第59話 鉱山の街 マホング
北のダンジョンのコデールで1泊した後、朝から出発して鉱山の手前の街のサマヴィーに一泊した。
今日一日走り切れば鉱山の街のマホングに入れる。
ダンさん達のスライムは走っている最中に瞑想の練習中みたいで、以前のダーモットのダンジョンでの特訓が良かったのか、まだ回復量は少ないけど瞑想自体は出来るようになったみたい。
朝からしっかり食べて、鉱山の街に向けて走り出す。
今回初めて知ったんだけど、ケイアからサマヴィーは侯爵領で鉱山の街は王領なんだって。
侯爵領と王領の道の所に一応検問があって、そこでギルドカードと魔道具での鑑定で犯罪歴?を調べられた。
基本的に普通に生活していれば引っかかる事は無いので気にしないでいいらしい。
私たちも普通に通れたので、良かった。
検問を無事に通れたので、すぐそばにある野営地でお昼休憩をして、後は街まで一気に走ってしまう。
休憩時間を短めにしたおかげか、検問の待つ時間があったけれど夕方になる前には鉱山の街マホングに入ることが出来た。
お昼に聞いたんだけど、このマホングには温泉が湧いているのでお風呂がある宿もあるんだって。
宿泊料は変わらなくて、オプションでお風呂を使用するかを選べるみたい。
お風呂に入りたいってお願いして、お風呂が入れる宿を利用する事になっている。
(温泉♪温泉♪)
3日間走り続けていたので、明日は一日のんびりしてスライム探しは明後日からの予定になっている。
カレンとサラが身体強化や持続力強化が出来るようになったら、温泉の事を話して絶対に一緒に来よう。
もしかしたら、カレンとサラもお父さん達から鉱山の街の話しを聞いて、温泉の事を知るかもしれない。
何かお土産に温泉にまつわるいい物があるといいんだけど。
どうやらいい宿を知っているみたいで迷いなく歩いていくダンさんに遅れずについていく。
迷子対策か私の隣をロウさん、後ろをカイさんが歩いている。
ダンさんが入っていった宿屋は、見た目は今までの街の宿屋と変わらないんだけどお風呂あるのかな?
4人部屋を借りて部屋に入る。
「ダンさん、お風呂ってどうなってるんですか?」
「楽しみにしているのはわかったから落ち着け。お風呂は共同風呂で更衣室は男女は分けられているが風呂は混浴だ。注意点は、風呂で着る専用の服を着てクリーンを必ずかけてから入るようにって言われた」
混浴だけど、服を着るタイプのお風呂か。
「その専用の服はどこで購入できるんですか?」
「宿で購入できるみたいだよ。空腹や水分を取っていない状態で入ると気分が悪くなることがあるって言っていたから先に少しだけ食べて水分取ってからな。お風呂出たら夕食にしよう」
すぐにでも行きそうな私をなだめながら、部屋で少しだけ渡されたおやつを食べて水を飲む。
3人もお風呂に付き合ってくれるみたいで、一緒におやつを食べる。
スライム達は小さくなっているなら一緒でもいいみたいなので、ルルとリトは首に、マリンは最近伸びてきた髪が湯につかないようにヘアゴムの代わりに髪をまとめてもらう。
(後でスライム達が水遊びできそうな場所を教えてもらおう)
お風呂に行く前に用足しを済ませて、受付で専用の服を人数分購入して更衣室に入る。
男女別なので、入り口で分かれるのでお風呂側の出入り口で待っているように言い聞かされた。
更衣室は、一応鍵のかかるロッカーもあるし個室になっている場所もある。
個室に入って専用の服に着替えて、脱いだものはアイテムボックスに収納する。
専用の服は、濡れても透けない様に濃い色の生地で甚平みたいなデザインの服なのでなんか懐かしさを感じた。
着替えたところでクリーンをかけて、お風呂側の出入り口から出てダンさん達を待つ。
やっと3人が来たので、お風呂に入る直前にもクリーンをかけてゆっくりと浸かっていく。
ゆっくりと温かさが浸み込んできて、走ってきた疲れがお湯に溶けていくような開放感があった。
服を着て入るのはもう慣れたので、靴を脱いで入れるだけでもリラックスできる。
(絶対、カレンとサラと一緒に来よう)
「気持ちいい……」
思わず独り言がでてしまった。
「これ気持ちいいな」
ふふふ、お風呂の魅力に気が付いたな。
「俺は苦手だな。先に部屋に戻らせてもらうよ」
カイさんは苦手だったみたいで、早々にお風呂から出て行ってしまった。
ロウさんとダンさんは大丈夫だったみたいで、のんびり私と一緒に浸かっている。
お風呂は残念ながら露天風呂は無いし、色々なお風呂が有るわけでは無い。
けれど自分で作った即席のお風呂では無く、この世界に来て初めてのちゃんとしたお風呂を足を伸ばして満喫した。
夕食を食べる時間も必要だし、あまり長く浸かるのも疲れちゃうので名残惜しいけど出る事にした。
出る時にもクリーンを使用すれば綺麗になるので、更衣室を濡らしてしまうこともない。
着替える時に悩んだけど、一応防具も着ておいた。
出口で2人と合流して、私とダンさんが食堂で場所取りに、部屋にカイさんを呼びに行くことにして別れた。
食堂で無事に空いているテーブルに座れたので、ロウさんとカイさんを待つ。
「土産だけど、明日探すか?」
「明日はお休みでしたっけ?」
お風呂に入ったら、明日の予定をすっかり忘れてしまった。
「休み予定だよ。先に土産物を探しておいた方がスライム探しに集中できるんじゃないか?土産も1個じゃなきゃいけないわけでもないし」
ダンさんの提案は考えるまでもなく、素敵なものでワクワクするものだった。
「お土産探しに行きたいです。でも、ダンさん達の疲れが取れないんじゃないですか」
お土産は探しに行きたいけど、ダンさん達を疲れさせるのは嫌だった。
「ニーナが平気なくらいで俺たちが疲れていたら、そりゃダメだろ」
後ろから頭を撫でられた。
「鉱山の街って言われているから鉱山があるのはわかるだろうけど、ここはダンジョンもあるんだよ」
「ここのダンジョンは鉱物とか原石とかも宝箱から出るからひとまとめにして鉱山の街って言われているんだよ」
ダンジョン込みで鉱山の街だったのか。
「細工物を扱う店も多いみたいだから、色々見てみよう」
「お土産も楽しみなんですけど、スライムが出そうな場所ってどこに行けば教えてもらえますかね」
3人に笑われてしまった。
「それはギルドに行って聞いてみよう。そうだな、明日はギルドに行って情報を得てからお土産を探そう」
ロウさんとカイさんが席に着く前に食事を注文していてくれたみたいで、テーブルに食事が運ばれてきたので話は中断した。
パンと具沢山のシチューだったので、空いているお皿に分けて収納した。
パンはお腹空いていたのと美味しかったので、1個食べてしまった。
お風呂に入ったから食欲が増していたのかもしれない。
食べ終わったので部屋に戻ったんだけど、寝るにはまだ少し時間がある。
「まだ寝るには早いですよね?スライム達に魔力譲渡の練習をさせたいんですけど大丈夫ですかね」
「大丈夫だと思うぞ。俺たちもやるか」
私達はスライム達を抱え、スライム達はそれぞれのマスターに絆を通して魔力譲渡をしようと試し始めた。
その間は雑談をしていた。
ダーモットからケイアに戻った後は、何食べてたとか森に少し入った話とか。
森の話は色々聞かれたけど、無理はするなよってだけで咎められはしなかった。
今度ケイアに戻った後にカレンとサラと一緒に森の活動の仕方を教えてもらう事になっているって教えたら安心もしてたけど気遣われた。
だから、教えてもらってみて心が辛いようならすぐに言ってやめようと思っている事までちゃんと伝えたら今度こそ安心してくれた。
私のあくびが出てしまったので、魔力譲渡の練習は終了して寝る事になった。
「明日は午前中はゆっくりして、午後にお土産探しに行こう」
「勝手にお風呂に行くなよ。誰か付いて行くから」
「はーい。午前中にお風呂に行きたいのでその時はお願いします。お休みなさい」
「了解。お休み」
挨拶をして、自分に割り当てられたベッドに向かう。
防具を外して手分けしてクリーンをかけて、横になる。
明日もお風呂に入れると思うと嬉しくてニマニマしながら目を閉じたら、あっという間に眠ってた。
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