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不祥事を起こした政治家の記者会見に潜入

前回のニュース番組での「白石アナウンサー暴言事件」から数週間後。

音響スタッフのケンゾウは、都内高級ホテルの大宴会場にいた。本日は、裏金問題と愛人への公費流用疑惑で世間から猛バッシングを浴びている大物議員、権田ごんだの謝罪会見が行われるのだ。


権田は「記憶にない」「秘書が勝手にやった」を魔法の言葉として使い倒す、政界きっての老獪なタヌキ親父である。今日も、神妙な顔をして頭を下げ、適当に嵐が過ぎるのを待つ腹積もりだろう。


ケンゾウは会見卓のマイクの位置を直すフリをして、登壇してきた権田に近づいた。

「マイク、少し調整しますね」

すれ違いざま、ケンゾウの指先が権田のこめかみの秘孔を正確に打ち抜いた。


「……ん? なんか今、チクッとしたな」

首を傾げる権田をよそに、無数のカメラのフラッシュが焚かれ、会見が始まった。


■ 開口一番のご挨拶

権田は深く頭を下げ、神妙な面持ちでマイクに向かった。


「この度は、私自身の政治資金に関する問題で、国民の皆様に多大なるご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げ……るわけねえだろこの下民どもが! お前らが納めた小銭で俺が豪遊して何が悪いんだよ! 感謝して土下座しろクソムシども!」


会場の空気がピシッと凍りついた。

数百人いる記者たちが一斉に耳を疑い、ペンの動きを止めた。権田の隣に座っていた弁護士が「ギョッ」として権田の腕を掴むが、権田の口は止まらない。本人の目はパニックを起こしているが、口角は凶悪に吊り上がっている。


■ 記者からの質疑応答(という名の公開処刑)

記者A:「権、権田議員! 今の発言は本心ですか!? 秘書の方が不正に資金をプールしていた件について、本当にご存知なかったと……?」


「ですから、私は一切関知しておらず、詳細については現在調査中で……って言うに決まってんだろバカかお前! 全部俺が『バレないように裏帳簿作れ』って命令したんだよ! 秘書なんていざという時の肉盾だ、大人しくブタ箱に入ってろカス!」


記者B:「(ざわめく会場の中で立ち上がり)銀座の高級クラブでの飲食代、5000万円以上が政治活動費から支出されています! これも調査研究ですか!?」


「それは……支援者との意見交換の場でして、政治活動の一環として必要な……チャンネーの胸の谷間に万札ねじ込むのが一番のストレス発散なんだよ! お前らの血税で飲むドンペリは最高に美味いぜヒャッハー! 悔しかったらお前らも政治家になってみろ底辺どもが!」


弁護士が必死にマイクを取り上げようとするが、権田は謎の怪力を発揮してマイクを死守し、さらに吠え続ける。


記者C:「(半ば興奮状態で)議員辞職はされないんですか!? これだけの事実が明らかになって、責任を取らないつもりですか!」


「私としては、引き続き国民の皆様のために粉骨砕身、職務を全うしたいと……辞めるわけねえだろが! まだまだ甘い汁チューチュー吸い尽くしてやるよ! 選挙なんてな、適当に頭下げてアホなジジババ騙せば一発で当選なんだよ! 選挙カーから手振ってる時、心の中でお前らのことチンパンジーだと思って見てるからな! ウホウホ言ってみろ!」


■ 伝説の会見の結末

「……以上で、会見を終わります。あーあ、早く帰って愛人の胸揉みてえ!」


ついにSPと秘書たちが総出で権田に飛びかかり、無理やり口を塞いでステージ裏へと引きずり込んでいった。フラッシュの嵐と「権田議員! まだ質問が!」という記者たちの怒号が飛び交う中、会見は強制終了となった。


しかし、この会見は全て生中継されていた。

SNSの反応は、怒りを通り越して異常な盛り上がりを見せていた。


『権田議員、ついに本音を大暴露www』

『清々しいほどのクズ! 逆に好感度上がった(上がってない)』

『税金ドンペリ最高ぜヒャッハーは今年の流行語大賞確実』

『秘書を肉盾呼ばわりwww 腹痛いwww』

『チンパンジーから一票入れさせてもらいますわウホウホ』


政治家としての生命は完全に絶たれたが、権田は「日本一正直すぎる悪徳政治家」として、ネット上の永遠のおもちゃ(ミーム)となった。さらに、この発言が決定的な証拠となり、翌日には検察のメスが入り、権田はあっけなく逮捕されることとなった。


騒然とする会場の片隅で、ケンゾウは機材を片付けながら小さく呟いた。

「さて、綺麗に録音もできたし、帰るか」

彼の指先は、すでに次のターゲットを求めていた。

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