第78話 ポーションと料理
結局昨日は私が宿泊する部屋でスープと手持ちのパンを食べて解散し、朝早くから市場に行く約束をして別れた。
待ち合わせ場所はいつも通り広場なので、延泊手続きしてから広場で運動して待つ。
運動していたらサラとカレンも来て、一緒に運動し始めたので一通りの運動を済ませる。
「おはよう。はやくポーション行こうよ。売り切れちゃうよ」
カレンがせかすので、朝食は後回しにしてポーション販売の孤児院の出店を探すことにした。
前と同じなら、広場の北側にだいたい出店しているはず。
北側から探し始めたら、前回と大体同じ場所に出店していた。
急いで三人でポーションを覗くと、下級ポーションとポーションはなかったけど、それ以外は数がたくさんある。
「あんまりポーションって売れないんですか?」
カレンがお店の人に何か聞いてる。
「そうね。自宅に保管している人も多いし、新しいものを使いたいって人もいるから」
「それじゃ、いっぱい買っていっても大丈夫ですか?」
サラが聞いたことで、やっと質問した意味が分かった。
「買ってくれたらうれしいけど、期限が近いものだから……」
私たち三人とも時間停止だから期限は関係ない。
使う直前に出せば問題ないんだし。
1日間期限あるやつの上級もハイも数がそれなりにあるので、上級とハイを1個ずつ持てるように購入する。
これは活動時に使用する用だけどまだグループ資金を用意していないので、同じ数だけ買ってそれぞれ収納しておく。
そうすれば、必要な際に使用することにためらわなくなるだろうから。
もちろん自分が持っているやつを自分に使用するでもOKだ。
使用した際は申告して、そのころにはグループ資金もあるだろうからそこから購入して補充することになるだろう。
途中、不都合があれば変えていけばいいんだから。
そして、個人用に上級とハイを5個ずつ購入する。
この後、他の人と活動するので安心のために数を増やすのと、スライム達に各一個ずつ保管してもらうためだ。
スライムが必要な時にポーションをかけてくれるとは限らないけど、渡してもらえれば何とかなる確率が上がるし。
私は6個ずつ購入するので、6600ルー。
カレンとサラは3個ずつ購入するので、3300ルー。
支払いして、受け取りと同時に収納してしまう。
今日の夜にスライム達に渡すことにした。
その後は、広場でそれぞれ収納から出した物を食べて、食材探しをする。
まだ、グループ費用を作っていないので、今回の食材は私が全額出してスープを三人で作る。
そして使用した食材分をスープ鍋で割って、大体一皿分の値段を決めてそれをもらうことにした。
グループ費が出来たら、それもやめる予定だけど。
他の人にスープを分けるときにもちょっとだけ色を付けて、その色分はグループ費にするかもしれない。
私達だけなら問題ないけど、他の人に有償でスープを渡す行為が駄目な可能性があるので、そこのところだけまだ決定ではない。
自分たちだけで食べてもいいので、スープを作るのは変わらなかった。
そして買い物中に出来るだけ鑑定することになっているが、あまり大っぴらにスキルを広めたくないのでバレないように気を付けることになった。
朝食を食べている時に遠くから鑑定して見えた、ジャガイモを買いに行く。
蒸かしても美味しいだろうし、スープに入れても良しなので安ければ沢山買いたい。
「ジャガイモだね」
「玉ねぎもあるよ」
私としては、カレンとサラが驚いていることに驚いている。
「見たことなかったの?」
「基本宿に閉じこもっていたし、お父さんと一緒の時には食べ物屋台には行っても食材をあつかうお店には行ったことなかったから」
「外食か宿の食堂だけだったもんね」
カレンとサラは物珍しそうに野菜を見ている。
ギルドの売店と同じ値段だけど、入っている個数が多いのでここで買ってしまう事にする。
「おじさん、ジャガイモと人参、玉ねぎを150ルーずつ下さい」
おじさんに450ルーを渡して、受け取った野菜たちを収納する。
お店を離れてからカレンとサラに話しかけた。
「出来た?」
二人とも頷く。
「次は調味料を買いに行こう。塩と砂糖、出来れば胡椒も欲しいな。高いかな?」
「食材を出すダンジョンがあるはずだから……」
「屋台の食べ物でも胡椒使っている串肉あるし、きっとそこまで高くないよ」
市場をうろうろして、黄色い粉をさりげなく鑑定してみる。
カレー粉
比較的最近売り出された
肉にスープに使用可能
気づかずに素通りしようとしているカレンとサラの手をつかむ。
こちらを見たので、目線で一生懸命鑑定しろって伝えた。
無事鑑定したのか、逆に私の手をつかんできた。
ごく普通にお店の前に行って、話しかけた。
「こんにちは。おばさん、その黄色いの何?染粉?」
「おや、こんにちは。調味料だよ。肉に少しかけて焼くと癖になる味だよ」
「へえ、おばさん塩と砂糖、胡椒ある?」
「あるよ。この小さな壺で50ルー、中くらいが100ルー、大きいのが200ルーね」
「じゃあ、大きいのをそれぞれ一つ下さい」
600ルーを支払って、壺を受け取り収納する。
「ほかに何か面白い調味料ある?」
「よく売れるのはミソとショーユとハバロだよ。面白いのはさっきの黄色い調味料、カレー粉って言うらしいけど、それが新しいね。値段はさっきと変わらないよ」
「ではミソとショーユとハバロ、カレー粉を大きいやつでください」
カレー粉だけ新しいからか他より高く大壺が300ルーだった。
900ルーを出して、それぞれの調味料の壺を受け取る。
「ここには小麦粉ありますか?」
「小麦粉なら、2件左の店にあったよ」
「ありがとうございます。行ってみます」
お店から離れて、人が少ない場所で立ち止まった。
「カレー粉だって」
「誰か開発したんだね」
「カレー作れるのかな?」
カレー粉だけでいわゆるカレーが作れただろうか?
「バターってあるかな?」
カレンとサラに質問する。
「確か以前パンに塗られて出てきた気がするよ」
「売ってるはず。それがあればカレー食べられる?」
「少なくともカレースープは作れるから」
「じゃあ、後は小麦粉、バター、出来れば乳、後お肉ね」
「カレーが近いぞ」
カレンが張り切っているし、サラも嬉しそうだ。
早く買い物終わらせて、お昼には試作のカレーを食べるぞ。
その後、無事に小麦粉とバター、乳(レッドギューの乳)、ホーンラビットの肉を購入できた。
「買い物終わりだよね」
「終わったよ。あのさ、カレー粉使ったら香りが結構出るよね」
「あ、確かに慣れないとびっくりするよね。今なら門を出た近くで料理すれば大丈夫じゃない」
「どこでもいいからカレー食べたい」
すがるようなカレンの目に、急いで門を出てすぐ近くの草むらで料理することにした。
さて、野菜を切るんだけど試してみたいことがある。
まずは石ブロックを何個か取り出して、しっかりイメージを固めて作成する。
小さなタライ位の大きさで、違うのは底の部分がざらざらしていて、波打っている所だ。
ジャガイモを一個取り出して右手に持ち、左手にルルを持ち上げた。
「これからこの芋の皮をむくんだけど、よく見ていてね」
"見てるのね"
「そう、もし出来るようならルル達にやってもらうからその判断をしてもらおうと思って」
"わかった"
ルルを肩に乗せて、皮むきタライに水と芋を入れる。
想定していた通り、芋がしっかり入っている。
芋が飛び出ない様にバリアを張って、タライの中の水を回転させる。
時々逆流にして少しして水を止めてみると、水が濁っている。
芋を取り出してみると、芽の部分は残っているけど殆どの皮は削れていた。
「皮むき器作ったの?」
何をしているのか見ていたサラが声を掛けてきた。
「うん、これで出来るならスライム達に手伝って貰えるかなって。ルル出来そう?」
"多分出来るよ。やってみていい?"
「ルルが試してみるって」
水を替えて準備をしていると、サラもカレンもスライムを肩に乗せて見ている。
「準備出来たよ」
ルルとタライの様子を見守っていると、私がやったようにバリアを張って水を動かし始めた。
今まで放水しているのは見たけど、水自体を動かしているのは見たことがないかも。
少しして、ルルが水を止めてバリアを解除した。
"マスター、出来てるかな?"
タライから芋を取り出してみると、私がやった時と同じように凹んでいる芽の部分以外は皮がなくなっていた。
「出来てる。一回しか見てないのにルル凄い」
ルルを持ち上げて、撫でまくって褒めまくる。
”マリンとリトは出来る。ローズとアンバーはまだ難しいと思う”
「皮むきタライを作るから、マリンとリトにやり方教えてくれるかな」
"わかった"
石ブロックを取り出して、皮むきタライを3個作る。
ルルとマリンとリトに皮むきタライと芋を渡して、皮むきをお願いする。
私は実験として、ニンジンを入れて皮をむいてみる。
芋と同じようにやってみたら、まあ、先端の部分はともかく皮は削れてなくなっていた。
「ニンジンもちょっとあれだけど、出来るみたい。皮むきお願いしてもいい?」
「皮むきは私がやるよ」
「じゃあ、私は切るのやるね」
カレンが皮むき、サラが野菜を切る係に名乗り出てくれた。
作業用に私たちが立って使いやすい高さのU字溝を2つ作って、片方のU字溝には鍋を並べておく。
U字溝と手持ちのナイフにクリーンをかけて準備万端だ。
野菜が大きいので、一つの鍋で1個づつの野菜で十分なので、5つのジャガイモとニンジンをむいてもらい、切って5つの鍋に均等になるように入れる。
サラも手持ちのナイフをクリーンして切ってくれていた。
玉ねぎはあきらめて普通にカットした。
玉ねぎの皮はスライム達に食べてもらって、五つの鍋に水を入れて水を沸騰させる。
その間に、カレンとサラに角ウサギの肉を私たちサイズの一口大に切ってもらい、私はその間に干し肉を身体強化も使って出来るだけ細かくなるように刻む作業をした。
お肉入れるなら今だなって感覚があったので、切ってもらった角ウサギの肉を鍋に入れて水を沸騰より少し下の温度で煮込むようにする。
煮込むまでの間に、調理台兼まな板にしていたU字溝をクリーンをかけて収納する。
煮込むのを止めて、味付けする。
鍋は5つあるので、
1.カレー粉
2.ミソ
3.ショーユとミソ
4.クリームシチュー
5.予備でそのまま
にする。
クリームシチューのホワイトソースはこれから作るので、先にカレー粉とミソ、ショーユを使ったスープを完成させる。
それぞれをスープに入れた時に香りが凄くて、三人で歓声をあげてしまった。
ホワイトソースを作るのに、大き目のからのお皿を出して、小麦と乳、バターをしっかり混ぜた後に、混ぜながら加熱していく。
直接過熱しているので、しっかりかき混ぜればこげないし、先にかき混ぜてあるのでだまにもなりにくい。
先ほどよりトロトロになったら、鍋に加えて塩コショウで味を調節する。
市販のルーを使ったみたいなトロトロは難しいけど、味はしっかりとホワイトシチューになっていた。
「これでお昼ご飯食べたい。カレー食べたい!」
カレンの要望に応えて、ここでお昼を食べる事になった。
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