第28話 冒険者らしい服装に
結局、あれば胸当てかベストと丈夫な革で手と足を保護する事になった。
スライム達の特訓も新しい子たちはまだ壊れちゃうけどバリアを張れるようになっていた。
お昼を食べて、ダーモットの街に向かうことになった。
身体強化をして走り出し、1時間から2時間したところで街が見えてきた。
ダーモットの街はケイアの街と同じように石の壁で守られていた。
幸い街に入るための列も短かったので、そんなに並ばずに街に入ることが出来た。
ダンさん達は新しくテイムしているので冒険者ギルドに行って手続きを済ませた。
その間、ダンさん達のそばでギルドを観察していたんだけど、たしかにケイアのギルドはどこか穏やかな雰囲気だったけどここのギルドにはそんな暖かな雰囲気はない。
(最初に着いたのがケイアの街で良かった)
スライム達の手続きが終われば、宿を取って防具を探しに行く。
ダンさん達がこの街に来るときに利用する宿に4人部屋を一部屋借りる。
一度部屋に行ったが、ベッドが4つ並んでいるだけの部屋だけど、ドアに鍵が2個ついているのが印象的だった。
今日の寝床の確保が出来たので、中古の防具のお店に行って私に合うものを探しに行く。
予算は10,000までなら何とか出せる事を伝えておいた。
着いたお店は外から見ると色々な物が置いてあった。
全身の金属鎧や槍、剣、網?色々な物が置いてある。
なんでもここは色々な物があるけど、入れ替わりが激しくて店員さんにもどこに何があるか把握しきれていない見つけたらラッキーのお店らしい。
一応防具はこの辺みたいな区分はあるみたいなので、そこに行ってみる。
防具がある辺りを皆で探すが、私が身に着けられるサイズの胸当てもベストもなかった。
諦めようかとしたときに、ロウさんが古着の所も見ることを進めてくれたので服が多く置かれている場所に行ってみる。
基本的に子供服はあまりないみたいで、大人服の小さいやつを探していた。
探していたベストはなかったけど、ナイフを付ける細工がされているベルトがあって値段も中古なので500ルーと安かった。
腰に当ててみたら長さもちょうど良かったのとお勧めされたので購入する。
色々な革が置いてある場所に行って、今度は手ごろな革を探す。
大きな革は高いけれど、もう何かを切り出した端切れみたいな革は安くなっていた。
黒に近い色の30cm四方のリザードの革があった。
ダンさん達の装備も同じ種類の革だと教えてもらったので、その革を4枚と1m以上ある柔らかくて細長い端切れを5本購入することにした。
30cm四方のリザードの革は4枚2,000ルー、細長い革は5本で300ルーで購入できた。
この革を細工するのに針と革細工用の丈夫な糸があったので購入した。
後は刃物がある辺りに行って、今まで持っていたナイフより大きいものを1本購入することにした。
鞘が付いていてさっきのベルトにつけられるのがポイントだ。
さすがにナイフになると高くて、3,000ルーした。
ダンさん達も自分たち用のナイフを選んで購入していた。
このお店だけで7,300ルー使った。
(この世界でこんなに買い物したの初めてだよ)
「この後はどうしますか?私は出来れば今買った革をちょっと手を加えたいです」
「じゃあ、二手に分かれよう。俺とカイは買い物。ロウとニーナは先に宿に戻っていてくれ」
1人でも戻れるとは言ったんだけど、不用意に1人にならない方がいいと説得されてロウさんと宿に戻った。
「ロウさんごめんなさい。付き合わせちゃって」
「いや、俺は宿でのんびりできて助かったよ。シェリとルークと会話の特訓したいしな。あいつらに自慢してやるんだ」
私が気にしないように気を使ってもらった気もするけど、自慢するには笑ってしまった。
ロウさんはドア近くの何もない場所に椅子を出してシェリとルークを抱えて念話をしようと特訓しだした。
私のベッドはドアから一番遠くの位置に決められていたので、ベッドの前の床で作業することにした。
作業前に床と買ってきた物にもクリーンをかけて綺麗にする。
まずは2枚の30cm四方の革を取り出す。
身体に当てると、2枚だとほぼ胴体を覆うみたい。
まず肩ひもを通すための穴をあける。
指に鋭い氷の千枚通しみたいなものを作って、一度体に合わせて決めた位置に穴をあける。
左右に2か所ずつ穴をあけることで、紐を結ぶことが出来るので多少身体が大きくなっても調整が出来るようになる。
革を合わせて脇に当たる部分に穴をあけていく。
細長い革を靴ひもを通すみたいに脇の穴を通せば、調整が出来るようになるし途中の紐が切れてもすぐには防具が崩壊しないという利点もある。
身体を通し、肩ひもの結びを内側に入れるように結び、脇の紐を締めれば体にフィットするようになった。
(針と糸使わずになんとかなったな)
完成したものを服の上から着けてロウさんに見せに行ってみた。
「こんな感じにしてみたんですけど、少しは防御力上がりますか?」
「お、いいんじゃないか。肩にはスライム達も乗るしな。胸のポケットにスライム入るか?」
いっそのこと、首に巻き付いてもらおうか……。
"ねえ、細くなって私の首に巻き付くことって出来る?"
"出来るよー"
リトが元気に言って飛びついてきた。
首につるりと巻き付いて、苦しくもない。
"ルルとマリンも肩に乗ってくれる?"
ルルとマリンもいつもの肩の位置に乗ってくれた。
「これで外歩いて大丈夫ですかね?」
「いいと思うよ。腕と足はひもで押さえればいいよ。紐の分強度が増すし」
「わかりました。やってみます」
作業していたベッド前に戻って、残りの30cm四方の革を出してナイフで半分に切る。
身に着けるのが簡単な足に革を巻いてそれを細長い革を使って巻き付けて最後にしっかり縛る。
もう片足もまいて、問題の手をどうやって巻くかを考える。
とりあえず革を巻いて、紐をスライムに協力してもらって巻き付ける。
結ぶ段階になって色々無理があったので、端と端を何度かねじって反対側の隙間に巻き付けて止めた。
手首を動かしたり、振ったりしてもほどけないのでとりあえずこれで行くことにした。
逆の手も何とか同じように止めて、完成したものをロウさんに確認してもらう。
「1人で着けられる様に工夫したんだな。明日はこれでダンジョン行って不具合あったらその時変えればいいぞ」
とりあえず形にはなったみたいだ。
自分に割り当てられたベッドに移動するときに、すべてのベッドにクリーンをかけていく。
(だって清潔かわからないし)
ベッドの上に靴を脱いで上がって靴と自分にクリーンをかける。
なんちゃって防具を着けたままだけど、この状態に慣れなければいけないので身に着けたまま過ごす。
スライム達と三体とも首に巻き付けるか、どこまで小さくなれるかとかして遊んでいたらダンさんとカイさんが戻ってきた。
戻ってきた2人にも出来た装備を見てもらったが、問題ないと言われたので明日はこの装備で頑張ってみる。
消耗品を買ってきたみたいで、一緒に居てくれたロウさんにも分けていた。
「シェリと少し話せたし、ルークとも単語だけど聞こえたぜ」
本当にドヤ顔でロウさんが報告してた。
「「俺だって出来たわ!」」
どうやらダンさんとカイさんも、買い物の合間や移動中に会話しようとしていたらしくドヤ顔返しをしていた。
どうしていいかわからないから、曖昧に微笑んでおこう。
夕飯を食べに宿の1階の食堂に降りて食事をした。
明日からはダンジョンに3日間籠る予定なので、部屋に戻る際に朝食も予約していた。
「宿代と食事代いくらですか?」
まとめて払われていたので、宿代も食事代も出していないのでいくらかを部屋に戻ってから聞いた。
「あのな、これはニーナが寝た後に相談した結果なんだが……お願いだから今回の宿代とその時の食事代を出させてくれ」
意味が分からなくて、何も反応を返せない。
「スライムについて教えてもらっただろ、あれはダンジョンを案内するだけにしては多すぎる報酬だと判断してな。まして俺たちのスライムも一緒に特訓するしな。だからせめて宿代と食事代を出させてくれ」
どうやらスライム情報をかなり価値あるものと判断してくれたみたい。
「わかりました。革とか買ったので本当は助かります」
素直にお礼を言って好意を受け入れる。
「よかった。予定通り明日はダンジョンの1階でスライム達の特訓をする。2日目は角ウサギを相手にスライムの一部とニーナが特訓。その際交代で1階でスライム達の特訓を続けさせてもらう。3日目はゴブリンを相手にニーナの特訓だ。ゴブリンは全員で見守るから安心して特訓してくれ。通常中で取得したものは売却してニーナと俺たちで半々でわけよう」
「いや、半分はだめですよ。せめて4人で分けましょう。通常ダンジョンの報酬は等分でしょ?」
「だーわかったよ」
やった、報酬は頭割りにすることが出来た。
「ありがとうございます。明日はどれくらいに起きますか?」
「どれくらいに起きっかな」
ダンさんはまだ決めていなかったみたいだ。
「いつも通りに夜明け前に起きて、朝食食べて夜明けとともにダンジョンに向かうでいいんじゃね」
「俺もそれでいいぞ」
カイさんが提案して、ロウさんが同意したことで決まったようだ。
「じゃあそうするか」
ダンさんも別に問題ないみたいで、通常通りの動きに決まった。
「夜明け前ですね。わかりました。じゃあ、私はそろそろ寝ますね」
実はもう眠かった私は、何度かあくびをかみ殺していた。
みんなに笑いながらお休みを言ってもらってベッドに向かった。
「スライムに包まれて寝ろよ」
ダンさんは結構心配性だと思う。
「はーい」
返事をしてもう一度おやすみなさいを言った。
ベッドに上る際に自分と脱いだ靴にもクリーンをかけておく。
さすがに防具を着けて寝るのは寝不足になってしまいそうなので、外してクリーンをかけて収納しておく。
"テントになってくれる"
布団があるからか、布団を覆うようにマリンが変化してくれた。
リトは枕元に一緒に居てくれるみたい。
"ルルはどこにいるの?"
"マリンの上で見張り。安心してね"
"わかった。ルルもマリンもありがとう。リトそばにいてくれてありがとう。お休みなさい"
初めてのダンジョンを楽しみに、スライム達に守られながら眠りについた。