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三ツ星シェフの暴言フルコース

今回は「権威と芸術性の頂点」とも言える、三ツ星フレンチシェフの化けの皮を剥がしてみましょう。


高級レストラン特有の「スノッブ(気取った)な空間」と、シェフが抱える「究極の飲食業のストレス」が、密着ドキュメンタリーのカメラの前で大爆発するシミュレーションです。


銀座の一等地に店を構える完全予約制の三ツ星フレンチ「メゾン・ド・ルミエール」。オーナーシェフの神宮寺じんぐうじは、「食材の声を聴く天才」「皿の上の哲学者」と称され、常にメディアから引っ張りだこの料理界のカリスマである。


今日は、国民的な密着ドキュメンタリー番組『プロフェッショナルの真実』の撮影最終日。厨房には張り詰めた空気が漂い、カメラマンが神宮寺の神聖な調理風景にレンズを向けていた。


音声スタッフとして現場に潜り込んでいたケンゾウは、ブームマイク(長い棒の先についたマイク)を下ろすふりをして神宮寺の背後に回り込み、すれ違いざまに厨房の死角でこめかみの秘孔を鋭く突いた。


「……ん? 今、首筋にハエでも止まったか?」

「カメラ回ってます。神宮寺さん、料理への哲学をお願いします」


ディレクターの合図で、神宮寺はフライパンから顔を上げ、カメラに向かって優雅に微笑んだ。


■ 食材と味付けへの本音

「私の料理の基本は、大地の恵みと生産者の想いをリスペクトすることです。素材が持つ本来の命の輝きを……って、んなモン聞こえるか! 結局はな、バターと生クリームと塩を親の仇みたいにぶち込めば、お前らみたいなバカ舌は『濃厚で深みがある』って絶賛するんだよ! 朝市でこだわりの無農薬野菜買ってるけどな、足りねえ時は裏口から業務スーパーの冷凍ブロッコリー混ぜてんだよ文句あるか!」


カメラマンの肩がビクッと跳ねた。ディレクターが「えっ?」と声を漏らすが、神宮寺の手は一切狂うことなく、完璧な手つきでソースを混ぜながら暴言を吐き続ける。


■ スペシャリテ(看板料理)への本音

「さあ、これが当店のスペシャリテ『仔牛のロティ、黒トリュフの香り』です。このトリュフの芳醇な香りが……ただの黒いキノコだろうが! 原価の10倍取れるから削りまくってんだよ! お前らどうせトリュフと干しシイタケの違いも分かんねえだろ! 皿の上に削りカス落とすだけで『きゃー!』って喜ぶインスタ蝿どもめ! 見た目だけで味なんか分かってねえくせに!」


■ 客への本音(怒りのピーク)

「お客様が一口食べた瞬間の、あの至福の笑顔を見るために、私は毎日厨房に立って……いねえよ! 料理が運ばれてきてんのに10分もスマホで写真撮ってんじゃねえ! 冷めてマズくなるだろうが! ウンチク語りながら食ってる成金IT社長とパパ活女子のカップル、厨房から見てて吐き気がするんだよ! ワインの味も分かんねえくせに『フルボディが〜』とか語ってんじゃねえ! さっさと食ってドンペリの金払って帰れ!」


厨房のアシスタントたちが、手に持っていたお玉やトングを次々と床に落とした。神宮寺の右腕であるスーシェフは、あまりのショックで白目を剥いている。


■ 料理人としての究極の本音フィナーレ

「……料理とは、私の人生そのものです。フランス料理の歴史と伝統を……あー疲れた! フランス料理なんか毎日食えるか胃もたれするわ! 営業終わった後の深夜、誰もいない厨房で立ち食いする『どん兵衛』が世界で一番美味いんだよ! あとコンビニのファミチキ最高! ミシュランの星なんかメルカリで売れるなら今すぐ叩き売ってやるわ! ラーメン屋に転職してえええ!!」


神宮寺は完璧で美しい一皿を完成させると、「チーン!」とキッチンのベルを乱暴に鳴らし、**「ほらよ! 5万円のボッタクリ定食一丁上がりだ! 豚の餌の時間だぞ!」**と絶叫した。


■ 予想外の結末

「……ハッ! 俺は一体何を……!?」


術が解け、自分が放った言葉の意味を理解した神宮寺は、完成した『仔牛のロティ』の横で崩れ落ちた。ドキュメンタリー番組はお蔵入り……になるはずだった。


しかし、番組の末端スタッフがこの「ノーカット映像」を動画サイトに流出させてしまったのだ。

ネットは大炎上するかと思いきや、反応は予想外のものだった。


『言ってることめちゃくちゃ正論で草』

『業務スーパーのブロッコリー使って三ツ星取れるなら、それはもう本当の天才だろww』

『深夜のどん兵衛が一番美味いのはガチ。シェフに親近感湧いた』

『パパ活カップルへのヘイト高すぎて最高。俺もこの店行きたい』


「気取った高級フレンチ」というイメージは完全に崩壊したが、代わりに**「客を金ヅル・豚扱いする、ロックすぎる正直者シェフ」**として謎のカルト的な人気が爆発。


「シェフに直接罵倒されながら、業務スーパーの野菜が混ざった5万円のコースを食べる」という究極のエンターテインメント(あるいはドM向けのプレイ)を求めて、新たな富裕層やYouTuberからの予約が殺到。「メゾン・ド・ルミエール」は、向こう3年先まで予約が取れない超人気店になってしまった。


数ヶ月後、テレビのグルメ番組では、客に向かって「さっさと食え豚野郎!」と元気に怒鳴りながら、裏でこっそりファミチキをかじる神宮寺の姿があった。


ケンゾウはスーパーの惣菜コーナーで値引きシールが貼られたコロッケをカゴに入れながら、小さく呟いた。

「まあ、嘘だらけの料理より、スパイスの効いた本音の方が美味いってもんだ」

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