第51話 思いもよらない出会い
今日は起こされる前に目が覚めた。
スライム達も起こす前に私が目を開けたからびっくりしていた。
「おはよう。今日は自然に目が覚めたよ」
スライム達を撫でて、クリーンをかけて広場に向かった。
広場の隅でスライムたちを降ろして、横で柔軟をする。
十分に柔軟を行ったら、走りこみから素振りを行う。
広場から出て、延泊手続きして部屋に戻る。
朝食を食べながらちょっと色々考える。
今後の予定を考えていたんだけど、他の街に行くときに本気で走れば野営は必要ないけどダンジョンだと野営するよね。
スライム達に守ってもらえるといっても、セーフゾーンで野営するときに冒険者に襲われたらうちの子達がバリア出来るといってもかなわないだろう。
やっぱり仲間を作らないとダメかな?
まだダンジョンに本格的に行くことは無いから、しばらく後でもいいけど今から考えておかなきゃな。
自分が仲間を作るなら、どんな人がいいんだろう。
信用できる人なのは前提だよね、スライムを可愛がってくれる人かな。
後は女性がいいな、出来れば同じくらいの年齢だといいんだけどな。
まあ、おいおい考えていこう。
そんなことを考えながら食べていたら、随分時間がたっていた。
急いで防具を付けて、街を出る。
何時も角ウサギを狩猟している辺りまで道を進んで草原の中に入る。
今日はちょっと初心に帰って薬草採取をしよう。
サーチで薬草を意識して、反応があるところで薬草採取とついでに周りの雑草も集めて収納する。
薬草を採取しながら、初めて採取して買い取ってもらえた時のことを思い出していた。
あの時は本当に1人で、門番やギルドの人としか話したことなくて不安で焦っていて淋しいと感じる事すらできなかった。
その日の夕食の時にダンさんに声かけられたんだよな。
あの時から1カ月しかたってないのに、スライムをテイムして角ウサギやゴブリンを倒せるようになったよ。
元の世界とは何て違いだろう。
虫とかならともかく、生物の命を奪うなんてしたことなかったのに。
遠くに来ちゃったな。
なんとなく覚えているのは独身で仕事をしていたこと、家族は兄と姉がいたことくらい。
親不孝しちゃったんだな。
名前も顔も思い出せない、でも懐かしい私の家族。
元気でいますか?私は異世界でスライムと一緒に元気に生きています。
生きていきます。
でも……やっぱり淋しいな……。
涙がこぼれてしまう。
どんだけ余裕がなかったのか、やっと自分の死と家族との別離の悲しさを感じるようになるなんて。
とりあえず周りに人が居ないから、安心して泣いてしまう。
こらえていても辛いだけだから、泣ける時には泣いた方が楽になれるのは経験で知っている。
スライム達に慰められながら、泣いたらちょっとすっきりした。
この悲しさ淋しさはこれからも時々襲ってくるだろう。
そう簡単に消えるわけがない。
時薬ってやつで、いずれ回数がゆっくりと減っていく。
だから時々はこうやって、もう会えない家族を思って泣いてしまおう。
でもその後には美味しい物でも食べて笑おう。
お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん……会いたいな。
しばらくスライム達に包まれながら泣いた。
グーってお腹が鳴った。
この体は成長期、悲しんでいてもお腹は空く。
薬草は2束しか集めてないけど、まあいいや。
「ありがとう。お昼にしよう。お腹空いたよ」
スライム達を優しく撫でて、椅子をテーブルを出してお昼にする。
今日は肉の串焼きを一本全部食べる。
食べたらなんだか元気が出てきた。
よし、前向きにとらえよう。
ようやく余裕が出て来たってことだろう。
この淋しさは消えないけれど、大切なものだから覚えておく。
「さあ、午後は何をする?」
"""水遊び"""
じゃあ大きい石タライを出して、スライム達をぽいぽい入れていく。
入ったとたんに楽しそうに高速ボートと化すスライム達。
私も手を入れて、濡れるのもかまわず波を作ったりかけたりした。
スライム達は近くを通る時に水をかけていく、それに向かって水をかけ返したりして遊んだ。
もっとも私はすぐに寒くなって、石タライのそばを離れてバリア内をちょっと暖かめにして身体を温める羽目になったけど。
春に水浴びは寒かった!
身体も温かくなったし、そろそろ街に戻る事にしよう。
「そろそろ帰るよ」
スライム達も出てきたので石タライを収納してしまった。
スライム達を抱き上げて、道に向かって歩く。
今日はそんなに草原も深く入ってないから道までも近かった。
道をのんびり歩いていると前の方に歩いている2人の子どもが見えた。
(子供だけって珍しいよね)
自分も一人だけど、私は事情が事情だしな。
のんびり歩いているけど追いついてしまいそうだ。
(随分ゆっくり歩いているんだな)
もうすぐ追いついてしまいそうなときに、前の一人がぐらっと倒れた。
びっくりして駆け寄ると、倒れた子をもう一人が支えようとして崩れて下敷きになっていた。
「大丈夫ですか?」
「助けてくださーい」
倒れた子を支えて横にして、下敷きになった子を助けた。
「サラ、大丈夫?え、誰か救急車!いやー、お父さんもおじさんも居なくなっちゃったのに、サラ!」
今この子救急車って言った?
パニックになっているのかこちらを全く気にしていない。
とりあえず倒れている子を鑑定してみよう。
サラ 10才
心労 過労
状態異常が分かるのはありがたい。
「落ち着いて、心労と過労だって命に別状はないよ」
何度か声を掛けてようやくこちらの声が聞こえたみたいだった。
「え、日本人?」
こちらに気が付いた第一声がそれって……。
「元ね。あなたは?外国の人か何か?」
「いやバリバリ日本人ってそうじゃなくてサラは死なないのね。大丈夫ね」
「鑑定したら心労と過労って出たよ。死にはしないと思うよ」
銀髪の元日本人は安心したのか、泣き出した。
「私たちはいきなり転生させられて、それでも父親と10年頑張って生活してきたのに父親たちが戻ってこなくて。言われたとおりにケイアの街に向かっていたらサラが倒れて……」
「転生させられた人たちもいたんだ。あなたの名前は?」
「私はカレン。日本人だった時の名前は覚えてないの」
「私はニーナ。つい1カ月前に転移させられた元日本人。同じく日本人だった時の名前は覚えていないよ」
お互いに簡単な自己紹介をして、倒れている女の子を地面に寝かし続けるのもあれなので身体強化をかけて背負って街に向かうことにした。
「ニーナ大丈夫?同じような身長なのに」
「身体強化しているから大丈夫だよ。カレンこそ大丈夫?」
先程していた自己紹介でカレンとサラは父親が同じグループの冒険者で、父親がダンジョンに入っている間は二人で宿屋で留守番をしていたんだそうだ。
その間に同じ転生者だとわかって、それからは父親不在の間は力を合わせて生活していたんだって。
背中のサラを揺さぶらないように歩いていたけど、夕方前に街に着くことが出来た。
門の所で兵士さんに事情を話して、カレンの話しに嘘がないことと鑑定で問題なかったのでカレンがサラの分もお金を払って入場証を貰っていた。
私は引き続きサラを背負ったままギルドに行って、事情を話して先にカレンの登録と宿泊所の2人部屋を借りる手続きをさせた。
サラは起きてから登録すればいいと気遣ってもらえたのは良かった。
カレンが借りた部屋の番号のドアを開けて、ベッドにクリーンをかけた後にサラにクリーンをかけてベッドに寝かす。
カレンの方を見ると、カレンも眠そうだったので明日はギルドの広場か食堂に居るので起きたらそちらに来ることを話し、カレンにも念のためクリーンをかけて部屋を出た。
まさか自分達みたいな転移者だけじゃなくて転生者もいるとは思わなかった。
なんか薬草採取中に凄くブルーな気持ちになっていたのに、驚きでどこかに行ってしまった。
とりあえず夕食を食べに食堂に戻り、いつものスープとパンを注文した。
席で分けて収納して食べる。
最初は注目浴びていたけど、最近ではそんなこともなくなったはずなのに今日は注目浴びているな。
多分サラを背負って宿泊所に入ったのを見られていたんだろうな。
カレンとサラの個人的な話になっちゃうから私が説明するのは気が引ける。
今日は視線に気が付かないふりして、さりげなく急いで食べて私も宿泊所に戻ろう。
食べ終わって食器を片付けて宿泊所にさりげなく急いで戻る。
宿泊所の部屋に入って防具を外して手分けしてクリーンをかける。
毎日クリーン使っているからみんな発動がスムーズになった。
やっぱり継続は力なりだね。
「明日は今日あったカレンとサラが起きるのを待つから、広場で特訓しようね」
"""はーい"""
「明日もいつも通りに起こしてね。お休みなさい」
"""お休みなさい"""
何とも言えないタイミングで会った転生者。
せっかく出来た縁だから仲良くなれるといいな。
そんな期待を抱きながら目を閉じた。
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