくんな暇人! だいたいな、本物の幽霊がカメラ目線でピースサインするか!? うちのADがPhotoshopで3分で作った合成写真の方がまだマシだわ! お前らの目は節穴か!!」


ヒミコはついに祭壇を蹴り倒し、「あー疲れた! 喉渇いたからドンペリ持ってこい!」と叫んで、セットの裏に消えていった。


■ 予想外の結末

「……ハッ! 私は一体、何を……」


楽屋に戻った瞬間、術が解けたヒミコは、モニターに映る大混乱のスタジオを見て崩れ落ちた。終わった。霊能力者としてのキャリアも、これまで築き上げた富と名声も、すべてがパーだ。詐欺罪で訴えられるかもしれない。


しかし、鳴り止まないディレクターのスマホの画面を見て、ヒミコは目を疑った。


『ヒミコ先生、最高すぎるwww』

『水道水3万は草。正直でよろしい』

『スマホの見すぎwww ド正論霊視www』

『心霊番組のヤラセを全部ぶっちゃける神展開』

『インチキを隠さない霊能力者、逆に好感度爆上がりなんだけど!』


なんと、視聴者はヒミコの「霊視」を信じていなかったどころか、薄々インチキだと気づいていた上でエンタメとして消費していたのだ。そして、本音を大暴露した彼女の潔い(?)暴言が、マンネリ化していた心霊番組に全く新しい風を吹き込んでしまった。


翌日、ヒミコの元にはクレームではなく、バラエティ番組からの「毒舌コメンテーター」としてのオファーが殺到した。


「……私の時代が、来たのかもしれないわね」

インチキ霊能力者は、開き直って新しいペルソナを被る決意をした。


そのニュースを、ケンゾウは安アパートでカップラーメンをすすりながら見ていた。

「まぁ、インチキがバレて面白くなったんなら、結果オーライか」

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