家族で
「俊人~、ご飯で来てるわよ~」
「今行くよ、お母さん。」
この世界に転生してから7年たった。
俺は7歳になり、言葉も思うように話せるようになってきた。
親の目を盗んでこの世界のことについて調べてみた結果…
どうやらこの世界では魔法とかそんなものはないが、それに似たものがあることが分かった。
どのような点で違うかというと、魔法などのファンタジーみたいなものは自分の中にある魔力の量とか適性の属性とかそんなものがあるが、この世界では9歳になると能力が付与されるらしい。
あまり詳しくは分かっていないが、教会で神父様を通して神様が与えてくれるみたいだ。
「うわっ!」
急いで階段を下りていたからか、途中でつまずいて階段から落ちてしま…
「よっと。」
わなかった…
これがこの世界の能力らしい。
「危ないから階段はゆっくり降りるようにしてね?俊人。」
「うん。お母さん。」
今のは俺のお母さんの能力だ。
お母さんの能力はテレポートさせる能力。
自分を移動させることはできないが、小さなものなどはテレポートで移動させることができるのだ。
俺みたいな幼児ならテレポートさせることもできるのだが、10歳以上の子供は無理らしい。
能力は鍛えれば強くなるからお母さんも鍛えたら大きい物もテレポートさせれるし、10歳以上の子供もテレポートさせることができる。
俺は階段から転げ落ちそうになったところをテレポートでお母さんの元まで移動させられた。
「ささ、冷めないうちに食べなさい。」
「いただきまーす。」
今日の料理は野菜炒めに似たものだ。
この世界は俺が元いた世界と変わらないところもある。
例えば今俺が住んでいるこの国。
名前は日ノ本国という名前だ。
元の世界では日本という国だったが、そこまで歴史が変わっているわけでもない。
ただ、違うところがあるというのならば普通に軍隊を持っている。
そう、この世界の日本、もとい日ノ本国は第二次世界大戦と似た戦争に参戦しておらず、事実上、まだ負けたことがない国なのだ。
でも、戦争に参加しなかったとはいえ、戦前の日本と同じ感じではなく体罰などのことがないのである。
「お父さん、今日も遅いね。」
「…うん。」
俺のお父さんはこの世界では軍人をしており、日ノ本国の将校らしい。
この国の軍隊も日本軍みたいな厳しさもなく、比較的自由があるみたいだ。
「ただいま~、いや~遅くなってしまったわい。」ガチャ
噂をすればなんとやら。
帰ってきたみたいだ。
「も~あなた!俊人もいるんだからもう少し早く帰ってこれないの?」
「いや、部下が飲み会に誘ってくるのだから仕方ないだろう?」
「もしかしてあなた…飲んだの?」
「い、いや、飲んでなんか無いぞ!?」
嘘だ。
お父さんは将校という立場だから帰りが遅くなるのは仕方がないと思っているが、毎回夕食の時間帯ギリギリに帰ってくる。
普通将校という立場ならば家に帰ってこない日もあると思うのだが、お父さんは毎日帰ってくる。
「俊人も寂しかったでしょ?」
「いや…そんなには…」
「ええ!?」ガーン
あ、お父さんがうずくまって隅っこで泣き始めた。
「寂しくないように無理して毎日家に帰ってきてるのに…」しくしく
「こら俊人!お父さんに向かってそんなこと言っちゃダメでしょ?」
お母さんが先生みたいなこといいだしたんだが…
「ほら、お父さん泣いてるでしょ?ごめんなさいできる?」
「…できる。」
少し不服だが仕方がない。
こんなしょうもないことで怒られるのも癪だからな。
「お父さん、寂しくないって言ってごめんなさい。」
「いいよ~!」抱き着き
…と、まあ…うちの親はこんな感じだ。
つまり、親バカだ。
別に不幸というわけではないが、なんか、その、俺の今の中身の精神年齢が高校生ぐらいだから気持ち悪いっていうか…
「お父さんうれしいぞ~!」
…幸せならいいか。
「全員そろったし、早くご飯食べなさい。」
「は~い。」
「うむ。」
その日の夕食は特別おいしかったとか変わらなかったかとか。