第77話 広場で特訓
無事に戻って、そのままギルドの広場に到着した。
幸いまだ早い時間だからか、広場に居る人は数人なので隅のほうで練習する分には邪魔にならなそうだった。
「じゃあ、私は鍋を作るけどサラとカレンはどうする?最初だし私が作るの見てみる?」
後から使いやすいように最初に加工することにした。
岩をいくつか出して、まず一つの大きな長方形に変化させた後にレンガ位の大きさに切り分ける。
レンガ状の岩を何となく並べて、鍋をイメージした後に魔法を使う。
無事に成功して、岩はある程度の厚みのある鍋の形に変形した。
「こんな感じだけど、どう?」
「うーん、多分。これもイメージが大事ってことだよね?」
「うん。ちゃんと習ったことないから本当は違うのかもしれないし、前にも言ったかもしれないけど、私はイメージをしっかりしていると失敗することが少ない気がするよ」
取り合えず、二人の前にブロックを一つ置く。
「まずはそのブロックをもっと小さく分けてみたらどうかな?」
2人は悩んでいるので、そっとしておくことにした。
あまり口出ししすぎちゃいけないってさんざん言われたからね。
私は私で、石の鍋を合計5つ作成して全部にクリーンをかけておいた。
一つを残して収納して、残しておいた鍋に水を入れて沸騰させてみた。
しばらく沸騰させていても、石の鍋が割れたり変形したりしないので十分に使えそうでよかった。
ちらっとサラとカレンを見ると、石を前にして悩んでいるので一言声を掛けてギルドの売店に向かう。
売店で料理に使えそうなものを探していると、保存食である干し肉と鑑定で見たらジャガイモ人参が売っていた。
料理スキルのおかげなのか、その三つでもスープが作れそうなのが分かる。
料理スキルの実験として、自分で食べるつもりで作ってみることにした。
干し肉とジャガイモ、ニンジンを購入して150ルーを支払った。
広場に戻って、石ブロックを出して小さなタライを作成する。
タライの中に水を出して、ジャガイモ1個と人参1本を洗う。
持っていた小さなナイフにクリーンを念入りにかけて、皮むきして適当な大きさにカットする。
カットする時には岩ブロックでU字溝を作ってクリーンを掛ければ調理台兼まな板になった。
先ほど沸騰していたお湯を捨てて、カットされたジャガイモと人参を鍋に入れる。
1個と1本なのに、鍋の半分ほどになった。
この世界のジャガイモと人参は大きいのかもしれない。
何となくわかる適量のお水を入れて、優しく沸騰させる。
沸騰させ続けながら、干し肉を薄く削ってさらに細かく切る。
それが終わったら、干し肉を程よい大きさにカットする。
力が必要だったので、身体強化を使用したのは誤算でした。
細かくした干し肉を沸騰を続けている鍋に適量入れて、同時に程よい大きさのカットした干し肉も投入する。
その際に、何となく沸騰しているお湯の温度を少し下げた状態でキープする。
自分でもなぜそうなのかは分からないけど、これが料理スキルMAXの恩寵なのかもしれない。
この状態でしばらく待つので、サラとカレンの様子を見るとカレンは何とかブロックをより小さなブロックにできたみたいだ。
「カレン次はコップでも作ってみたらどうかな?サラ、イメージつかない?」
カレンは小さくしたブロックをさっき渡したみたいに作る形に近い感じに組み立てて試そうとしている。
「イメージできていると思うんだけど、イメージに集中すると他がおろそかになっている気がする」
出来ないなりにサラは考察していたみたいだ。
収納から木の枝で小さいものを取り出して、先端を焦がしてサラに渡す。
最初は意味が分からず枝を見ていたけど、石のブロックに焦げて炭化した部分を擦って線を引き始めた。
多分これ以上の手助けはしてはいけないと思うので、鍋のそばに戻って様子を見る。
スープが出来たと感じた時に保温に切り替えた。
空のお皿を取り出して味見と思ったけど、お玉がなかったのでこれもとりあえず石で作った。
少しだけよそって、恐る恐る口に運ぶ。
うっすら塩味と、肉の風味、野菜の甘みが染み出てそれなりの味になっている。
「ニーナ、私も食べたい」
「私も」
カレンとサラにも空のお皿を出して、少しだけよそって渡す。
2人が口に入れるのをドキドキしながら見守る。
「ニーナ、わたしこれ好き」
「なんか優しい味」
反応が悪くなくてよかった。
「これ材料は何使ったの?」
「干し肉とジャガイモと人参」
「ジャガイモと人参ってあるの?」
「3つだけ?」
二人の驚きポイントが違っていた。
「この世界でもジャガイモと人参だったよ。大きさが違うけど。売店で買ってきた材料で実験的に作ったから三つしか材料使ってないよ」
二人は感心して、少しとはいえよそったスープを完食してくれた。
「明日は朝から市に行って調味料や材料を購入しよう」
「スープだけでも作れるようにしておくと、温かいもの食べれるからいいよね」
「2人も料理してよ」
頷いてくれているので、明日は材料購入と料理で一日が終わりそうだ。
「そういえば、二人ともポーションって持ってる?」
「私はお父さんと再会したときに持たされた、ポーションと上級ポーション持ってる」
「私もポーションと上級を渡されたっきり」
「じゃあさ、明日の市で孤児院がやっているポーション屋さん行こう。期限切れ近いポーションが格安で売られているの」
二人とも知らなかったみたいなので、喜んでいた。
「時間停止の収納で本当に良かった」
「でも、ポーション売っているかどうかは運だから、無くてもがっかりしないでね」
それでも、ポーションをお互いに持っているのは安全につながるので行ってみることに決まった。
「それで、コップ出来た?」
カレンの手元を見ると、シンプルなコップが出来ていた。
「出来たよ。何となくコツをつかんだから次はもう少し大きいの作ってみるね」
やる気があるので、石のブロックを十個位渡しておいた。
「私は小さく出来たよ」
サラも線を引いたことで小さくするってことに集中できたみたい。
こちらにも石のブロックを五個位渡しておいた。
「サラは今度はくっつけて、また小さくしてってやるといいかも」
「私も作っては形を変えてってしよう。何個も作ったら場所がなくなる」
カレンのなんとも言えないしょぼんとした感じが面白くって、サラと一緒に笑った。
次第にカレンも一緒に笑って、三人で笑ってた。
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