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本庄先輩と大島の密会は、週に三回だった。
大島は服を脱ぐ事はないが、本庄先輩だけは、毎回のように全裸だった。一度だけ、制服を着たままという事があったが、それきりだった。大島は本庄先輩の乳房と性器をこよなく愛しているように見えた。新しい玩具を手に入れた子供の様に色々な体位を試しては、彼女の身体を楽しんでいるようだった。
彼女自身を愛しているのか、どうなのか。俺はそこに関しては無関心を貫いているが、俺の眼から見た大島は、ただの肉欲に気が狂った獰猛な獣以外の何物にも見えなかった。
それに対してされるがままの彼女は、足を折られた小鹿のようだった。戦意喪失して、相手を伺い従う最下層の生き物。
付き合っているというのだろうか、こういうものを。
俺は窓辺に寄りかかりながら、曇り硝子越しに本庄先輩を見つめた。相変わらず張りのある白く膨らんだ乳房は綺麗だった。
視力が良いせいか、彼女の尖った乳首がうっすら見える気がする。
俺は手に持っていた紙パックジュースのストローを前歯で噛んだ。つるりとしたプラスチックの歯触りや舌触りとはやはり違うんだろうな。なんて思いながら、本庄先輩のそれを夢中で吸い始める大島を眺めた。
不思議な事に、何故か二人の激しいセックスを目の当たりにしても、性的興奮が起こる事はなかった。以前その事に関して、不安になり、ネットに転がっているAVを漁って見た事がある。すると、あっけなく俺の性器は元気になったので、どうやら俺はこの事に関しては常に冷静でいるようだ。
セックスは激しいが、気持ちはどこか、動物園のショーを遠くから興味なく眺めているような感覚に近かったせいかもしれない。猿が輪投げを上手く決めるか、大島が激しく腰を振っているかだけの違いだ。そこに大きな差はなく感じた。
先輩が言うように、彼女を醜いとは思えないが、すごいとも性的興奮も起こらない。俺にとっては非生産的な視覚が見せるただの映像に過ぎなかった。
けれど、そんな中にも、心臓が跳ね返る瞬間がある。
俺はストローから口を離して、彼女を見つめた。彼女もまた、俺を見ていた。
窓ガラスの汚れのせいで、彼女の顔は表情がぼやけたりくっきりしたりと、揺さぶられ方によって、遠退いたり近づいたりしていたけれど、ああ、先輩は今俺を見ているな。と、分かる瞬間があった。それと同時に、本庄先輩が一体何を愛しているのか分からなくなった。
何の為に、このくだらない情事を繰り返しているのだろう。彼女は何を考えているのだろう。
全てが分からなかった。ただわかる事は、本当に大島が好きなのかと聞いたら、彼女は首を傾げて、
「流されたから分からない」
と、微かに笑って答えるだろう、という事だけだった。