疑惑のフェミNPOシスターフッドと告発の秘孔
「音響のチェック、入りまーす」
とある都内の高級ホテルで開催された、女性支援NPO団体『シスター・ガーディアン』の大規模な資金集めシンポジウム。代表を務めるのは、メディアにも引っ張りだこの社会活動家、音無麗子。彼女は「弱者に寄り添う女神」として熱狂的な支持を集める一方で、ネット上では「助成金の使途が不透明」「フェミニズムを盾にした貧困ビジネスでは?」という疑惑が絶えない人物だった。
作業着姿のケンゾウは、胸元のピンマイクを調整するフリをして音無に近づき、すれ違いざまに彼女のこめかみにある秘孔を、親指で鋭く、かつ気付かれないよう浅く突いた。
「……ん? 今、何か……」
「マイク、問題ありません。本番どうぞ」
ケンゾウは静かに袖へ下がる。会場には数百人の支援者と、多数のメディアのカメラが入り、ネットでの生配信も始まっていた。万雷の拍手の中、音無麗子は壇上に立ち、慈愛に満ちた表情でマイクを握った。
■ 支援対象者への本音
「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。私たちは日々、困難な状況にある女性たちに寄り添い、共に歩んでいます……って、寄り添うわけねえだろこの金ヅルどもが! お前らの不幸は私の高級フレンチのスパイスなんだよ! もっと底辺這いつくばって、じゃんじゃんウチに相談に来い! お前らが泣けば泣くほど私への寄付金が増えるんだよ!」
会場の空気が一瞬で凍りついた。最前列で涙ぐみながら聞いていた女性支援者たちが、ポカンと口を開けている。しかし、音無の口は止まらない。慈愛の笑顔のまま、猛毒が機関銃のように連射されていく。
■ 公金・助成金への本音
「活動を広げるためにも、国や自治体からの公金による助成金の増額が急務です。……じゃねえと私のタワマンの家賃と外車のローンが払えねえんだよ! 働きバチの納税者ども、お前らの血税は私の新作ブランドバッグに変わるんだよ! 領収書なんて適当に黒塗りしてシュレッダーかけりゃバレやしねえ! 黙って私に貢げクソバカどもが!」
司会者が慌てて「音無代表、お疲れのようですね!?」と止めに入ろうとするが、音無は司会者を突き飛ばし、カメラのど真ん中を指差した。
■ 男性支援者への本音
「私たちの活動に賛同し、支援してくださる男性の皆様にも深く感謝申し上げます。……してるわけねえだろこの下心丸出しのキモオタ童貞どもが! 『僕たちは女性の味方です』ヅラしてすり寄ってきやがって! キモいんだよ息くせえ! お前らは私の承認欲求を満たすATMとしてだけ機能してろ! あわよくばお近づきになれるとか1ミリも思ってんじゃねえぞ豚が!」
会場から悲鳴が上がり、数人の男性支援者が膝から崩れ落ちた。
■ 活動理念への本音
「最後に……私たちは、すべての人が平等で、差別のない平和な社会を目指して……どうでもいいんだよそんなもん!! 差別や男女対立がなくなったら私のシノギ(商売)がなくなるだろうが! 永遠にネットで男と女でいがみ合って燃え上がってろ! 炎上は金になるんだよヒャッハー! 私は弱者の味方じゃない、自分の金と権力の味方だ! ざまぁみやがれ!!」
■ 予想外の結末
「……ハッ!?」
そこでようやく術が解け、音無は自分が口走った内容を理解し、その場にへたり込んだ。
会場は阿鼻叫喚の地獄絵図。スポンサーは激怒して帰り支度を始め、メディアのカメラマンはここぞとばかりにシャッターを切る。
しかし、この事態が最も盛り上がったのは、生配信のコメント欄だった。
『伝説の自白配信キターーーー!!!』
『知ってたwwww』
『ここまで清々しいクズっぷり、逆にファンになったわ!』
『領収書黒塗りって完全に自白してて草。特捜部出番だぞ!』
『「炎上は金になるんだよヒャッハー!」は今年の流行語大賞確実』
翌朝のニュースは、この「前代未聞の本音大暴露フェス」一色に染まった。
結果として、この配信が決定的な証拠(自白)となり、警察と国税局がNPOの事務所にガサ入れ(強制捜査)を敢行。莫大な公金の私的流用が発覚し、音無麗子は逮捕されることとなった。
皮肉なことに、彼女が逮捕される瞬間を捉えた映像は、彼女がこれまで作ってきたどの啓発動画よりも再生数を稼ぎ、ネット上の「男女の諍い」を一時的に休戦させ、全員を大爆笑の渦で団結させるという、謎の平和をもたらしたのであった。
ケンゾウは安アパートのテレビでそのニュースを見ながら、発泡酒を一気に飲み干した。
「さて、次は誰の心の鍵を開けてやろうか」




