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たわいもないこと  作者: 渡邉 一代
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クラゲ

 小学生の頃、毎年夏休みに母方の祖母の家に何日も泊まりがけで遊びに行っていた。

 祖母の家は山の麓にあり、坂道を下ると海水浴場、その横には山から流れてくる小さい川が海に流れ込んでいた。

 午前中、その日やるべき夏休みの宿題を終わらせて、水着に着替え、従妹弟達と一緒に海に繰り出すのだ。

水着といっても、海水浴用に買ったものではなく、真っ黒だったか濃紺だったかのスクール水着だ。

 子供達四、五人で浮き輪やビーチボール何かをもち、ビーチサンダルを履いて砂浜に降りたつのだ。

 海に入ったり、冷たい川に入ったり、砂に埋もれてみたり、お陰で肌は焼けて真っ黒になる。この頃は日焼けなんてまるで気にしなかった。毎年どれだけ日焼けするかと言うのが、私の中でのステータスになっていた。

 海に入れるのはお盆位まで、その後は入らない。というより家に帰ってしまうのだけれど、クラゲが沢山出てくるからって言われたような気がする。

 それから年数が経ち成人してからだったか、それとも学生の頃だったかは覚えてないけれど、久々に祖母の家に行き、従妹と海に入って少し深い所で顔を海につけた時、唇に刺すような痛みが走った。まぁその歳で顔を海水につけるのもどうかと思うけれど、何を思ったのか、私は顔をつけたのだ。

 慌てて顔を上げると今度は足にも痛みが走った。

 私は怖くなり、急いで海からあがり祖母の家に引き返し、洗面所の鏡を見ると、唇がぷくっと腫れていた。足もミミズ腫れになっていた。

 私の顔を見た叔父には笑われながら、「クラゲに偉いとこ刺されたのぅ。」と言われた。

 クラゲに刺されるのはこんなに痛いものなのかと、腫れた唇を見る度にショックを受け悲しくなった。

 祖母の家から帰ってきて、皮膚科に直行して塗り薬をもらい、その後しばらくマスク生活になったのは言うまでもないが、それから海に入るのが怖くなった。

 今はしっかり日焼け止めを塗り、出かける時は長袖を常に着ている。勿論水着姿もお目見えしていない。

 あっ、潮干狩りは行ったけど、私が直近で海に近づいたのはその時くらいだ。

 クラゲって、水族館でフワフワ浮いてるのは可愛く思えるんだけどなぁ。まぁいづれにせよ、見た目と中身は違うものである。

 腫れた唇は一ヶ月程もすると、殆どわからないくらいまでおさまり治っていた。

 

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