第87話 臨時職員
朝起きたら、新しい子達が目の前まできては次の子に交代していた。
なにが楽しいかわからないけど、楽しそうな感情が伝わってきていた。
起きたのに気が付いてからは、目の前に来た子をつついて遊んでしまった。
本格的に起きて、テントから出て挨拶しながらお爺ちゃん達の所に向かう。
「おはようございます。相談があります。今日はここに残ってこれ作っていてもいいですか?」
昨日作ったナップサックを見せた。
お爺ちゃん達は受け取ってよく見ている。
「ああ、外れの布か。作るのは構わないが中が丸見えだぞ」
「はい。まだ大きさを変えられない新しいスライム達を入れようと思って。外見える方がスライム達も楽しいかと考えてたらこの布を教えてもらったんです」
ナップサックを返してくれながら、お爺ちゃんは笑っていた。
「作るのはいいが、ニーナだけではな」
「サラも残って、一緒に作ろうってなってます」
それでも許可されなくて、どうしようかと思っていたら助け舟を出してくれる人が居た。
「あ、俺とダンもテイム終わったから残るよ。それなら大丈夫だろ?」
ようやくお爺ちゃん達は許可してくれた。
「それなら構わんな。ニーナさえ大丈夫なら俺たちのも作ってくれんか?」
お爺ちゃん達が布を出して言ってきた。
「いいですよ。大きさはカイさんに頼まれたこれより一回り大きいのでいいですか?」
「あー、もう少し大きく頼む。新しいスライムの数がカイより多いからな」
依頼を受けて、布と紐を受け取った。
カイさんと同じように残った布は貰えて、それ以外にも後で何か貰えることになった。
「あ、片面は普通の布にします?その面を外側に向ければ中に入っているスライム目立たないかな?」
「確かに丸見えよりは目立たなそうだな。じゃあ、爺たちの分の片面はこっちの布で頼む」
ニコお爺ちゃんが黒い布を渡してくれた。
その時に糸なども渡してくれる。
思わずニコお爺ちゃんの顔を見てしまったら、いたずらっぽく笑ってくれたので受け取った。
満足そうにしていたから、きっと受け取るのが正解だったんだと思う。
朝食を食べた後に、テイムに行く組は出発していった。
「ニーナ、余力があったらでいいから俺とダンのも作ってくれないか?」
「もちろん、作りますよ」
ロウさんからダンさんの分も布や紐を受け取った後、テントの中で作業していることを告げてテントの中でサラと一緒に作業を始める。
「基本四角く布を切って巾着として縫うだけだよね?」
「そうそう。リュックにするために底の方に紐を通すための部分作るの忘れないようにね」
サラも裁縫を持っているから、ナップサックの様な簡単な構造の物を作るのは大丈夫そうだった。
私はお爺ちゃん達4人のとダンさん達の3人の分で7セットの布を先に切っておいた。
サラは自分のとカレンのと、父親たちの3人の分を作るので5セットの布を切っていた。
父親たちのはお爺ちゃん達と同じくらいの大きさにするみたい。
縫うだけの状態にしてしまえば、スキルの効果もあるのか縫うのが早いし縫い目もそろっている。
お昼が遅めになってしまったが、頼まれた7個のナップサックを完成させることが出来た。
サラは4個まで出来たので、一度テントを出てダンさん達の所でお昼を食べる事にした。
「お、やっとでてきたな」
「もう少ししたら強制的に休憩取らせようと話してたんだ」
どうやら心配かけてしまったみたい。
「ダンさん、ロウさん。これ出来ました」
2人に頼まれていたナップサックを渡す。
ダンさんのは青っぽい半透明の布に黒の紐でロウさんのは緑っぽい半透明の布に茶色い紐、カイさんのは白っぽい半透明の布にみどりの紐で半透明ではない布は黒い色で作成した。
先にお昼を食べていたダンさん達はお礼を言ってくれた後に楽しそうにスライム達を入れていた。
私のよりはゆとりあるけど、スライム達が袋の中で動いている。
私にはかわいく見えてしまうけど、嫌いな人が見たら悲鳴上げそう。
透明じゃない方の布を外側にして背負うと思った以上にスライム達が目立たなくなった。
お昼食べた後に自分用にもう一個作る事にした。
お昼を食べた後に自分用のを解体して、黒い布を足して2個のナップサックを作った。
一個は予備でもいいし、誰かにあげてもいいしね。
やる事終わったので、みんなでお茶しながらスライム達のモニュモニュした遊びを眺めていたらテイムに行った組が帰ってきた。
「まだテイムしたい人いるか?」
だれも声を上げない。
「よし。じゃあ新しくテイムしたスライムの名前と色を教えてくれ。信頼して預けるのをよしとするならギルドカードを預けてくれ。ケイアのギルドに行って仮登録してくるから」
より詳しく聞くと、テイム終わった後に全員で一度ケイアに戻るには時間がかかる。
なんでも、数をテイムすることは分かっていたので、お爺ちゃん達はギルドに相談して臨時職員に登録しておいたらしい。
主と新しいスライムの色と名前をまとめてリストにする。
もちろん名前を確認するときに、お爺ちゃんはスライムを鑑定してテイムされている事を確認する。
お爺ちゃん達の誰かとギルドカードを預けたくない人がケイアに行って登録して全員のギルドカードを更新する。
そのカードで初心者ダンジョンの街に入る。
ただし、ケイアに戻った時に必ずギルドで再確認する。
という流れらしい。
ダンさん達は信用しているが、一応ダンさんが代表してロウさんとカイさんのギルドカードを持っていくみたい。
カレンとサラのお父さん達のチームもハリーさんが代表して持っていくらしい。
私は同行することも出来るだろうけど、ここまで親身に相談に乗ってくれて一緒に何とかしようとしてくれているお爺ちゃん達を信用してカードを預けることにした。
どうするかを決めたら鑑定しながらリストをささっと作成して3人で出発してしまった。
今日のうちに夜通し走って、ケイアの街の外壁で野営して開門とともに入場し、手続き終了後にまた本気で走って戻ってくるんだって。
明日の夕食前あたりには戻ってくるだろって普通の事としてニコお爺ちゃんが話してくれた。
本気の冒険者の走る速さと持久力に私でも驚いたし、カレンとサラは余計に驚いて考え込んでいた。
走っている最中に周りを観察していたし、カレンとサラも何かに気が付いたのかもしれない予感がした。
きっと明日は特訓になるだろうと、スライム達を順番にモニュモニュしながら思っていた。
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