第67話 お爺ちゃん達
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
顔をペシペシされて目が覚めた。
今朝は普通の起こし方でよかった。
今日はケイアに向けて出発する日だ。
身体を起こして近くにいた子を両手に1体づつ掴む。
つかんだ時に小さくなっていたのでお手玉の様にポンポン投げた。
投げているのはマリンとアンバーだった。
何回か投げたらマリンとアンバーを降ろして、残りのルル、リト、ローズを3つのお手玉としてポンポン投げる。
私は3つまでしかお手玉出来ないので、一度に同時に投げることは出来ない。
なのに、マリンがタイミングを合わせて手に飛び込んできたのでいつの間にかに4つになってる。
これだけでもどっかに投げないように精一杯なのに、アンバーが近寄って来てタイミング合せて手に飛び込んできた。
正直混乱していたけど、ふと気が付くとスライムが自分たちで私の手を使って飛んで回っているだけだった。
これならどこかに思いっきり飛ばすことは無い。
ほっとしたので、念話でスライム達に一度下りてってお願いした。
スライム達は一斉にベッドに降りてくれた。
やっと終わってほっとして隣のベッドを見たら拍手してくれた。
「いやー、面白かったよ」
「最後の方はスライム達が自分でやってましたよ」
ルルを捕まえてお手玉の交差するバージョンや片手でやるバージョンのイメージを送る。
私は3個バージョンしか知らないけど伝わったみたいで、皆でくっついてイメージを伝えているみたいだ。
"マスター交差するときの手の動きをして"
「え、こう?」
手だけで交差のお手玉の動きを始めたら、次から次へとスライム達が自分で飛び込んできて、自分で方向を調整して飛んで交差お手玉になってしまった。
(うちの子達器用だね)
少しの間、そのままお手玉して満足したのか終わりにしてくれた。
「何ていうか、スライムって凄いな」
頷くことしか出来なかった。
「遊んでないで準備しろよ」
声が掛けられたので急いで準備した。
今日はスライム通信をしないので、ローズに髪の毛をまとめてもらって他の子達は四つ網になって首に居てもらう。
部屋を出る前に、忘れ物が無いかのチェックをしてから朝食に向かう。
朝食を食べたら街を出て、走り出した。
王領と侯爵領の検問も無事に通過出来たので、そのまま何事もなく走り続けた。
鉱山の街マホングからケイアまで間に2つの街があるが、その間も特に何かのトラブルに巻き込まれることは無くマホングを出て3日目の夕方にはケイアに着くことが出来た。
何となく街に入る時からドキドキして、ロウさんは宿の確保に一時的に離脱してギルドの食堂で待ち合わせをしている。
私がギルドの宿泊所を利用するので、私に合わせて食堂で清算をすることになっているからだ。
(カレンとサラ、ギルドに居るかな?)
ドキドキしながらギルドに入るけれど、見える範囲にはいなかった。
残念な気持ちになりながらも、列に並んでギルド職員さんに宿泊所の部屋を借りてカギを受け取る。
ダンさんは代表してダンジョンで得た魔石を買取に出しているので、カイさんと先に食堂に向かう。
食堂に入ると、顔なじみの冒険者の人達がお帰りって言ってくれた。
なんか恥ずかしかったけど嬉しくて、ちょっと顔が赤くなりながらもただいまって言った。
空いている席にカイさんと座って、ダンさんとロウさんを待つ。
待っているように言われたので、おとなしく座っているとカイさんが色々食べ物を持ってきた。
「この後少しかかるだろうから先に食べときな」
何のことかわからなかったけど、走ってきたのでお腹は空いていたし、カイさんも食べ始めたので私も遠慮せずに食べ始めた。
食べていたら、ダンさんとロウさんも食堂に来て一緒に食べ始めた。
食べ終わった時に、食堂は顔なじみの人も増えてきて私たちを見つけるとお帰りって言ってもらえる事もあった。
食べ終わるころに、ダンさんが席を立って目的らしい人物の所に声を掛けに行った。
その間にロウさんとカイさんに促されてテーブルの上を片付けて、1階の小部屋に誘導された。
小部屋に入って座って待っていると、ダンさんが2人の先輩冒険者を連れてきた。
「ジジィ、旅の間の清算しちゃうからちょっと座ってまってて」
「お前にジジィと言われる筋合いはない」
文句言いながらも椅子に座って、飲み物を勝手に出して飲んでいた。
「ニーナ、買い取りカウンターでの買い取り金額と旅の間の支出を計算したよ。支出の方が多くて7,000ルーを貰うことになるが大丈夫か?」
思ったよりも少ない支出だったし、手持ちの金額で間に合うので7,000ルーをテーブルに出して受け取ってもらう。
「ちゃんと請求してもらえてよかったです。また何かあったらご一緒させてください」
「ああ、楽しかったな。また何かあったら一緒しよう」
旅の清算も無事に済んで、ひと段落って感じなんだけど多分スライムの件での相談をこれからするんだろう。
「そろそろいいだろう?まずはニーナに自己紹介だな。俺はニコラスだ。ニコお爺ちゃんでいいぞ」
「俺はトムだ。トムお爺ちゃんでいいからな」
私に向かって優しく笑いながら自己紹介してくれた。
「ニーナです。ニコお爺ちゃん、トムお爺ちゃんよろしくお願いします」
「ついに自分でジジイって言うようになったか」
ダンさんがからかうように言うと。
「ニーナから見たら十分ジジイだからな。でもお前らは駄目だ」
気を許しているダンさんの態度で、ダンさん達が本当に信用している人達なんだってわかる。
「小部屋に来てもらったのは相談に乗って欲しいからなんだ」
「なんだ。どこかの女に不義理したとか借金とかなら帰るぞ」
ニコお爺ちゃんが真顔で言って、トムお爺ちゃんが横で頷いている。
「違うわ。スライム関係なんだよ。短く言うと、スライムが瞑想と魔力譲渡を覚えて戦闘中に魔力を回復してくれる件とスライム利用するとスライムのマスター同士で連絡が取れる」
一気にダンさんが話すと、お爺ちゃん達は驚いた顔をしていた。
「ちょっと待て、ニーナがスライムの血抜き方法を話したときに俺たちもいたからスライムをテイムしている。そのスライムが瞑想や魔力譲渡を覚えるのか?」
お爺ちゃん達はポケットからスライムを取り出した。
ルル達が教えていないのに、大きさを変えているなんてスライムを可愛がってくれているんだ。
「覚える。俺たちのスライムはバリアも覚えたしクリーンも出来るようになった」
「新しい情報をポンポン出すな!もう最初からまとめて話せ」
怒られてしまったし、ダンさん達がこちらを見るのでスライムの能力をわかっている限り話した。
・バリアやクリーンを使用出来る事
・アイテムボックスが使用できるようになった事
・瞑想や魔力譲渡を覚えてくれたので、戦闘中でも魔力をスライムが少しは譲渡してくれる事
・マスターとの念話が出来るのを利用して、お互いのスライムを預かりあってスライム経由で伝言が伝えられる事
・風魔法や水魔法が使えるスライムが居る事
今まであったスライムに関することを話した。
お爺ちゃん達は驚きながらも黙って話を聞いてくれた。
「色々問題は有るけど、クリーンは女性を救うものだっていうんでマリーたちは知ってるよ」
「ああ、夜にクリーンをかけてもらうのか。確かに女性には救世主だな。では今回相談する事になったのは、戦闘中の魔力譲渡とスライム経由の伝言だな」
「ああ、戦闘中に少しでも魔力を回復する手段があれば生存率が変わるだろ?スライム経由の伝言は俺たちはスライム通信って呼んでいるけど、実験したらダンジョン内で声を出さずに意思が伝わるから楽だったよ」
「スライム通信、なるほど何となく意味が分かるな。どうやるんだ?」
お爺ちゃん達の目の前で、お互いのスライムを預けあって、四つ網になってもらう。
それを何時もの様に首に着けて準備を完了する。
「これで何時でもスライム通信出来るけどどうする?」
「どれくらいの距離届くんだ?」
実験していなかったね。
"ねえ、念話ってどれくらい離れていても届けられるのかな?"
"遠くは無理だけど、広場の端までは届くかも"
結構届くんだと正直思った。
「それはまだ実験していない」
「すみません。スライムに聞いたら広場位までなら届くかもって」
スライムに聞いた情報を伝える。
「俺とダンで広場まで移動して、スライム通信を利用して言葉を伝えあって答え合わせをすればいいだろう」
トムお爺ちゃんが静かに提案して、もう立ち上がっていた。
ダンさんとトムお爺ちゃんが部屋を出て、通信が来るまで待った。
その間はニコお爺ちゃんは何かを考えているように目を閉じていた。
"ダンから赤と茶色のスライム場所教えろ"
ロウさんとカイさんと顔を合わせてしまった。
「今スライム通信が入りました。赤と茶色のスライム場所を教えろって伝えてきました」
「俺が知ってるって送れ」
「じゃあ、俺がやるよ」
ロウさんが名乗り上げてくれたので、おとなしく待っている。
"ロウよりニコラスが知っている"
"ダンより今から戻る"
どうやらスライム通信テストは終わりにして戻ってくるみたいだ。
そのまま待っていると、ダンさんとトムお爺ちゃんが部屋に戻ってきた。
元の席に座って、お爺ちゃん達が話し始めた。
「なんで赤や茶色のスライムの場所を聞くんだ。他に何かあったろ」
「ニーナにも聞こえる可能性高いのに変な事聞けないだろう」
納得したのか、頷いているニコお爺ちゃん。
「結局、広場でスライム通信できたんだな?」
「ああ、こちらにはスライムの場所を教えろって送られてきたぞ」
「こちらはニコラスが知ってるって返事を貰ったよ」
これでお爺ちゃん達にスライム通信を理解してもらえるかな?
「どんなものか理解できたか?正直どう広めていったら安全なのか判断できなくてな相談させてもらった」
正直にダンさんが説明した。
「ちょっと相談するから待ってろ」
お爺ちゃん達が近づいて小声で相談し始めた。
"みんなへお爺ちゃん達力になってくれますかね"
"ダンから多分な"
"ロウよりきっと大丈夫"
"カイよりニーナが絡んでいるからきっと大丈夫"
待っている間、静かにスライム通信で会話して待つ。
「待たせたな」
お爺ちゃん達の相談が終わったようで、こちらに声を掛けてきた。
「そう心配そうな顔をするな。ちゃんと相談に乗るから」
お爺ちゃんが安心させてくれたから、ほっとする事が出来た。
「どうやるか考える時間をくれ。明日の予定は空いているか?」
明日は全員休みにする予定なので、同時に頷いて返す。
「なら、昼頃に食堂集合で昼を食べてから小部屋に移動って事でいいか?それまでにどうするかを考えておくから」
それで大丈夫なので、こちらから頭を下げてお願いした。
「それで大丈夫ならニーナはもう寝ろ。普段はもう寝てるだろ。明日は午前中もしっかり休んでろよ」
指摘されるとかなり眠くなってきた。
隣りにいたロウさんに頭を撫でられる。
「あはは、しっかり寝ろよ。明日の昼に食堂な。各自勝手に食べて待つって感じだからな」
「はい。お休みなさい」
全員からお休みの返事をもらって、2階の宿泊所に移動する。
鍵の番号を確認して部屋に入る。
手分けしてクリーンをかけてさっさとベッドに入る。
「明日も朝の運動はするから起こしてね。お休みなさい」
スライム達の返事も聞かずに眠ってしまった。
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