味の地獄箱やー! ~正直すぎる食レポロケ~
「はい、カメラ回ります! 3、2、1……」
お茶の間で大人気のぽっちゃり体型グルメリポーター、福麻呂は、今日も満面の笑みでカメラに向かって両手を広げた。彼の代名詞は、大げさでポエティックな食レポの数々。今日は昼のワイドショーの目玉企画『福麻呂の、秋の満腹グルメ巡り・生中継スペシャル』だ。
音声スタッフとしてロケ隊に潜入していたケンゾウは、福麻呂にピンマイクを取り付けるふりをして、そのこめかみの秘孔にスッと指を滑らせた。
「ん? なんかチクッとしたで……まあええか」
福麻呂は気を取り直し、最初の店に足を踏み入れた。
■ 1軒目:行列のできる「超コッテリデカ盛りラーメン店」
「さあ、やってきました! 若者に大人気のラーメン『豚の限界』さんです! 見てくださいこの山盛りのモヤシと、雪のように降り積もった背脂! まさに、丼ぶりの冬景色や〜……」
店主がドヤ顔で腕を組む中、福麻呂の顔からスッと笑顔が消えた。
「……って、ただのラードの塊じゃねえか! ギトギトすぎて血管詰まらせて殺す気か豚野郎! だいたい床もヌルヌルしてて危ねえんだよ、保健所の前に清掃業者呼べ! 旨味? 違うね、これ化学調味料の致死量だよ! 食った後ずっと舌がビリビリしてんだよクソが!」
生放送のスタジオが凍りついた。腕を組んでいた店主の顔面が蒼白になり、ロケディレクターが「カメラ止めろ!」とジェスチャーするが、生中継のため止まらない。福麻呂はそのまま次の店へと歩き出してしまった。
■ 2軒目:原宿の「超SNS映え・高級パンケーキ店」
「気を取り直して、2軒目です! こちらは若い女性に大人気のカフェ! 見てくださいこの10段重ねのパンケーキに、カラフルなマカロンと生クリームのタワー! まさに、スイーツの遊園地や〜……」
パステルカラーの店内で、若い女性客たちがスマホを構えて見守る中、福麻呂の口から再び猛毒が噴射される。
「……って、原価50円の粉に合成着色料ぶっかけただけで2800円!? ボッタクリもいい加減にしろ! こんなケミカルな味のスポンジ食って喜んでるメス豚ども、お前らの舌は便所スリッパか! 『もったいなくて食べられな~い』じゃねえよ、写真撮るのに10分もかけてるからアイスがドロドロに溶けて地獄絵図になってんだろ! さっさと食って帰れバカ女ども!」
店内に悲鳴が響き渡り、泣き出す客まで現れた。ディレクターは胃薬を水なしで飲み込んでいる。
■ 3軒目:完全予約制の「頑固オヤジの高級寿司店」
「さ、最後は路地裏の名店! 予約半年待ちの高級寿司店です。大将が握るこの大トロ、見事なサシが入ってますね! まさに、海の宝石箱や〜……」
和服姿の厳格な大将が「ウチは醤油つけないで、そのまま食ってくれ」と渋い声で言った瞬間、福麻呂のボルテージが最高潮に達した。
「……って、大将の態度がデカすぎるんだよ! なにが『そのまま食え』だ、客の好きに食わせろハゲ! こっちは金払ってんだよ! だいたい、魚切って酢飯に乗せてるだけだろうが! 偉そうに『修行10年』とか語るな、機械が握った100円寿司のほうがよっぽど温度管理されてて衛生的で美味いわ! お前が握るとオッサンの手汗の味がすんだよ! このスノッブな空間で食えば美味く感じるって勘違いしてる客も客だ! 目ぇ覚ませ!!」
大将が包丁を握りしめて激怒し、ADが必死に羽交い締めにして止めるという、放送事故の歴史に残るカオスな映像が全国に生中継された。
「……以上、福麻呂のグルメ巡りでした。あーあ、早く帰ってどん兵衛食いてえ!」
■ 予想外の結末
放送終了後、テレビ局の電話回線はパンクした。
しかし、その9割はクレームではなく、歓喜の声だった。
『福麻呂おもろすぎwww 腹抱えて笑った』
『パンケーキ屋のボッタクリ、よく言ってくれた! あれマズイのに誰も言えなかったんだよ!』
『頑固オヤジの寿司屋への説教マジでスカッとした。手汗の味www』
『これぞ真のグルメレビューだ。忖度だらけの食レポ時代は終わった!』
『食べログの星より、福麻呂の暴言を信じるわ』
なんと、この「正直すぎる(そして口が悪すぎる)食レポ」が視聴者の心を完全に鷲掴みにしてしまったのだ。飲食店のステマや過剰な宣伝にうんざりしていた世間にとって、彼の暴言は一筋の光となった。
結果として、福麻呂は『忖度ゼロの毒舌グルメレビューア』として再ブレイク。彼が「マズイ!」と怒鳴った店は「逆にどれくらいヤバいのか見てみたい」という怖いもの見たさの客で連日大行列となり、飲食業界に謎の経済効果をもたらすことになった。
「さて……次は通販番組の実演販売士でも狙ってみるか」
ケンゾウはモニターで福麻呂の勇姿を見届けながら、立ち食いそばをすすった。




