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影鬼  作者: ぶきっちょ
1/1

おいしい影の食べ方


「次は…くんが鬼だよ」

まだ幼い声が静かに夕前の公園に響く


「踏まれてないよ」

もう一つの幼き声が時を置いて重なる


踏まれてない 


それは間違いないと思う 


「ふふっ」


妖艶な笑みと共に少女だったはずの“それ”は女性の声で語る 


「貴方の心の影を踏んだのよ」


心の影?何だそれは


「そんなルールはない筈だ…」


先程の声とはまるで別物の変わりを経た囁きは、いつしか暗闇に包まれた公園に溶けていった。 


「仕方ないじゃない。今の貴方、心の影の方が大きいのだから。」


汗がぶわっと吹き出し、重たい瞼が開く。

そこは見慣れた天井だった。


…夢か 



夢に図星を突かれた事に驚いたが、よく考えれば自分の夢だから成せた業であろうと思い直す。 


もうじき自分を殺すのだから。


少なからずその事に罪悪感を感じたのだろう。


ここまで無償の愛で育ててくれた親を裏切るのだから。


だが、仕方ない事なのだ。


こればかりは誰かが解決してくれたりはしない。



しかし不思議な感じの夢を見たものだ。

未だ刻銘に夢の情景が思い浮かぶ。


最期の夢になるのだろう。


まだ醒めきっていない頭で思案を巡らすうちに意識はまた深い闇へと引き込まれていた。 



夢は見なかった。


 

第一章

『影喰い』 






どうしてこんな事になったのだろう。 


自分が望んだのは普通の高校生活。



友達 

部活 

恋愛 



全てを手に入れたかった訳ではない。


一つでも掴み取れていたならば、こんなことにならずに済んだのかもしれない。

しかし手遅れだった。 


高校に入学して一年間は部活こそ辞めてしまったものの友達は居たし、彼女と呼べるものも自分にはあった。 


だが、それは望んでいたものではなかった。


友達と呼んでいたそれは上辺だけの“オトモダチゴッコ”だった。 


一人は嫌だ 


そんな気持ちは自分だけでなく他人も持っていた。


だから、お互い嫌われないようにだけ気を付ける付き合いをしていた。 


相手の深いところにまで踏み込まない。


そんな暗黙のルールが出来上がっていた。


互い互いがクラスで孤立してない事を見せ付ける飾りでしかない。 


月日が経ちクラスが替われば、その飾りは自分の周りから消えてしまっていた。


当然だ。


その役目を失えば、また新たな飾りを必要とする。 

その友達だったものもまた新たな飾りを新たな教室で探しているのだろう。 


彼女だって自分にとっては同じような飾りだったのかもしれない。


自分は高校生活が上手く行ってると言う他者への見せ付けだったのだろう。 


相手の深くを知ろうとしない自分に恋人など長く続くはずもなかった。


高校二年の春、周りには何もなかった。



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