第42話 魔石拾い
顔にひんやりするものが着いて目が覚めた。
視界が青い。
マリンが自身の身体を冷やしてくっついているみたいだ。
目元から手で外して、モニュモニュする。
「おはよう。マリンひんやり冷たいね」
"冷たく出来た"
「凄いや。私が寝ている間にも特訓しているの?」
"""内緒ー"""
可愛いことをいうので、3体まとめてモニュモニュする。
そしたらモニュモニュしやすいように小さくなってくれるのがもうかわいい。
いいかげんモニュモニュするのを止めて、広場に行って運動始める。
スライム達は隅でバリア特訓、私は走った後に素振りを行う。
運動した後に部屋に戻る際に延泊手続きをしてしまう。
部屋に戻って朝食を食べて、スライム達と今日の予定を相談する。
「今日は角ウサギを狩猟して、その後どうしようか?」
"特訓"
"ゴブリン"
"ちょこっと森"
「色々意見があるね。じゃあ午前中は角ウサギを狩猟して、早めにお昼を食べて森の裾でゴブリン探して見つけたら討伐。その時に森に少しは入れたら入る。でも決して無理はしないって感じでどうかな?」
"""いいね"""
今日の予定が決定したので、防具を付ける等の準備をする。
準備完了したらスライム達に乗っかってもらって街を出る。
草原に入って、角ウサギの反応を探す。
道の近くには反応ないので森の方に向かいながら角ウサギを探す。
2体のグループと3体のグループを見つけた。
3体の方にスライム達に行ってもらって、私は2体の方に行く。
狩猟したらすぐに収納してその場で待っててもらって私が迎えに行くことを打合せしてあったので、自分の割り当ての2体の狩猟が終わってすぐにスライム達を迎えに行く。
スライム達も収納まで終わっていたので、定位置に乗せて森の方に向かって少し移動する。
森の中でお昼を食べる余裕はまだないので、大分手前で早めのお昼を食べる。
お昼と夜にはスープとパンとトルティーヤ(半分)を食べるのが大分苦しくなってきた。
(成長するには栄養が必要だもんね)
この休憩の間にスライム達がご飯になるっていうので、角ウサギの血抜きをお願いする。
血抜きが終わり次第、クリーンをかけて収納する。
休憩を終わりにして、森に向かう。
今日は森と言っても裾周辺を探索するつもりだ。
そして、試したかったことをやってみる。
魔石をサーチしてみる事だ。
試してみたら、裾の方でも所々反応がある。
ゴブリンの反応と重なっているものもあるから、それは魔石を持っているゴブリンなんだろう。
試してみたいけど、ちょっと裾じゃなくてもうちょっと深いとこにいるから今回は諦めよう。
右の方に魔石単体の反応があるので行ってみる。
バリアやステルスもしているけど、サーチで慎重に安全を確認しながら進む。
反応がある場所に来たけど、表面には魔石っぽいのは見えないから土で手持ちスコップを作って掘ってみる。
すこし掘ってみると、魔力を内包する石が出てきた。
鑑定すると、
魔石(小)
ゴブリン
小さいサイズ
って出てくる。
(やったー。落ちてる魔石あるんじゃないかと思ったけど、やっぱりあったー)
冒険者が討伐したゴブリンはきっと取り逃しはないだろうけど、魔獣同士で命を落とした場合は地面などに落ちてるのがあるんじゃないかって思ったんだよね。
聞いた限り魔獣は魔石を狙ったりしないみたいだし。
森の裾じゃゴブリンの魔石がせいぜいだろうけど、中に入ったら何が見つかるか楽しみ。
試したかった魔石サーチが出来たので、次は近くにいる単独のゴブリンを目指して移動する。
草原ではないから慎重に静かに移動する。
ゴブリンが見える所まで来た。
今回は1番使い慣れている水球を使用して討伐する。
狙いを定めて水球を発動させる。
ちゃんと狙い通り頭部を覆うように水球が発動した。
びっくりしたのか驚いて動き回っているがどうにもならずに倒れ込んだ。
倒れてもしばらく水球をそのままにして、鑑定で討伐したことを確認してから魔法を解除した。
周りを気にしながら移動して、右耳を切り落として収納する。
昨日と同じ様にゴブリンの真下に穴を作って落として穴を塞ぐ。
花を手向けて森を離れるように移動をする。
森をだいぶ離れてサーチで安全を確認する。
深呼吸して緊張をほぐして街に向かって歩き出す。
今日はこのまま外壁の近くまで戻って魔法の特訓をする。
昨日特訓した場所に着いたので、スライム達をおろす。
マリンが使うかもしれないので、小さい石タライを出しておく。
私は土で魔石拾いに使えそうな砂場道具に有るようなふるいを作った。
あと使えそうなのは潮干狩りの時に使う様な熊手かな。
金属は持っていないので、土を固めて砂場道具にあるような熊手を作っておく。
作ったついでに使い心地を調べるために掘ったり、砂を振るったりしていると幼子が土遊びしているみたいで、だんだん微妙な感じになった。
他に使えそうな道具を思い出そうと思うけど、浮かばない。
砂場道具の確認はこれくらいにして別のことをしよう。
とはいってもそんなに時間がないから、大したことは出来ない。
土魔法で土が操れるなら下から硬くした円錐状の物を瞬間に出せたら攻撃になるんじゃないだろうか。
練習なので10センチくらいの円錐を土を硬くかためて作り出す。
出来たのでよく見てから素早く作れるように練習する。
繰り返す際には練習を兼ねてちゃんと崩してから行っている。
何度がやっていると慣れたので、大きさを一回ごとに変えながら作る。
だんだんとイメージ通りの大きさで素早く作れるようになってきた。
5本を同時に出すのも上手くいったので、何かの時には役立つかな?
今度は円錐じゃなくて壁の様に長方形を素早く出せるように練習する。
あまり大きいと目立っちゃうので、1mくらいの高さの壁を出したり崩したりする。
円錐で練習のおかげで、形が違うだけだからすんなり魔法が発動した。
ここまでの練習でそろそろいつも街に戻っている時間になったので、スライム達を呼び戻して石タライを収納して街に帰る。
ギルドに戻って、買い取りカウンターで角ウサギ5体を告げて奥のテーブルで5体を出す。
査定を待って、今日はマイナス要素が無かったので買い取り金額3,000ルーを受け取り、食堂に移動していつものスープとパンを注文して分けて食べ始める。
のんびり食べていると、名前を呼ばれた気がして顔を上げた。
テッド達が手を振ってこちらに来る。
「ニーナ見てくれ」
嬉しそうな顔をして差し出したのは1体のスライム。
「テイム出来たんだ」
テッドの横からマークもスライムを持ちながら報告してくれた。
なんでもオーティスとラリーがスライムをテイムしに行くので、自分たちも暇だから同じようにスライムを叩いていたらテイム出来たんだって。
「オーティスとラリーより先にマークがテイム出来て、俺もその後にテイム出来たんだ。オーティスとラリーもその後にテイム出来たんだけど、順番が違っていたら俺たちテイムせずに終わりにしていたと思う」
テッドが嬉しそうに、でもどこか悲しそうに言った。
「でも俺が最初だったから、テッドもやる気を出してテイム出来たんだ」
マークも嬉しそうだ。
嬉しそうに報告してくれる2人の後ろで、笑いながらオーティスとラリーがスライムを見せてくれた。
"ルル、テッド達のスライムに血抜きの方法と大きさを変える方法を教える事できる?"
"出来るよ。大きさはまだあまり変わらないだろうけど、血抜きは問題なく出来るよ"
"ありがとう。もしかしたらお願いするかも"
"はーい"
「スライムのテイムおめでとう。お祝いしなくちゃね」
「そんなつもりで声かけたんじゃないぞ」
急に困ったような、慌てたような変な顔になったのがおかしかった。
テッドがすぐ近くに立っていたので、かがんでもらって小声で話した。
「お祝いにスライム達に血抜きの仕方を教えますよ」
テッドは驚いて叫びそうだったけど何とかこらえていた。
「いや、だめだろそれ」
「いいの。友達でしょ。お祝いさせてよ」
「友達……でもいいのか?俺……」
「友達じゃないの?そう思ってたのが私だけなら淋しいな」
「ニーナが友達にしてくれるなら友達だ。ありがとう」
了解が取れたので、マーク達のスライム達も集めてもらう。
うちのスライム達に血抜きと大きさを変える方法を教えるように伝える。
スライムで集まってモニュモニュしてるのを見るのはとてもかわいい。
「そういえば、スライムのテイム方法よく知ってたね」
疑問に思ってた事を待っている間に聞いておいた。
「ああ、昔オーティスがじいちゃんに聞いた気がするって言ってな。物は試しに全員でやってみたんだよ」
「そうなんだ。でも良かったね。スライムに色々話しかけて教えてあげてね。きっと色々出来るようになるから」
最後の部分は小声で話しておいた。
テッドが少しピクってしたけど、こっちを苦い眼で見るくらいで済ませている。
ニヤって返しておいた。
ため息ついて頭をかいている。
そんなワイワイやっていたらポールさんがやって来て、みんなのスライムを見て大喜びしていた。
どうやら今日は別行動だったらしくて、どんな風に過ごしていたか話すために食堂で待ち合わせをしていたんだって。
私も祝いに誘われたんだけど、もう眠くなってきていたので素直に眠いって言ったら食堂に居た皆に笑われた。
周りからもう寝ろ、大きくなれないぞなんて声が飛んでくるのでお休みなさいって言って宿泊所に移動した。
ベッドはルル、防具はマリンとリト、自身と靴は私がクリーンをかけて横になる。
"テッド達のスライムに教えてあげてくれてありがとうね"
"血抜きは問題なく出来ると思う"
"まだ大きさ変えられないかも"
"街でのルールも教えたよー"
皆から返事をもらってみんなをモニュモニュする。
"""でも、他は内緒"""
"ふふ、今は内緒ね"
ちゃんと内緒にすることをわかっているんだね。
だんだん目が開けていられなくなったので、素直に挨拶を交わして目を閉じる。
嬉しいな、スライム仲間が増えていく。
気が付いたら投稿を始めて1カ月過ぎていました。
読んでくださる皆様のおかげで続けることが出来ています。
本当にありがとうございます。
自分で投稿して、初めてブックマーク、評価、いいねをの嬉しさを知りました。
大変励みになります。
これからもよろしくお願いします。