第47話 森に再びチャレンジ
今朝は首の後ろに振動した身体をつけられて起こされた。
「いつもありがとうね。おはよう」
まだ半分寝ていたのか、ほぼ無意識にクリーンをかけて広場に向かっていた。
広場の隅でスライム達を降ろして、隣で柔軟を始める。
柔軟をした後には走り込みと素振りを行う。
部屋に戻りながら延泊手続きをして、部屋で朝食を食べる。
「今日は森の暗いところに少しだけ入ってみようか。早めに帰って特訓する?」
"早めに終わらすのはいいね"
""特訓""
スライム達も予定に不満はなさそうなので、その予定で今日は過ごすことにする。
防具を身に着けて、街を出て森に向かって進む。
地図を確認して前回と同じ位置から森に入っていく。
サーチ、ステルス、バリアが無くならないように気を付けて、森を少しずつ進む。
前回の木漏れ日の場所まできたので、今日は目的の暗い場所に入っていく。
サーチで安全を確認しながら少しずつ進む。
この暗くなった場所で、服の色も黒系になったので以前の服より確実に目立たなくなっている。
サーチでも危険個所が木漏れ日の場所より明らかに暗い場所の方が反応が多い。
この近くにも少し先に反応がある。
見通しが悪くて、遠見を使っても上手く見えない。
反応ではゴブリンなんだけど、複数反応が重なっているので何体いるのかわからない。
少しづつ進んでようやく見えるところまできた。
ゴブリンが5体やっと見えた。
ここから魔法を発動させて数体片付けてから剣で突撃することにした。
ナイフに氷の刃を付けてから、3体に水球を発動させて残りの2体に身体強化で一気に近づく。
1体をまず剣で一振りし、暴れている水球が付いている3体を避けて残りの1体に剣を振るう。
水球を発動させなかった2体は何が起きたか理解できなかったのか反撃するタイミングもなかったみたいであっさりと倒せてしまった。
2体を倒している間に水球を発動させた3体も動かなくなった。
鑑定で完全に倒したことを確認して、急いですべてを収納しその場を後にした。
少し離れて太い枝を持つ木に登って枝の上で息を殺す。
しばらくしたら、ゴブリンが3体先程の場所にやってきた。
その場でしばらくきょろきょろと周りを見渡していたけど、諦めたのか来た方向に戻っていった。
あそこで右耳をはぎ取ったり作業をしていたら、先程の3体と戦うところだった。
それだけじゃない、戦っている最中に比較的近くに別のグループが近づいてきていた。
そのグループも合流したとしても勝てたかもしれない。
しかしかなりの確率で、次から次へと連戦になっていただろう。
まだ森に慣れていない段階でそんなに連戦していたら、途中で気力が持たなかったかもしれない。
戦いの最中もサーチに気を配っていて良かった。
もうしばらく木の上で気配を殺して森の様子を見る。
やはり明るい場所よりも反応が多いし反応が1体ではなくて複数で動いている。
木漏れ日の場所から少しづつ森に慣れていった方がいいかもしれない。
しばらくしてもこちらに来るような反応が無かったので、木から降りて草原に向かって移動を開始する。
スライム達にも何か変化や気づきがあったら教えてくれるようにお願いして、サーチの反応を気を付けて確認しながら草原に向かって森を抜ける。
森の裾を抜けて草原に入った所でサーチを確認して安全確認して休憩にした。
椅子を出して座る。
「みんなも安全を確認してくれてありがとうね。サーチがあるけど後ろは視認できないから助かるよ」
"これからも見るよ"
""安全第一""
「ありがとう。これからもお願いね。ねえ、みんなってゴブリンも食べたい?」
"""食べる"""
それならと、ゴブリンを出してすべてのゴブリンから右耳を落として右耳だけ収納した。
「みんなどうぞ。5体あるから仲良く分けてね」
"""はーい"""
私は申し訳ないけど、見ないようにお昼を食べた。
緊張からか今日は食欲があまりわかなかったので、具沢山のシチューを食べるだけにした。
食べ終わって、街の外だから完全には緊張を失ってはいけないんだけど、森の中に比べたら危険度が違う。
食べ終わったのかスライム達が膝の上に小さくなって乗ってきた。
皆をモニュモニュしていたら気持ちが落ち着いてきた。
「みんな今日はここで特訓しようか」
"""特訓するー"""
膝から飛び降りながら大きさをバスケットボールくらいの大きさに変えて、少し離れたところに移動して特訓を始めている。
その様子を見ていると、ルルは光の矢を撃とうとしているのかな。
マリンは水を凍らせることが出来るようになったので、矢を打ち出そうとしているみたい。
リトは風の壁を出そうとしているのかな?
私がダンジョンでけん制に壁を出しているのを見ていて、自分で考えのかな?
確かにダンジョンでは火魔法で壁を作っていただけだった。
風で壁を作るなら私はどうするか……。
考えた結果壁じゃなくなった気がする。
試しにスライム達に渡した的の角ウサギと同じくらいの硬さで1mくらいの高さの円柱を作る。
その円柱の的に向かって先程考えたイメージで魔法を発動する。
的を取り巻くように風の壁が渦を巻く。
そこで一度魔法を解くと、的には傷一つなかった。
今度は的の周りに風の壁が出来て、内部にウィンドカッターが飛び交うイメージで魔法を発動した。
10秒ほどしてから魔法を解除して的の様子を見ると、ずたずたになっていた。
「名前つけるならトルネードかな?」
私が風の魔法を使っていたのに気が付いたのか、リトがこっちに飛び込んできた。
"マスター、今の魔法何?"
「今のはね、的の周りに風の渦の壁を作って、その中でウィンドカッターを飛びかわしてたんだよ。風の渦の壁がウィンドカッターを吸収すればその中だけが攻撃対象になるでしょ」
リトを抱っこしながらもう一度的に向かってトルネードを発動させる。
少ししたら解除して、リトに聞いた。
「どう?少しは参考になりそう?」
"多分。練習してみる"
リトは離れて今見たものを整理して自分で再現できるか考え始めたのか動かなくなった。
私は椅子を出して座って、瞑想しながら休憩する。
明日は森の暗いところで魔石拾いをしよう。
森に慣れながらちょっとした収入にもなるからいいんじゃないかな。
余裕あれば薬草も採取できるかもだし。
「そろそろ街に帰ろうか」
スライム達に終了を告げて、片づけをして街に向かう。
無事に街まで戻って、ギルドカウンターで角ウサギを3体出して、1,800ルーを受け取った。
食堂に移動して、パンとスープを注文して席で分けて食べる。
黙々と食べていると、プリシラさんが階段を駆け上って食堂を見渡して凄い勢いでこちらにやってきた。
「ニーナ」
嬉しそうに呼ばれて差し出されたのは、1体の白いスライム。
「出来たの。教えてくれてありがとう」
「テイムおめでとうございます」
「今日テイムできたのは私だけだったんだけど、明日もマリーはテイムしに行くって張り切っているわ」
私も嬉しくなって、プリシラさんの耳を借りて小声で話した。
「お祝いに大きさを変えるのと、血抜きの仕方を教えておきますね。マリーさん達がテイム出来たらプリシラさんの子から教えてあげてください。あと、すぐにはクリーンは出来ないので、たくさん話しかけて会話が出来るようになったら沢山教えてあげてください。マリーさん達がバリアやクリーンを使う時に近くに行って教えてあげるといいですよ。あと、うちの子達はスライム討伐などもやってました」
手短に必要だろう事を伝えると、抱きしめられた。
「ありがとう」
「いいえ、スライムはバリアも出来るようになるし、慣れたうちの子は私をバリアに一緒に入れる事が出来ます。プリシラさんの子もきっと出来るようになります。何ならプリシラさんも明日もう1体テイムすればいいですよ」
小声で伝えると、プリシラさんも笑い出した。
「それいいわね。明日また頑張るわ」
プリシラさんの子を借りて、うちの子達に大きさ変えるのと血抜きの仕方を教えてもらう。
"マスター教えたよ"
「ありがとう。これでプリシラさんの子に伝え終わったみたいです」
プリシラさんにスライムを返しながらさらに小声で伝える。
「複数テイムするなら色違いで揃えるといいかもしれません」
プリシラさんはうちの子達を見て、うなずいた。
「明日また個室予約するから女子会しようね。夕方近くになったら広場か食堂に居てね。探しに来るから」
「楽しみにしています」
どうやら明日は女子会が決定になったみたいだ。
マリーさん達は宿に帰っているみたいで、プリシラさんは嬉しくて私にわざわざ報告に来てくれたんだって。
プリシラさんは手を振りながら宿に戻っていった。
私は食べ終わっていたので食器を片付けながら食堂を見たら、所々にスライムを連れている人が居た。
(スライムが増えてる)
なんか嬉しいね。
宿泊所に戻って、各自手分けしてクリーンをかける。
明日は森に入って魔石拾いをする予定だから、しっかり寝ないと。
「明日もいつもの時間に起こしてね。お休みなさい」
"""お休みなさい"""
目を閉じたら、スライムがたくさんポヨンポヨン跳ねているイメージになってしまったけど、楽しいのでそのままスライムを数えていたら眠っていた。
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