第6話 これからよろしくね
今日も夜明け前に目を覚ますことが出来た。
昨日少し遅かったから心配したんだけど、習慣になっているみたいで良かった。
今日も魔法の練習とスライム討伐しに行く予定だ。
出来ればスライムは2体以上倒したいと考えている。
テーブルと椅子を出してすばやく朝食を食べる。安全なところで食べたほうがおいしいから。
宿泊所の職員に鍵を返して、薬草を採取するために街を出てからダンさんたちのアドバイスを参考にさせてもらって右側の方の草原に入ってく。
昨日よりあちこち移動しながらだったが、何とか午前中に16束採取することが出来た。
(サーチと鑑定がなかったらどうなっていたんだろう……)
そう考えてしまうほど、薬草採取はサーチと鑑定無しでは生活を成り立たせるのは難しい。
よく似た雑草もあり、雑草が混じっていると当然報酬も引かれてしまうからだ。
薬草採取を切り上げ、昨日見つけた薬草の群生地の様子を見に行く。
成長が早いって基礎知識が教えてくれているので、どれくらい早いのか確認しておけば採取が楽になる。
群生地にはもう若葉が新しく出てきていた。
昨日ほどの大きさになるのは1週間くらいかかるかなって感じだ。
しばらく毎日確認して、今後の成長を見ることにした。
群生地を少し外れてお昼を食べる。気合を入れるため貰った串焼きも1つ食べる。
今日の魔法練習は、遠距離からの攻撃方法を作ろうと思う。
接近戦は昨日の氷の刃でしばらくは何とかなるだろうから。
距離があるうちに相手を弱らせられるか倒せるほうが安全なので、遠距離の攻撃方法は必須だ。
魔法での遠距離と言えば、魔法の球や矢の形にして飛ばす方法が小説や漫画では定番だった。
威力を確認するために5mほど離れたところに土魔法で人の背丈ほどの的を4つ作る。
2つは土のまま、2つは出来るだけ硬くした。
水と光の両方で球と矢を飛ばす方法を試してみる。
当たったけど、土の的が水が当たったため泥になったくらいで攻撃力はあまりなさそうだ。
(水は多少攻撃力があるけど、光は物理は難しそう)
次に水を冷やして氷の球にして、同じように的に向かって飛ばしてみた。
土の的は破壊、硬くした的は少し壊れていた。
氷の矢も試したが、土は破壊、硬くした方は突き刺さっていた。
(多少は攻撃力が上がったみたい)
もうひと工夫が必要なようだ。
矢よりも球が攻撃力が低いのは、球がすごく早く飛んでいるイメージが出来ないせいだろう。
矢は弓の様なイメージがあるため早く飛んで攻撃力が上がっている可能性がある。
(弓より早くて攻撃力が高いのはアレだよね)
前の世界でも本物を見たことも触ったこともない。
漫画や小説のイメージしかないがこの世界ではそのイメージが重要だ。
(氷を弾丸の形をイメージして、さらにイメージしやすいように人差し指の先から出るようにする)
慎重にイメージを重ねて指鉄砲の形にして腕を伸ばして的に向ける。
(≪パン≫)
硬くした的が壊れた。
思った以上の効果に少しの間動けなかった。
(怖いけど、これなら遠距離攻撃として通用するよね)
疲れてしまったので、椅子を出して座ってコップに水を入れて休憩することにした。
ゆっくり水を飲んだら少し落ち着いたので、的も土に戻して練習後を片付ける。
(これで終わりじゃない。今日はスライムを3体以上が目標!でも無理しない!)
ステルスとサーチをかけて、スライムの反応を探して移動する。
一度スライムを見つけたからかサーチの反応でスライムが見分けがつけられるのはとても助かる。
(サーチも有能だよ)
進化したサーチのおかげで1体だけのはぐれているスライムの場所にたどり着けた。
(まず今日の魔法を試してみよう)
倒しきれなくて反撃されるのは怖いので、一番攻撃力のある指鉄砲を試す。
慎重に狙いをつけて≪パン≫。
スライムが破裂して地面に浸み込んでいった。
完全に浸み込んだのを見届けてからスライムが居た場所に近づく。
スライム相手には過剰な攻撃だったみたいだ。
ドキドキしているけど、昨日のような疲労感はまだない。
(まだ、スライム討伐続けられそう)
次のスライムに行くことに決め、今度は氷の矢を試すことにした。
次のはぐれスライムが約3mほど先に居る。
狙いをつけて氷の矢を飛ばすが、外れてしまった。
スライムは慌てたように動いているが、まだこちらには気が付いていない。
慌てずに2本目の氷の矢を飛ばす。今度は当たった。
スライムは昨日と同じように液体となって浸み込んでいった。
(矢が外れた時はどうしようかと思った)
ちょっとドキドキしすぎて涙出そうになったのは秘密だ。
スライムが居た場所を確認すると、今までにはなかったラムネ瓶のビー玉の様な物が落ちている。
(これ、なかなか出ないスライムの核だ!)
これはいざって時の資金にするために取っておこう。
(2体倒した。目標はあと1体だけど、出来るかな?)
慎重に自分の状態を確認する。さっきはドキドキしたけど今は落ち着いている。
疲労感もさほどない。サーチの反応は少し移動したところにある。
予定通り3体目の場所に移動を開始した。
3体目のスライムがすぐ近くにいる。このスライムは白っぽい色のスライムだ。
(スライムの色に意味があるのかな?)
今までのは魔法で倒していたから、剣術スキルも試すために今回はただのナイフで倒してみる。
慎重にステルスをしてスライムに近づいてナイフを振るだけ。
そっと近づいてナイフを振るう。動かれて外してしまった。
スライムに向かってナイフを向けるが、スライムが体当たりしてきた。
とっさに左腕ではじいてしまった。はじかれたスライムはずいぶん飛んで行ってしまった。
「痛いよ。仲間がいればもっと簡単に出来るのかな……」
思わず愚痴が口からこぼれる。左腕が傷むので今日のスライム狩猟は終えて街に帰ることにする。
あらためてステルスを使用してサーチで安全確認しながら道の方へ戻ることにした。
いつも以上に慎重に歩いて、なんとか道が見えるところまで戻ってこれた。
(左腕が痛い)
座り込んで左腕を確認すると、ひどいあざになっていた。
痛みをこらえて手を動かしたり触ったりしたところ、幸い骨は折れていなさそうだ。
「怪我や病気の治療はイメージ的に光魔法が得意そうだよね。ヒールが怪我で、キュアが状態異常や病気を治すってのが定番。今は怪我だからヒールだね。≪ヒール≫」
痛いのでイメージしやすいように言葉に出しながらヒールを行った。
左腕がほのかに光る。痛みがなくなったのでヒールを止めると、ひどかったあざが無くなっていた。
「スライムを侮っていたよ。成功続いてたから、剣術スキルもあるし大丈夫だと思っちゃった」
落ち込みはするけど、生きている。最初から全てが上手くいくはずないし、生きて五体無事ならそれも経験としなきゃいけない。
「ここで落ち込んで油断したら駄目だ」
治療の間は無防備になっていたので改めてサーチを行う。
今まで無かった反応がある。スライムの反応に近いのに危険ではない?
しかも自分に向かって移動してきている。
ナイフに氷の刃を付けて身構える。もうそろそろ見えるところに来る。
緊張しながら身構える。
出てきた、白いスライム。まさかさっき体当たりしてきた個体か?
白いスライムがこちらに近づいてくる。
"マスター"
(何か聞こえた?)
スライムが近づいてくるのに、かすかに聞こえる声が気になってしまう。
"追いついた"
スライムに警戒しながら、まさかという思いがわいてくる。
サーチでは危険を表していない。一応、念のためスライムを鑑定してみる。
従魔
スライム(白)
マスター ニーナ
いつの間にテイムしていたんだろうか……。
嬉しそうな感情を伝えてきながらスライムが足元まで来た。
"マスター"
現実逃避しても仕方がない、鑑定でテイムしているのが確認できちゃったんだから。
「名前はある?」
一応、スライムに聞くと"名前 何?"って片言で聞こえてきた。
「名前無いみたいだから名前つけていい?」
スライムから嬉しそうな感情が伝わってくる。かなり期待されているみたいだけど、私にネーミングセンスは無い。
スライムを持ち上げてみると、少し大きい大福に見えてきた。
(さすがに大福は無いな)
改めてスライムを見る。せっかく仲間が出来たんだからいい名前を付けてあげたい。
(白い球だから、真珠かな。パール?もっと呼びやすい名前がいいな。)
ちょっと悩んで、「ルルってどうかな?」て本スライムに聞いてみた。
"ルル 名前"
片言だけど嬉しそうなのでルルに決定した。
「あなたの名前はルルよ。私はニーナ、これからよろしくね」
改めて名づけると、ルルが少しの間淡く光った。
何が起きたか心配して鑑定してみると、表示が変わってた。
従魔 ルル
スライム(白)
マスター ニーナ
どうやら正式に名付けられたみたい。
"マスター 仲間"
もしかして、体当たりされたときの愚痴の仲間って言葉で偶然テイムが成功したんでしょうか?
あまり気にせず、ルルを抱えて街への帰路に就いた。
(門やギルドでテイムした場合はどうするのか聞かなくちゃ)
初めて怪我をして愚痴をこぼしちゃったりしたけど、自分を裏切らないって確信できる仲間が出来た。
気にしないようにしていたけど、この世界に来てから感じていた孤独感が薄れた。
今日は痛かったし怖かった事があったのに足取り軽く街に向かって帰路に就いた。