第75話 テント購入
ベッドが波打つ感覚で目を覚ました。
寝ぼけた頭で、昨日はマリンにベッドの上にマットみたいになってもらって眠ったことを思い出した。
「おはよう。起こしてくれてありがとう」
朝から元気なスライム達に挨拶をして、昨夜のことを思い出す。
テントの不安をカレンの言葉で吹き飛ばされて3人で笑いあった後、結局夕飯を一緒に食べて宿泊所に戻って眠ったんだった。
(今日はカレンたちのお父さん達に付き添ってもらって、テントを見に行く予定だから早く起きなきゃ)
素早く支度をして、忘れずに延泊手続きをしてから広場に向かう。
広場の隅っこにスライム達を置いてから、いつものように柔軟と軽い運動をする。
その間にカレンとサラとお父さん達も来て、一緒に運動をした。
運動も一通り終わって、朝市で朝食を食べる事になった。
みんなで移動して、朝市で食べたい物をそれぞれ購入して食べた。
私は今日は具沢山のスープを選んで食べた。
たくさんのお野菜とちょっとのお肉が入っていて、優しい味がして美味しかった。
(たまの贅沢で3人で朝市で食べるのもいいかもしれない)
今度提案しようと思いながら、気が付いたら食べ終わっていた。
お父さん達の案内で、朝市ではなく雑貨などが売られているお店に着いた。
冒険者の御用達なのか、ギルドにある売店を大きく、種類も豊富になったようなお店だった。
たくさん種類が並んでいる武器や道具などにも心惹かれて仕方ないけど、我慢してテントのコーナーに向かう。
ちなみに、カレンとサラもきょろきょろ仲間だ。
「一般的なテントだと、ここら辺だよ」
サラのお父さんのヘンリーさんが教えてくれた。
そこには木の棒に布が括りつけられた物がたくさん置いてあった。
大きさは棒の長さで大体わかるみたいで、ほとんどの人は自分たちの身長より少し大きいものを使用しているんだって。
そしてテントは真ん中の棒が一本だけでテントの隅は直接地面に固定するタイプと、真ん中に一本で途中の四隅を真ん中より短い棒で建てて縦の空間を確保するタイプがあるみたい。
「居住スペースは狭くなるけど、荷物がちいさくなる一本だけのが主流だね。でも、サラたちは全員収納できるから居住スペース優先でもいいと思うぞ」
「確かにな。通常は野営地であったとしても見張りで全員がテントに入っていることはないからな。でも、今回は3人に見張りをしてもらう予定はなかったはずだからそれも考えて選びなさい」
お父さん達の説明とアドバイスを聞くと、購入するのは3人が入れる大きさが必要で、持ち運びは収納があるから居住スペース優先でいいって事かな。
「お父さん、私達なら2人用のテントでも3人で眠れるかな?」
カレンが質問していたけど、確かに私たちの身長と大人の身長を考えると眠れるかもしれない。
「うーん、確かに体の大きさを考えれば2人用位の大きさで眠れると思うよ」
「ただし、かなり狭いかもしれないけどね」
値段を見ると、3人で割り勘にすることを考えれば即決しても支払える金額だ。
ただ、同じ大きさでも値段の差があるのでよく見るとテントの布が違うみたいだ。
「これ同じ大きさでも値段が違うんですが、何が違うんですか?」
疑問がある状態で選べるわけがないので、素直に質問する。
「値段の違いは布の違いだね。防水が施されているのは同じだけど、高い布のほうが軽く薄いが丈夫だったりするよ」
その回答に、カレンが同じ大きさのテントを抱えるように持ち上げて重さを比べ始めた。
「ほんとだ。全然違う」
わたしとサラもカレンを真似して重さを比べてみたが、高い金額のものは一番下の金額のものよりも軽かった。
「でも、軽いのはさすがに高いよ。一番安いものでも持ち上げられるんだから安いのにしない?」
「そうね。軽いのは凄く、凄く魅力的だけど今回は価格重視でいこう」
よく考えたら身体強化を使用すれば、そんなに気になる重さのさじゃないだろうしね。
そうサラと話している間、カレンが何か考えこんでいるようだった。
「ニーナ、岩があればある程度好きな形に変形できるよね?」
考え事が終わったのか、カレンが内緒話のように耳元で小声で聞いてきた。
「たぶんできるけど、なんで?」
同じように小声で返すと、後で話すねってごまかされた。
小声とはいえ、聞こえていたサラも肩をすくめてカレンが話す気になるのを待つようだったので私も聞き返すことはしなかった。
「私は居住性優先のタイプで4人用がいいと思うんだけど、サラとニーナはどう?」
「4人用は大きくない?」
思わず聞き返してしまう。
「持ち運びは問題ないし、万が一に人を受け入れるときにも少しは大きいほうがいいかなって思って」
「居住性優先は私も同じ意見よ。でも4人は私も大きいと思うけど」
少し苦笑しながらサラがカレンに答えた。
「私も居住性優先は同じ意見だよ。なんで大きいほうがいいの?」
何か考えての発言のはずなので、カレンに聞き返した。
「大きいほうが、夜寝た後にもスライム達が苦しくないと思って」
より詳しく聞くと、これからスライムが増えるしベッド等の役をやってもらったとしても自由に動ける空間があるほうがスライム達も楽しいだろうと考えての事だった。
「そういうことなら私も4人用のに賛成」
スライムのためなら多少の出費も問題ない。
サラも賛成したので、4人用の居住性優先のテントを購入することになった。
価格は22,000ルー。
1,000ルーはスライムが一番多くなりそうな私が多めに出させてもらって、サラとカレンは7,000ルー、私は8,000ルーを出すことになった。
テントはこの世界歴が短い私のほうがまだ色々余裕がありそうなので、私が収納することになった。
「テント購入おめでとう。この後は市場か?」
カレンのお父さんのラルフさんが聞いてきた。
「テントは購入したし、市場に行く?それとも草原に行ってテントを張る練習でもする?」
サラの提案に悩んでしまう。
市場で例の件を実験するには3人のほうが都合がいいし、草原でテントを張る練習も捨てがたい。
返事を迷っていると、先にカレンが答えていた。
「草原でテントを張る練習がしたいな。朝市じゃなくても食品は購入できるし、今日は覗くだけにして明日購入して料理してもいいんだし」
特に拒む理由もなかったので、カレンの意見が通った。
店の前で、お父さん達にお礼を伝えて分かれ市場を覗いてから草原に向かうことになった。
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