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たわいもないこと  作者: 渡邉 一代
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入れ歯騒動

 あっ、そうそう、父のことでもう一つ思い出した事がある。それは入れ歯の話だ。

 入れ歯と言っても総入れ歯ではなく、部分入れ歯なんだけれど、まぁその入れ歯を父がたまにしていたのだ。

 ちゃんと歯科で作って貰った入れ歯なんだよ、けどもね、無くても困らないのか、気が向いた時しか使っていなかったみたいだった。

 それは何処に閉まっているかと言うと、台所の水屋の引出しに確かティッシュとかで包んで閉まっていたの。それが正しい治し方何かどうかなんて、まるで気にしない人だった。

 ある時ね、その父が台所でね、「入れへん入れへん。」って言っていたのよ。何が入れへんって言ってるんやろうって思うじゃない。

それで母がね、「どないしたん?」って父に聞いたのよ。

「入れ歯が入らんのや。」って言ったんだよ。横で聞いている私も、そんなことってある?って思って母と顔を見合わせてたんだけど、実際に入ってなかった。

 すると母がまた父に尋ねたの。

「お父さん、その入れ歯何処にあったやつ?」

「えっ、窓のとこ。」

「お父さん、それ、私のや。お父さん引き出しに仕舞い込んでるん違うの。」

そう、父が入れへんと言っていた入れ歯は、母のものであったのだ。

 そのことを知った母は呆れて笑いながらも怒っていたが、父はしゅんとしていた。その横で私は大爆笑。三者三様の表情をしていた。

 入れ歯も毎日使用していれば、こんなことにはならないのだろうけれど、たまたま母も同じように部分入れ歯だったので、窓際できちんと消毒している部分入れ歯を、思い立ったかのように自分のものと思い込み口に入れたのだ。

 その日父は母に怒られ災難だったが、別の意味で母も災難だった。

 母は父の口に入った自身の入れ歯を丁寧に洗い、再度消毒をするはめになったので、食べる物も柔らかいものを食べなければならず、その後私は母の愚痴を聞かされる羽目になってしまった。

 


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