第45話 服を作る
今日は顔をペシペシされまくって起きた。
なかなか起きなかったのか微妙に顔が痛い。
「おはよう。起こしてくれてありがとう。ところで顔が微妙に痛いんだけど……」
"マスター起きなかった"
やっぱりか……。
「お手柔らかにお願いします」
クリーンをかけて広場に行って運動を始める。
今日は服を作るつもりなので、しっかり運動をする予定。
お決まりの場所になりつつある、広場の隅でスライム達が特訓を始める。
私は走った後に素振りを行う。
何時もより丁寧に剣と棒の素振りを行う。
いつも以上の時間をかけて素振りをしたからか、手のまめが破けてしまった。
自分で治してもいいんだけど、ルルの練習にしてもらおう。
ルルの場所に行って手を治す練習するか聞いた。
"ルルが治す"
やる気にあふれているので、治療をルルに任せる事にした。
ルルが集中すると徐々に傷が治ってきた。
以前は治しきれなかったけど、今回は治しきる事が出来た。
"ルルやったね。今回は治しきる事出来たよ"
"やったよマスター"
これにはみんなで嬉しくなって、みんなでわちゃわちゃモニュモニュした。
ひとしきりスライム達と喜んで、再びスライム達は特訓に戻って私は走ることにした。
何時もだったら朝食を食べ終わっているくらいの時間になったので運動を終わりにする。
広場を出ようとしたら、テッド達も運動をしていたけどこちらに気が付いたので手を振っておく。
そしたら、こちらに全員で走って腕を引っ張られて人が少ない端っこに連れていかれた。
「どうしたの?」
「ニーナ、スライム達が血抜き出来たんだ!」
「大きさも変えられるようになって、ニーナみたいに肩に乗れるようになった」
「買い取り額もアップしたよ」
「こんなん教えて大丈夫か?」
4人が色々言っているけど、まとめるとこんなことを小声で話してきていた。
「血抜きできるようになって良かった。大きさも変えられる方が便利だよね」
「そうだよ「じゃなくて、教えても大丈夫なのか?」」
テッドが同意しようとしたのをマークがさえぎって心配してきた。
「大丈夫だよ。ダンさん達にも教えているし」
えって顔してるけど本当だから仕方がない。
「一部の先輩冒険者とギルド依頼で解体の人にも教えているよ。だから血抜きは大丈夫」
「ちょっと待て。血抜きは大丈夫って他にも何かあるのか?」
何かに気が付いたのか、オーティスがより小声になって言ってきた。
「内緒」
にっこり笑って答えになっていないことを答えておく。
4人とも力が抜けたみたい。
「スライム達に色々教えてあげてね。そしてうちの子達が覚えていない事だったら教えてね」
意味深に笑ってあげると、わかったって返事が返ってきた。
「じゃあ、わたしは朝食にするからまたね」
挨拶をして広場をでて延泊手続きしてから宿泊所に戻り、いつもより遅い朝食を食べる。
「今日は森に行かずに服を作ります。時間が出来たら特訓しようね」
"""わかった"""
ベッドを収納しちゃって、部屋にクリーンをかける。
昨日作ったテーブルを出すと、いい感じにベッドがあった場所に収まった。
テーブルにもクリーンをかけて、テーブルの上に頂いた生地を出す。
今日作る生地と使わない生地に分けていたら、あの時選んでいない生地が混ざっていた。
その生地は普通の生地だけど、とても柔らかい色合いの青色と緑色と生成り色の生地だった。
その生地にはメモが入っていて、『休日の服にでもしてくれ』って書いてあった。
私がこの丈夫な服しか持っていないこと、用意する大人もいないことを知っててこんな風に気を使ってくれる人に出会えたことに感謝しかない。
もう少ししたらこの生地で服を作ろう。
街を歩いている女の子みたいな、可愛い感じの服を。
この街にお祭りがあるか誰かに聞いておこう。
祭りの日までに服のデザインを決めて作ってお祭りに3人を誘って何かをおごろう。
あ、3人にお祭りを一緒に過ごす人が居るなら遠慮しなきゃね。
多分3人とも適齢期だからね。
その時は何か作ってプレゼントしよう。
プレゼント持っていくときに作った可愛い服を着て持っていけばお披露目出来るしね。
それまでにデザインを考えるのと、プレゼントも考えなきゃ。
楽しい想像だけど、そろそろ服を作り出さないと時間が無くなっちゃう。
使用する布以外は収納して、丈夫な黒系の布を広げた。
そして自分が今着ている丈夫な服を脱いで形を良く調べる。
今着ている服で不便はないので、同じ形にしようと思って調べていた。
気が付いてなかったんだけど、この丈夫な服は私が10cmほど大きくなっても対応できるように裾上げなどがされていた。
何度も服を作らなければいけないかと思っていたけど、この作り方なら10cm位までの成長なら手を加えれば着用することが出来る。
しかし裁縫のLv.MAXはやっぱり凄くて、作ろうと思ったものがどのように布地を裁てばいいのか線を引かなくてもわかるし、作り方もわかる。
以前の世界でも多少は裁縫をしていたけど、服を作るなんて授業以外にはしたことがない私でもこれだけの事が出来るようになるなんてありがたい能力を得る事が出来た。
スキルが導いてくれる通りに布を裁ち、縫い合わせていく。
集中して作っていたら、お昼までに上着を作ることが出来た。
お昼休憩で、スライム達には草を出してあげて私はスープとパンとトルティーヤを食べる。
食べ終わった後は、軽く体を動かすために広場に行ってスライム達に協力してもらって体捌きの練習をする。
疲れない程度に練習をして、部屋に戻って今度はズボン作りだす。
上着と同じようにズボンを脱いで観察して作り方を考える。
ズボンも上着と同じように10cm位の成長に対応できるようになっていた。
なので同じでいいので、後はスキルの導くままに布を裁って縫い合わせていく。
かなり集中して縫いあげたので夕食までに少し休憩時間が出来るくらいには上下を作る事が出来た。
今まで着ていた丈夫な服を脱いでクリーンをかけて収納した。
そして今作ったばかりの黒系の服を着て広場に移動した。
初めて作ったし、実際に動いてみて着心地を確かめてみないと本番に使用できないから。
スライム達は隅で特訓をしてもらって、私は普段通りに走ってから素振りをしてみる。
一通り動いてみるけど、問題なく動けるしほどける気配もない。
部屋に戻ってから脱いできちんと確認してみなければわからないけど、問題なく使えそうだ。
スライム達の近くで柔軟もしてみる。
前の世界では硬かったのに、身体が若いからか柔らかい。
初めての柔らかさに楽しくなって柔軟を続ける。
(これから朝の運動に柔軟やろう)
ぺったりと着くのが楽しい。
ふと視線を感じてそちらを見ると、久しぶりにあうジョンさんが居た。
「ご無沙汰してます。久しぶりですね」
そのままの姿勢で挨拶してしまったので、笑われた。
「久しぶり。しかし柔らかいな」
「自分でもここまでとは思っていなくて、始めたら楽しくなってしまって」
「そこまで柔らかかったら楽しいだろうな」
一緒に笑って、ジョンさんは帰っていった。
スライム達を回収して、部屋に一度戻る。
着ていた服を脱いで、縫い目がほどけていないか?切れていないか?などをチェックする。
どこをチェックしても大丈夫そうなので、この服を通常利用しよう。
チェックが終わったので再び服を着て、テーブルをクリーンをかけて片付ける。
そしてベッドを元通りに出しておく。
部屋を元通りにして、昨日の分も合わせて10体買取に出すために買い取りカウンターに行く。
カウンターで角ウサギを10体と告げると奥のテーブルに案内されたのでアイテムボックスから10体出した。
査定が終わって、3体小さ目で150の減額で5,850ルーになった。
その買い取り金額でお願いしてお金を受け取った後、食堂に行って夕食にする。
いつものスープとパンとトルティーヤを5本を半分にしてもらったものを注文した。
席について、スープとパンを分けてトルティーヤを1個残して収納してしまう。
ゆっくり食べていたらダンさん達が食堂に来た。
こちらに気が付いて来てくれたので、服を見せる。
「早速作ってみました。本当にありがとうございます」
「上手に作れているな。いい感じだよ」
「それに、休日用の生地もありがとうございました。驚きましたよ」
いたずらがばれたように3人とも笑ってごまかしていた。
すこし雑談して、食事中だったのと私がそろそろ眠くなるのを知られているので別れた。
食べ終わった食器を片付けて、ダンさん達に手を振って宿泊所に戻る。
部屋に入って、みんなで手分けしてクリーンをかけてベッドに入る。
「明日は服の丈夫さを見るために角ウサギを狩猟しに行こうと思うんだけどどうかな?」
"""いいよー"""
「ありがとう。明日も起こしてね。お休み」
"""お休みなさい"""
実際に服を作れたことの安堵と、運動とは違った疲れがあったのかあっという間に眠っていた。
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