第41話 再びの手紙
今日は背中にポヨポヨ当たる感触で目が覚めた。
幸い夢を見ることなく眠ることが出来た。
(接触があるかもって無駄に怯えてしまっていたな)
そうほっとした時に手に手紙を持っていることに気が付いた。
「ごめんね。寝ている間に部屋に来た人とかいるの?」
"居ないよ。マリンがドームで覆っていたし"
パニックを起こしそうになったけど、何とかこらえてスライム達にさらに聞いてみた。
「手に手紙を持っていたんだけど、何かわかる?」
"わからない。マスターがアイテムボックスから出したんじゃないの?"
スライム達も含めて全員わからない間に手に持っていたってことになる。
背中を冷汗がつたっていくのが分かる。
手紙を読むのは怖いけど、読まないのも怖い。
勇気を出して、手紙を開いてみた。
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1カ月生存、お祝い申し上げます。
1カ月生存出来たお祝いをお伝えしたく、お手紙をしたためさせていただきました。
なれない世界、常識の中で無事に過ごすことが出来たことは凄いことです。
賞賛に値します。
1カ月を生存出来た祝いに30,000ルーを贈らせていただきます。
手の届かなかった道具などを揃えるも、一夜で使い切るも自由です。
別にこの手紙で皆様に試練や使命などを与える等は致しません。
どうぞこの世界で自由にお過ごしください。
今回も文末に現在の皆様の能力を記載させていただきます。
皆様のますますのご多幸をお祈りいたします。
10才 女
アイテムボックス(特大 時間停止)
鑑定 Lv.2
水魔法 Lv.3
光魔法 Lv.3
火魔法 Lv.1 → Lv.2
土魔法 Lv.1 → Lv.2
風魔法 Lv.1 → Lv.2
基礎魔法
掃除 Lv.MAX
調理 Lv.MAX
裁縫 Lv.MAX
ステルス Lv.2
サーチ Lv.3
テイム(スライム)
剣術 Lv.1 → Lv.2
冒険者の基礎知識
地図
遠見
木登り Lv.1
投擲 Lv.1
棒術 Lv.1
体捌き Lv.2
瞑想
追伸
ここまで読んでくださった方にお礼申し上げます。
一部の方が気にされているようですので、追伸にて記載させていただきます。
次にお手紙を差し上げるのはこの世界に来てから1年後です。
そして、次の手紙で最後です。
それでは、次の手紙までのご生存をお祈りしております。
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本気で怖い。
スライム達は気にしていないが、手紙を読み終わった時には既に目の前に30,000ルーが置かれていた。
ツアーコンダクターは想像の域を超えた存在なのは間違いない。
しかし、次の手紙はこの世界に来てから1年後にってかいてあるから、11カ月後にまた届くのだろう。
でもこの手紙の書かれ方だと、私以外にも接触を気にしている人が居たってことだ。
まあ気にするよね。
今思うとあの異様な空間を違和感を覚えさせないようにするだけの力に気が付いた人は接触があるのか気になるよね。
混乱してるのか思考がまとまらない。
取り敢えず今日は休みにしよう。
こんな状態で草原に行くなんて命を捨てるようなものだ。
取り敢えず広場に行って運動しよう。
昨日みたいに走って、スライム達と遊べば気分も変わるだろう。
なんか落ち着かないからとりあえず習慣である広場での体力づくりに行く。
スライム達を人が居ない隅に置いて、私は走り出す。
とりあえず何も考えないように走っていると、目に入る風景はどこを取っても日常なのでだんだん落ち着いてきた。
隅でバリア特訓するうちのスライム達、何人かいる冒険者の人達の運動する様子。
いつもと何も変わらない日常の風景。
(朝手紙があっただけで、他は何も変わらない。大丈夫)
何も対処や対策も立てられないんだから、資金が増えたと喜んでおこう。
贅沢せずにこのまま働いていれば、冬の資金は何とかなる。
生地も頂いたから、着替えも手に入れることが出来る。
そう考えると生活に少しだけ余裕が出来た事に気が付く。
もちろん、稼ぎ続ける事が前提だけど以前の様な焦燥感に襲われるような感覚は最近はなくなった。
ゴブリンも倒せたし、このまま冒険者を続けることが出来るだろう。
遠い将来はとりあえず置いておいて、生活を成り立たせることが出来た。
とりあえず常識を身に着けるための期間と成長するまでの期間はこの街をホームにして活動していこう。
なんせ10才だからか、冒険者ギルドに出入りしている誰よりも小さい。
さすがに疲れてきたので走るのを止めてスライム達の隣に座る。
"特訓はどんな感じ"
"""順調"""
"順調なんだ、良かった"
スライムを見ているのは本当に和む。
朝食を食べに部屋に戻るので、スライム達を回収する。
部屋に戻ってクリーンをかけてから朝食を食べる。
「今日はちょっと調子が出ないからお休みにしようと思うんだけど、何かしたいことある?」
"魔法の練習したい"
""練習いいね""
魔法の練習なら一度街から出て、近くの草原の中でやれば危険はないだろう。
そうときまれば防具を付けて宿泊延長の手続きしてから街の外に向かう。
外壁が見えるくらいの位置で草原に入ってサーチで安全を確認する。
その場の安全を確認したのでスライム達を降ろす。
「何の練習するの?」
"風魔法で風の温度変えられるんでしょ?それの練習"
"水魔法で氷の矢を作って飛ばす練習"
"魔力譲渡と瞑想の練習"
みんなばらばらの魔法の練習をするつもりみたい。
マリンは矢を飛ばすので以前収納していた的を少し離れたところに出して、それに向けて頑張り始めた。
リトは風を出してその温度を変えようとしている。
ルルは瞑想で魔力を回復して、魔力を使用したマリンとリトに魔力譲渡しようとしている。
うちの子はやっぱり頑張り屋さんだ。
普段だったら私も何かするんだけど、今日はどうしてもやる気が起きない。
何も書いていない木の板を出して、作る服のリストを作っておこう。
そうすれば勢いで無駄な服を作らずに済む。
木の板を出して、指先に熱を集中させて焼き付ける形でメモを記載していく。
・丈夫な服と同じ長袖シャツ
・丈夫な服と同じ長ズボン
・通気性のいい長袖シャツ
・通気性のいい半袖シャツ
・下着
・靴下
とりあえず必要な物を記載しておく。
靴下は糸から編むのかな?
足袋を作る要領で作れるかな?
どちらも出来そうだから集中出来るときに作ろう。
作る服のリストは出来たから、私も風魔法で温度を変える練習をしよう。
イメージしやすいから、手から風を出す。
エアコンをイメージすれば手から出てくる風の温度を変えることができた。
なんかエアコンの存在を知っていると直ぐにできそうな気がする。
リトのところに行って手から温かい風と冷たい風を出して見せる。
お手本が有るか無いかは魔法のイメージを作るのに大きな違いが出てくるから。
リトは何かを理解したのか頑張り始めた。
リトの邪魔にならないように離れて次はマリンの所に行く。
マリンのところでは、小さな石タライを出して中の水の温度を下げていくと氷が出来る事を実演してみせた。
氷を溶かして水に戻すと、マリンが石タライを利用して氷を作る練習をしたいというのでそのまま貸してあげた。
ルルは時々マリンとリトのところに行って魔力譲渡をしているようだ。
先程までいた場所に戻ってスライム達の様子を見守る。
見守りながらもバリアの中の温度を一定に保つ練習をしている。
これが出来るようになればリトに教えて行動中や私が寝るときなどにサポートしてもらえるようになるから。
(暑いのも寒いのも苦手だからね)
こんな調子でお昼を挟んで魔法の練習を続けた。
その結果、ルルは魔力譲渡がすんなり出来るようになって、マリンは氷らせることが出来るようになり、リトは風の温度を操れるようになった。
私もバリア内を一定温度に保てるようになったので、リトにそのことを伝えた。
次の目標にしてくれたので、夏までには出来るようになっているといいな。
街に戻って、まだ早いのでギルドの広場に行く。
今度は体捌きの練習をするので、広場の隅に丸を書いてスライム達に体当たりをしてきてもらう。
ルルが指示を出して、1体づつタイミングをずらしながら体当たりしてきていたのが時々2体で体当たりも入れてきた。
(難易度があがってるんですけど……)
しばらく避けまくって集中が途切れてきて体当たりが当たってきたので終わりにした。
少し休憩してクリーンをかけて夕食を食べるために食堂に移動する。
いつものスープとパンを注文して分けてから食べる。
(なんか今日は疲れた)
食べ終わったら、すぐに宿泊所に戻ってきた。
部屋に入ってすぐにクリーンをかけて防具をすべて外して横になる。
「ごめんね今日は私がクリーン掛けちゃって。もう眠いんだ」
"""いいよ。マスターお休み"""
「ありがとう。お休みなさい」
スライム達に返事をして、目を閉じたらもう眠っていた。
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