第70話 グループとして
相談窓口として食堂にお爺ちゃん達が居てくれる事を聞いた後は、特に話もなくそれぞれ準備にかかる事になった。
まだおやつ位の時間なので、ダンさん達は食料の買い出しなどを行うために街に行くようだった。
ダンさん達とは手を振って別れて、お爺ちゃん達に準備に関して聞くことにした。
「お爺ちゃん、今ちょっといいですか?」
「かまわんよ」
お爺ちゃんの許可を得てから、カレンとサラに話しかける。
「ねえねえ。私テントは持っていないんだけど、カレンとサラはテント持っている?」
「持ってないよ」
「うん、持ってないよね。私達で利用するテント用意した方がいいかな?」
やっぱり2人もテント持っていなかった。
伺うようにお爺ちゃんの方を見た時に、カレンの父親のラルフさんが言い出した。
「私たちのテントにニーナも一緒に利用するのでも構わないけど、どうだ?」
「いや、心配なのはわかるけど今回は冒険者の活動を教える意味もある。3人でテントを用意した方がいいんじゃないか?」
サラの父親のヘンリーさんはテントを用意した方がいい派みたいだ。
「いや、野営が多いだろうから安全のためには同じテントがいいと思う」
父親同士の討論が始まってしまって、私は勿論カレンとサラもどうしたらいいのかわからなくてきょろきょろしてしまっている。
「心配なのはわかるが落ち着け。テントは3人のを用意した方がいいぞ。まて、説明するから」
ニコお爺ちゃんが討論に割って入ってくれた。
そんなお爺ちゃんが私達用のテントを用意する方がいい理由を説明してくれた。
「いいか、今回の合宿では今のところニーナ達3人だけが新人だ。初めての野営と考えれば安全に配慮して行うことが出来るだろ?テントもそうだ。自分達で用意させて駄目だった時だけ手助けしたり自分たちのテントに入れてやればいい。それに娘だからこそ色々な配慮をしてやれ」
お爺ちゃんが言うことは、さっき私に言った事と同じような内容だった。
安全に学ぶ機会を奪うなって言う事だと思う。
「ニーナ、サラ、私たちのテントを購入しよう。どんなテントがいいかはお父さん達にアドバイス貰ってもいいですか?」
カレンが決断して私達にテントを買うことを言ってきた。
「購入するテントに関して先輩のアドバイスを聞くのはいいことだ。しっかり相談に乗ってもらいなさい」
ニコお爺ちゃんもカレンに笑いながら答えてくれた。
「そうだね。お父さんも相談に乗ってよ。3人で使うならどんなテントがいいのか」
サラも買う気になって自分のお父さんに相談に乗るように言っている。
「そうだね。私たちの予算で出来るだけいい物を購入しようね」
私たち3人が購入することに決めたことを悟ったラルフさんが降参した。
「わかった。購入する時には一緒に行って相談に乗るよ」
カレンとサラと私で一緒に喜んでしまった。
「何か聞きたかったんだろ?何だったんだニーナ」
ニコお爺ちゃんに声を掛けられて相談しようと思っていた事を思い出した。
「私達用のテントを用意した方がいいか相談しようと思ったんです」
「あはは、それなら解決したね。他には無いかい?」
他に聞きたいこと……あれを聞いておこうか。
「スライムをテイムするための期間はどれくらいを予定してますか?あと、以前ダンさん達と行った時に、優しいダンジョンのスライムが1体だけ出る部屋で野営したんですけど今回もそうしますか?それとも宿屋に泊まりますか?あとは、優しいダンジョンにはどれくらいの期間籠りますか?」
ダンジョンにいる間の宿泊場所の確認と大体の期間を聞いておこうと思ったんだ。
食料を用意するにもどれくらいの量を用意すればいいのか考えるのに必要な情報だし。
「スライム部屋で野営したのか。確かにスライム達の特訓だからな。そこで野営するのはテントもいらないしいいな。ダンジョンではスライム部屋に野営してみて、辛かったら宿に泊まるとするか。期間ははっきりは言えないが5日間籠って1日休日兼買い出しを繰り返すつもりだよ。後はテイムするための期間だったな。確定ではないが6日間位で何とかならないかと考えているよ」
買い出しできるタイミングがあるのは良かった。
それにダンジョンで野営するならお金もそれほどかからずに済むかもしれない。
「ニーナからはもう質問がないかな?逆に聞いていいかい?どうしてそれぞれの期間を聞いたのかな?」
「買っておく食料の量を決めるために聞きました。資金に余裕があればたくさん買えば良いんですけど、私にはまだ無理なので。後は宿屋に泊まることが前提なら準備期間に出来るだけ角ウサギを狩りに行って資金を増やさなきゃって思っていたので」
答えてもらった内容で、買い出しする食料の量と資金を増やすべきかを考えようとしていた事を話した。
「自分勝手な考えで準備する食料の量を決めないのと、資金の余裕を考えるのは偉かったな。でもニーナ、その考えにカレンやサラの事を含めていたかい?」
ニコお爺ちゃんに言われてはっとした。
私は各自で食料を準備すると無意識に考えて、自分のだけ購入すればいいって考えていたことに。
「言われて気が付きました。テントは3人でって考えたのに食料は各自で準備だと自分の分だけ考えてしまっていました。カレン、サラごめん」
「ニーナ、謝らないで。私も自分の分を何用意しようって考えてた。同じグループなのにごめん」
「私もだよ。ごめん」
カレンとサラに謝ると、2人も同じようにグループでの準備じゃなくて各自での準備を考えてしまっていてお互いにあやまった。
「グループで活動してまだ間もないからな。最初のうちは出来るだけ意識してグループ単位で考えるようにしろよ」
「「「はい」」」
何かとても大切なことを教えられた気がした。
「ニーナ、カレン、サラ。これから6日間の間に色々準備のために購入するんだろうから今のうちに話し合っておきなさい。ニーナは遠出の際にどんな食べ物が便利だったかとか欲しかったとか。カレンとサラは街を移動する際に何が欲しかったとかだ。話をしないと伝わらないからな。ヘンリーとラルフは夕方まで外出てきていいぞ。俺は聞かれたときに答えられるように隅に居るだけにするから。トムは奴らに声を掛けてきてくれ」
夕方までニコお爺ちゃんが相談役として残ってくれるけど、3人で話をする時間を作ってくれたみたいだ。
「そうだな。じゃあ夕方に迎えに来るからギルドからはでないようにな」
そう言ってヘンリーさんとラルフさんは出かけてしまった。
それに続いてトムお爺ちゃんも出て行ってしまった。
私たち3人とニコお爺ちゃんだけになったら、ニコお爺ちゃんは机の端の席に座って目を閉じてしまった。
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