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第4話 はじめての薬草採取

 お腹が空いて自然に目が覚めた。

窓の木戸を開けて外を見るとまだ暗い。

少しぼーっとしていると、空の端が明るくなってきた。

夜明けのようだ。

(ずいぶん長いこと寝ちゃったみたい)

ドアの外からは、すでに人が動いている音が聞こえる。

(今日は薬草採取してお金を稼がなきゃ)

最低限の生活のためには、宿代の300ルーと食事代の50ルーが必要だ。

冒険者の基礎知識によると、一年は360日。四季があってこの街は90日くらいで季節が移り替わるみたい。

仮に冬に全く仕事が出来なかったとして、90日を過ごすのに31,500ルーかかる。

今は春だから、冬までに270日ないくらい。

休む日もあるだろうから、200日で計算すると、一日150ルー以上を稼がないと冬が越せない。

薬草を10束で400ルーになるから、毎日50ルーの貯金が出来る。

でもこれじゃ足りない。15束は毎日採取してこないと目標金額を達成出来ない。

冬の間の生活費だけじゃなくて、武器や防具も買う必要がある。

考えれば考えるほど早めにお金を稼ぐ必要がある。

(昨日歩いたことを思い出すと、森から道までは1時間かかった。

でも草原から街までなら30分くらいで歩けたはず。

私にはサーチと鑑定があるから、ほかの人より採取するのが楽だといいな)

考えがまとまったので、寝る前と同じようにベッドと自分にクリーンをかける。

(来た時よりも綺麗に。ってキャンプじゃないんだから)

とっさに出た習慣に自分であきれながら、立ち上がって宿泊所を出る。

カギを宿泊所の人に返せばチェックアウトになる。

(連泊の時はどうすればいいかは、採取してきてから聞こう)


 特に何事もなく街を出て道を草原目指して歩いていく。

時々サーチと近くにある草を鑑定している。

時々薬草があったりするので、既に3株採取している。

鮮度が悪くならないように採取したらアイテムボックスに収納している。

街を出て20分ほどで、周りは草原になったので道を少しだけ外れてアイテムボックスに収納していたスープとパンで朝ごはんにした。

宿泊所で食べようにも、部屋にはベッドしかなかったから食べられなかった。

(何か小さいテーブルとイスみたいなのが欲しい)

そのためにも効率よく稼がなければいけない。

そこで、良くネット小説で読んだ内容を参考にしてサーチで実験してみることにした。

(えーと、薬草を意識して≪サーチ≫)

草原の中に何カ所か反応がある。

思わずガッツポーズをしてしまう。

(これで反応あるところに薬草があれば、採取が効率よく出来る)

気を付けながら一番近い箇所に向かう。

そこには先程採取した薬草と同じ草が生えていた。

一応鑑定して薬草なのを確認して採取した。

それからは、採取してはサーチで薬草と危険なものを確認しての繰り返しだった。


 気を付けながらも夢中になって採取をしていたら、太陽が上まで登っていた。

(もうお昼だから、少し休憩しよう)

安全のためにサーチをして、さらにステルスをかける。

草むらに直接座って、収納していた食事を食べる。

(今日の夕飯も同じように分けて収納しておこう)

アイテムボックスを確認すると、採取した薬草は106株あった。

休憩がてら、10株ずつ麻ひもで束ねる作業を行った。

(最低限の目標は採取できた。あとは44株以上を頑張って採取しよう。しかし、鑑定が昨日より詳しくなってる気がする。もしかしたら勉強したら表示内容が増えるのかも)

気合を入れて、再びサーチして薬草採取を始めた。


 体感時間で2時間ほど追加で採取して、10株ずつ麻ひもで束ねた。

束ねた薬草がアイテムボックスに23個あることを確認して、嬉しくなった。

(これなら冬までに蓄えられるかも)

今日は15個を納品して、残りはアイテムボックスに収納して残しておく。

時間停止だからできる薬草貯金である。

ある程度、薬草貯金が溜まったら休日にするかテーブルと椅子を買おう。

暗くなる前に夕飯を済ませて宿に入るために、街に向かって帰路についた。

 思ったより街に近いところにいたのか、街に戻った時に15時の鐘が鳴っていた。

活気ある街中の美味しそうな屋台の誘惑を振り切ってギルドに真っ直ぐ向かう。

ギルドには昨日よりも人が多いけど、からまれることなく納品カウンターまでたどり着けた。

「薬草の納品をお願いします」

納品カウンターで薬草の束を15束提出する。

職員さんは丁寧に薬草をチェックするとカウンターにお金を乗せてくれた。

「はい。薬草15束確認しました。全部薬草だったので600ルーになります」

カウンターのお金が600ルーなのを確認して受け取った。

「ありがとうございます」

お礼を言うと、少し驚いたように見えた。

「またご利用ください」

返事を貰えたので手を振って宿の受付をするために別のカウンターに並んだ。

並びながら、手持ちのお金の確認をする。

昨日の残金が1,920ルーで、今日の稼ぎが600ルーだから2,520ルーだ。

念のためアイテムボックスを確認すると2,520ルーあることが分かる。

(アイテムボックスも有能だよ)

兵士さんがくれた巾着と400ルーをアイテムボックスから出して、巾着にお金を入れて収納する。

そんなことをしていたら、列が進んで自分の番になった。

「ギルドの宿泊所を借りたいです。一番小さい個室は空いてますか」

先程準備した巾着を出して、職員さんに伝える。

「空いております。1泊300ルーです。何泊しますか?」

調べてくれた職員さんにお金とギルドカードを出した。

「とりあえず1泊でお願いします。連泊の時は鍵などをどのようにすればいいのですか?」

「1泊ですね。こちらのカギをご利用ください。連泊の時ですが、カギは外出時もそのまま管理してください。ただ、予定超過の際は3日までは待ちますが、それ以上はギルドにあるマスターキーを利用して部屋を開けさせていただきます。その後にギルドにいらした際に3日分の超過分をお支払いいただきます。盗難などの保証はありませんので、貴重品などはご自分で管理が必要です」

なるほど、戻ってこれなくても3日間は待ってくれているんだ。

「わかりました。ありがとうございます」

戻されたギルドカードとカギを受け取って2階に上がる。

明日も早くから行動するために早めに夕飯を食べて寝るためだ。


 2階に上がり、売店をのぞいて小さいテーブルと椅子のねだんを調べる。

板に足を付けただけの低い小さいテーブルは50ルーで椅子は3本の棒と布でできた小さい椅子なら40ルーだ。

合計90ルー、今でも払えなくはない金額だから悩む。

(高ければ諦められるのに……。でもこれがあれば食事をするのが楽になるな……)

木皿と同じようなコップも10ルーである。

思い切って買うことにした。

今ならもらった初期資金があるし、いずれ買うなら最初から少しだけ快適な生活が出来る方がストレスもたまらないと思ったからだ。

(これで残金2,120ルー)

夕飯を購入しても、今日の支出は450ルーだから本日の稼ぎの範囲でまかなえている。

稼ぎは少ないけど、働ければなんとかなるのが分かってほっとしたのが本音だ。


 昨日と同じスープとパンを注文して、空いている席に着いた。

クリーンできれいにした皿を出して3等分して、パンも3等分にする。

そんな作業していても、周りの人に見られているのが分かる。

ギルドに同じくらいの子どももいるけど、基本はグループで行動している。

1人の子どもが珍しいので、注目を集めているんだろう。

(何日かすれば周りもなれるよね)

どうにもできないので、保管用の食器は収納しておく。

本日の夕食を食べていると、先程までより強く視線を感じた。

顔を上げると隣のテーブルのグループに思いっきり見られていた。

どうしたらいいのかわからずに固まってしまっていると。

「ごめん、ごめん。子ども1人は珍しいから見ちまったよ」

テーブルの1人が固まってしまったのに気が付いて声をかけてくれた。

「いえ、大丈夫です。珍しいのはわかっているので。

こんばんは。昨日登録したばかりのニーナです。よろしくお願いします」

普通の雰囲気の人たちなので、挨拶をしておいた。

冒険者は横のつながりが大事だって基礎知識が教えてくれてる。

「おう、丁寧にありがとう。俺はダンって言うんだ。よろしく」

笑って挨拶を返してくれた。

(よかった。普通の人だ)

転移してから兵士とギルド職員以外に初めて会話をした。

「ニーナはさっき何してたんだ?食事を分けてたみたいだけど」

なるほど、先程の行動がより注目を集めた要因だったみたいだ。

「私には量が多いのと節約のため分けているんです」

簡単に説明すると納得したようで、うなずいている。

「若いのに堅実でいいことだ。新しい冒険者の門出におごらせてくれ」

ダンさんは串焼きの皿を前においてくれた。

「たまには肉をくえ」

笑いながら差し出してくる。

「ありがとうございます」

お礼を言って串焼きに手を伸ばす。

大きい肉が3つ刺さっている。

1つ目にかぶりついたが、私には大きくて噛み切って食べるしかない。

肉!って感じの味が口の中に広がる。

「美味しい」

嬉しくてニコニコしながらもうひとくち食べる。

本当に美味しくて1つ目を食べ終わった。

まだ串には2個も残っている。

「大きいので1個でお腹いっぱいになってしまいました。後で食べたいので取っておいてもいいですか?」

ダンさんを見ながら聞くと笑われてしまった。

「あげたんだから好きにすればいいんだよ。取って置けるならこれもやるよ」って串焼きをもう1個くれた。

「ありがとうございます」

もう満面の笑みでお礼を言ったら、また笑われたよ。

ダンさんたちに改めてお礼を言ってから、食器を返却して宿泊所へ移動した。

その時ダンさんたちがお休みって言ってくれたのが嬉しくて、「お休みなさい」って手を振りながら返事をした。

今日の部屋も昨日と同じでベッドしかない。

明日も早いからベッドと自分にクリーンをかけて布団に入った。

お肉を食べたからか、お休みを言ってもらえたからか暖かい気持ちで眠りにつけた。



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