5.幸せだった頃
ーー昔は仲の良い親子だった。お母様の浮気が発覚して、私がお父様の本当の子供ではないと分かるまでは。
お母様の事を心の底から愛していたお父様は酷く心を病み、成長するにつれてお母様に似ていく私を視界に入れることすら嫌がった。食事を一緒に取らなくなって、私の部屋もお父様の部屋から1番遠い場所へと移された。さらには仕事だと言って滅多に家に帰ってさえ来なくなった。今なら分かる。きっとお父様は仕事ではなく、私に会いたくなかっただけなんだろう。そうして私たち親子は会うことすらなくなった。1人になった私はレイがいなければとっくに壊れてしまっていたのではないかと思う。
そんな生活が何年も続き、ようやく慣れてきた頃、突然お父様は新しい母と妹を連れてきた。初めは、お父様にまた好きな人が出来て、お母様の事なんか忘れて、新たな家族として皆んなで幸せに暮らしていけるんだと思って嬉しかった。でも、私は初めからお父様にとって「家族」じゃなかった。だから私の家族は、大切なのはレイだけ。あの時にお父様と家族になる事を私は諦めてしまった。
…諦めたはずなのに、何もしなくても周りの人から、お父様から愛されるリリーナが羨ましくて、…憎くて。そんな事を考えてしまう自分が大嫌いで。
…ねぇ、お父様。どうしたら私を愛してくれますか?