第84話 ガーン
朝、スライム達に起こされる前に目が覚めた。
目を開けた私に気が付いて、スライム達がポヨポヨと挨拶してくれる。
まだ、カレンとサラは寝ているが外で動いている人の気配があるのでそっと起きてテントから出る。
武器の手入れをしている、お爺ちゃん達がいた。
「おはようございます」
周りを起こさないように小声で挨拶する。
「おはよう。早いな」
「なんか起きちゃいました」
ニコお爺ちゃんが武器をしまって挨拶を返してくれた。
他のお爺ちゃん達は挨拶してくれた後、手入れを続けている。
「ごめんなさい。邪魔しちゃいましたか?」
「いや、終わったからしまったんだ。いくら何でも得物の手入れを放り出すことはしないよ」
邪魔したわけじゃないことにほっとした。
「ニーナの戦闘スタイルはどんな感じなんだ?魔法メイン?それとも武器?」
「魔法がメインです。前にダンさん達に見守ってもらってダンジョンで片手剣でゴブリンを倒しました。剣は氷で刃を作ったものです」
「実物の片手剣は持ってないのか?」
「お金ないし、お店で見かけたけど大きかったので触ってもないです」
「まあ、ニーナは無理するタイプではないからな。余裕出来たらでいいから、魔力無くなった時のために持っていた方がいい」
「はい」
前から気にしていたことをあっさりと忠告という形で注意されてしまった。
そんな話をしていたら、周りも起きてきたので朝食を食べることになった。
朝なので、コップにお湯を出して飲みながら食べていたらサラとカレンにもお願いされたので二人のコップにもお湯を出してあげる。
食べている時に、ニコお爺ちゃんがみんなの注目を集めた。
「今日の予定を話すぞー。まず、この合宿はスライムのテイムとスライム達のレベルアップ。具体的に言うとバリア、クリーン、アイテムボックス、瞑想、魔力譲渡。そしてマスターとの意思疎通をしっかりできるようにしてスライム通信が出来る個体を増やす。ここを拠点としてスライムをテイムする。その後ダンジョンにこもってスライム達をレベルアップする。あと、ダンチームとニーナ。お前たちはこの合宿が終わりある程度情報が広がるまではスライムの数を増やすのは禁止!」
びっくりして、思いっきりガーンって顔をしてしまった。
ダンさん達も同じなのが悲しい。
「お前さん達だけスライムの数が多かったら目立つだろ。スライム通信と魔力譲渡の情報が少しでも広まるまでの間我慢しろ。目立ちたくないから安全のために相談したんだろ」
その通りなので、我慢する。
「出来るだけ短期間に情報が拡散されるようにするから我慢だ我慢」
「わかりました。我慢します」
「わかったよ。あ、相性の悪いスライムは自分のスライムが分かるから聞くとテイムが早いと思うぞ」
周りがざわついた。
「言ってなかったか?」
「話してなかったですかね?」
「もしかしたら聞いたかもしれんが、他が強烈で忘れたのかもな。みんな聞いたな。今日テイムする前に相性悪いスライムは避けてテイムしろよ」
落ち込みながら片づけして出発準備をする。
”マスター大丈夫?”
”大丈夫だよ。新しい子を迎えるのが延期になったからちょっと残念だっただけだよ”
”今日は仲間増えない。マスター”
慰めるようにスライム達が体を揺らして、まるで居るよって主張しているみたいだった。
"残念だけど、みんな居るもんね。ありがとう"
ちょっと気持ちも前向きになって元気になる。
出発準備もテントはそのままにしていくから、朝食の片づけだけなのであっという間に終わってしまうし。
壁を越えるのに、今日はロウさんが背負ってくれた。
すぐに降ろしてもらって、すぐに周囲の警戒を始める。
他の人は壁から出る前からちゃんと警戒していたみたい。
次からはそうしようと気を引き締める。
どうにも頼りになる大人が沢山いてくれるから気を抜いてしまう。
多分気を抜きすぎていたら、後からお爺ちゃん達に注意されていたんだろう。
カレンとサラも父親たちに背負われて越えてきた。
皆揃ったら、無言でお爺ちゃんを先頭にしてカレンとサラがついてこられるくらいの速度で走り出した。
少し走ると、先ほどより木々がまばらになってきた。
よく見ると土が違う?
そんな周りを観察しながら走る。
集落からそんなに遠くない場所でお爺ちゃんが止まった。
「この先にスライム達が居るはずだ。ダン達はスライムをテイムする人たちの近くで護衛を頼む」
私はこの段階からルルにバリアを頼んでおく。
ルルが疲れたらマリン、その後はリトで次がルルと交代を続ける。
ローズとアンバーはまだルル達ほどのではないので我慢してもらう。
ルルのバリアの内側に自分でも防御して、みんなの後についていく。
スライムが見えてきた。
確かに鉱山よりも割合が低いけど、赤と茶色のスライムが居る。
テイムする人たちはスライムに近寄っていく。
ダンさん達はついて行ってもっと近くからだけど、私は少し離れたここから周囲を警戒する。
"みんなはスライムが近づいてきたら教えてね"
”””””はーい”””””
警戒しながらテイムする皆を見ていると、スライムに聞きながらスライムを選んでいるし、もう決めてたたき始めた人もいる。
参加できないことに少し寂しさを覚えながら、警戒する役目は大事だと気合を入れる。
カイさんがスライムを抱えてこっちに来た。
「ニーナのスライム3体貸して。俺たちはスライム通信で声掛けすれば警戒もしやすいし邪魔にならないだろ」
"マスター。バリアはルルとマリンで大丈夫"
私が一瞬覚えた懸念をリトが話しかけて消してくれた。
それにこたえるようにルルとマリンもポヨポヨする。
「ではこの子達預けます」
リト達を渡して、カイさんが連れてきてくれた三体を受け取る。
器用に首周りにくっついてくれた。
カイさんがダンさん達を順に回ったのを見守る。
”ダンから、スライム多いところを中心に北を見る”
"ロウから、南を見る"
私もスライムに伝えてもらう。
"ニーナから、東を見る"
"カイから、西を見る。中心は皆でカバー"
それからは連携しやすかった。
互いに探索にかかった懸念を報告しあって、危険性が高い時にはダンさん達の誰かが見に行って問題なしか排除を行った。
一人抜けるときは残った三人が報告しあいながら探索広げ、効率よく警護を行った。
お昼はテイム組はたたきながら片手で食べられるものを各自食べていたし、警戒している私達もそのまま立ちながら交代で食事をとった。
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