第34話 嬉しい贈り物
昨日はダンジョンに行く前に泊まった宿をまた借りれたので、同じように4人部屋を借りて夕食後にそのまま寝てしまった。
スライム達が他の人が起き始めてから起こしてくれたので、すぐにクリーンをかけて動き出した。
ダンジョンの中でも部屋を使用することで安心して寝ていたはずだけど、やはりダンジョンの中という緊張感はあったみたいだ。
久々に鎧と靴を脱げたのも大きいかもしれない。
他の皆さんもしっかりと休めたのは同じなのか、それとも休暇だからかリラックスした雰囲気で下の食堂で朝食を食べた。
朝食を食べて一度部屋に戻った時に、鎧を一応身に着けるように言われた。
「ケイアならまあ大丈夫なんだが、ここでは着ていた方が舐められないんだよ」
疑問に思ったことが顔に出ていたのか、鎧を着る理由を教えてくれた。
ケイアの街の穏やかさを思い出したら、帰りたくなってきた。
「なあダン、今日は買い物するけどよ。一日早く切り上げて明日朝からケイアに向かわないか?途中野営1回はさむならそんなに疲れないだろうからよ」
早く帰る事を言い出したカイさんにロウさんも賛同した。
「そうだな、今日一日休めばダンジョンの疲れも取れるだろうし。いっそ体力づくりも兼ねて身体強化無しで走って野営地で野営するとかいいかもな」
ダンさんの判断を待って顔を見ていたら、見ている事に気が付かれてしまった。
「はあ、そうするか。買い物内容は裁縫に必要な一式と明日の街の外で食べる食料な」
「私まだ食料余裕ありますから、ダンさん達の分だけで済みますね」
頭を軽くたたかれた。
「ニーナの分も俺たち持ちで買い込むに決まってんだろ。肉食え」
いつものセリフに思わず笑ってしまった。
宿から出ると、既に朝市が始まっているみたいで大勢の人が通りを歩いていた。
美味しそうなのがあったら報告することになっているので、お店や食べながら歩いている人をチェックしながらついていく。
なかなか美味しそうなものがあるけど、これだと思うものは見つからない。
それでなくてもカイさんとロウさんが結構買って収納しているのを見ているからもういいかなって思い始めている。
そんな気分で迷子にならないようについていくと、布などを扱っているお店に着いた。
「丈夫な布と通気性がいい布、肌触りがいい布はどんなのがある?」
最初に言い出しただけあって、ロウさんがどんどん話を進めていく。
時々どちらの色がいいかを聞かれたが、ほとんどロウさんが決めてくれた。
今着ている丈夫な服は生成色だが、ロウさんが選んだのはもっと黒に近い色に染められた布だった。
汚れが目立たなく、明るい色より森の中に紛れやすいのが選んだ理由だそうだ。
通気性がいい布は色を選ばせてくれて、緑っぽい色の布を選んだ。
この布は丈夫な布の服の下に着ると多少は快適に過ごせるんだって。
肌触りのいい布は、お店の人と選ぶように言われてお店の人と選んだ。
ロウさんが関わらないのが不思議に思っていたら、お店の人がこの布は肌着を作るのに適していると教えてくれたので気を使ってくれたのが分かった。
それぞれの布を縫う時に使う糸も十分に購入してくれて、裁縫道具まで購入してくれた。
購入してすぐに渡してくれたので、汚さないようにすぐに収納した。
「ありがとうございます。本当に嬉しいです」
結構な金額になったと思うんだけど、会計の時には別なところに連れ出されていたのでいくらになったかわからなかった。
いつか恩返しがしたいけど、まだ何もお返しできそうなことがない。
(いつか恩返しをするぞ)
布を選ぶのに思いのほか時間がかかったので、出店で色々買ってお昼を食べることになった。
私は空いていたテーブルに場所取りで座っているように言われたので座っている。
時どき戻ってきてテーブルに食べ物をおいてまた買いに行ってしまう。
持ってくる食べ物に傾向があるのが面白い。
ダンさんはスイーツ系を持ってきて、ロウさんは肉系、カイさんは野菜も使用されているバランスがいい物を持ってきている。
皆さんが満足するまで購入してきたらやっと食べ始めた。
食べきれなかったら収納して明日のお昼と夕飯になるって言っているけど、ここで消費した分は帰りに追加する気みたい。
「好きなの取って食べろ」
自分の空いているお皿を出してから、いただきますを言って狙っていたものを取ろうとしたら肉を乗せられた。
横には野菜がたくさん入ったスープも置かれたのでありがたく頂くことにした。
「最初っからスイーツを狙いに行くな」
肉をおいたロウさんから叱られてしまった。
「そうだぞ、あそこにいる奴みたいになるぞ」
カイさんも言うので目を向けるとダンさんが最初にスイーツ食べてた。
私も食べようと思っていたやつ。
「あ、最初に食べてもいいだろうよ。その後に他のも食べるぞ俺は」
「食事してから、食べれたら甘いのも食べます」
「そうしろ。ちゃんと食べないと身体が成長しないぞ」
当り前のことを窘められてちゃんとバランスよく食べる。
この体は小食なので、最初に分けられたものを食べたら満腹に近くなってしまった。
それを察知したのか、ダンさんが私が食べようと思っていたやつを半分にして皿にのせてくれた。
「それくらいならまだ食べられるだろ?」
嬉しくなってうなずいてからスイーツを食べていたら、残りの半分はダンさんが食べてくれた。
よく見たらスイーツはまだ色々残っているから明日も食べられるかもしれない。
ニマニマしていたのがばれたのか、笑われてしまった。
食べ終わったら、ダンさん達は手分けして収納して手際よく片付けしていた。
片付けた後のテーブルはせめて私がクリーンをかけておいた。
午後は武器を取り扱っているところを中心に見ていく。
魔力の節約にはナイフではなく剣が欲しいところだけど、出せる予算は10,000ルーまで。
(予算内で良さげな物があったら購入しよう)
もう使えないだろうっていう物、飾りが多い物など色々置いてあって見ているだけでも楽しい。
腕輪みたいのがあるので、どんな武器なのかと思ってみていたらカイさんが教えてくれた。
「それ、魔力があるけどクリーンが使えない人間が使う魔道具だよ。石が付いているのは魔石から魔力を使用するから魔力がない人間でも使えるタイプ」
たまに魔力がない人、魔力があるけど魔法が使えない人、魔法使えるけどクリーンなどの基礎魔法が使えない人が居る。
魔力が無くても魔法が使えなくても差別などはないけど、クリーンは使えないと周りにも被害があるのでクリーンだけ使える魔道具は安価に取引されているんだって。
(魔道具、面白そう……)
どんなものがあるかケイアでお休みの日に探してみよう。
でもしばらくは休みを入れずに角ウサギを狩ってお金を貯めないと。
そんな事を考えながら色々な武器を見る。
多少ましな剣が置いてあるお店があった。
予算の10,000では本当になまくらしか買えなそうだし、ダンさん達がお勧めするものもないので武器の購入は諦めた。
そんなに都合よく凄い剣が安く売られているマンガの様な出来事は起きないや。
私は買い物を諦めたので、皆さんの後をついて気楽に見てまわる。
投げる用の短剣がいろんな形をしていたり、丈夫なロープがあったり。
何かあった時には使えそうなものもあるけど、しばらくは無理するつもりがないので徐々に必要なものを揃えていけばいい。
今回は他の人も気に入るものがなかったのか何も購入しなかった。
それでも知らない街をあっちこっち見て回るのは楽しくて、あっという間に夕方になっていた。
宿に戻って夕飯をご馳走になって部屋に戻った。
明日はケイアに戻るためにこの街を出発する。
こっちに来る時と違って、体力作りを兼ねて身体強化無しで走る。
前回は通過するだけだった野営地で1泊する予定だ。
「明日は疲れるから早く寝とけ。声かけるまで寝てていいぞ。お休み」
ダンさんに寝るように促されたので挨拶をしてベッドに入った。
スライム達は宿でも1体がドーム状にして私を守ってくれている。
その為なのか安心して熟睡してしまう。
小さな声でスライム達にお休みなさいを言って目を閉じる。
眠れるか心配していたが、昨日までの疲れが残っていたのか目を閉じたらあっという間に眠っていた。
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