10/37
再臨の予兆 Chapter 1:平和の兆しと小さな不安
春の光が村を柔らかく包み、花々の香りが風に乗って漂っていた。
エリナはアルトと共に村外れの畑を歩きながら、芽吹いたばかりの小麦の穂を指でそっと触れた。
「見てください、アルト様。去年よりもずっと元気に育っています」
「本当だな……やっぱり君のおかげかもしれない」
アルトは照れくさそうに微笑む。
彼の横顔は朝日に照らされ、穏やかで安心感に満ちていた。
村人たちも畑仕事に励み、子供たちの笑い声が遠くから響く。
噴水の水が光を反射し、まるで小さな虹が生まれたかのようにキラキラと揺れた。
しかし、エリナの胸には微かな不安があった。
遠くの空に僅かな黒雲が漂い、風向きがいつもと違う。
「何か、少し変ですね……」
アルトもそれに気づき、眉をひそめた。
「平和だからといって、何も起きないとは限らない……」
二人は言葉少なに、空を見上げる。
平和な日常の中にも、世界は少しずつ変化しているのかもしれない――そんな予感が、静かに二人の胸をざわつかせた。
畑を抜けて村の広場に差し掛かると、子供たちが元気に遊んでいた。
エリナはその笑顔にほっと息をつく。
「大丈夫。私たちが守ります」
その決意はまだ小さな光に過ぎなかったが、確かに未来へと繋がる力だった。




