第25話 いよいよ出発
今日は強めの振動でくっついて起こされた。
「おはよう。今日も起こしてくれてありがとう」
今日は出発の日だ。幸い雨は降っていない。
なんか落ち着かないからもう朝食を食べて南の門に行って待つことにする。
朝食を食べて、部屋をクリーンで綺麗にする。
宿泊所入り口にいる職員さんに今日は鍵を返す。
数日はこの街に戻ってこないと思うと不安になるのは、いつの間にかギルドが安心できる場所になっていたんだな。
(でも、戻ってくるし)
今はダンジョンを楽しみに出発しよう。
南門を目指して歩く。
朝市の準備の人達なのか、思ったよりも人がたくさんいる。
人にぶつからないように気を付けて進んでいく。
南門に着いたけど、さすがにダンさん達はまだいない。
色々な人が街を出るために待ち合わせをしているのか人がたくさんいる。
邪魔にならないで安全で待てる場所を探して、門を守る兵士さんの詰所の前に居ることにした。
出ていく人には入る時ほど厳密なチェックがないみたいで兵士さんも朝は少しのんびりした雰囲気があるので、ダンさん達を待っていても邪魔にならなそうだしやっぱり安心感が違う。
兵士さんと目が合ったので、挨拶をしておく。
「おはようございます。ここで人を待ってもいいですか?」
「おはよう。詰所の入り口でなければ構わないよ」
許可をもらったので、詰所の所でどんどん活気づいていく門の前の人達を見る。
この時間の門付近をのんびり見ていたことがないからちょっと面白い。
待ち合わせの冒険者の人、商人で出発前の人、私と同じくらいの子どもたちのグループ。
少し空が明るくなってきたころにダンさん達が来た。
「おはよう。待たせたか?」
「おはようございます。なんかそわそわして早く来ていたんです」
3人に笑われながら、街を出る列に並ぶ。
「街を出て人がばらけたら走り出すからな」
「はい、お願いします」
よく考えたら、誰かと一緒に街を出入りするのが初めてだ。
なんかドキドキしながら街を出る。
街の付近は人がまだ多いので、少ししてから走り出す。
私のスライム達とダンさん、カイさん、ロウさんとその従魔は普通に通れるようにしてあるバリアと持続力強化とサーチはおこないながら走っている。
「ニーナ、このペースで大丈夫か?」
ロウさんが心配してくれたみたいで聞いてくれた。
「はい。大丈夫です」
「疲れたら無理せず言えよ。休憩するのも大事だからな」
カイさんも声をかけてくれる。
「はい」
元気に返事をして走り続ける。
いつも草原に入っていった場所もあっという間に過ぎていく。
「今日の予定を説明しておくな。最初の休憩所まではこのままのペースで走っていく。その後はニーナが身体強化できるって聞いているから身体強化をして走れるところまで走る。途中の町には入らずに野営地か休憩所で野営の予定だ。何か不都合とかあったら教えてくれ」
「お昼は時間になったら走るのを止めて食べますか?走りながら食べますか?」
「そこまで急いでないからそれっぽい時間になったら止まって食べよう」
「わかりました」
そこからは一応道を走っているとはいえ街の外なので、無言で走った。
体感で2時間か3時間くらい走っただろうか、整備された広場が見えてきた。
「休憩所だ。予定通りに休憩しよう」
ダンさんの指示で広場に入って空いてる場所を探して各自椅子を出して座る。
走りながらも口の中に水の球を出して飲んでいたが、コップを出して落ち着いて水を飲んだ。
「ニーナ、途中水を飲むために止まらなかったけど、無理してないか?」
聞かれたので、口の中に水の球を出して飲んでた事を伝えたら頭を撫でられた。
「なんだ知ってたのか。冒険者の移動時の水分補給の鉄則だよ」
「教えることが1個減ったな。この後は身体強化で行けることろまで行くけど、どれくらいの時間持続できるか知ってるか?」
クッキーを渡しながらダンさんが聞いてきた。
「限界までやったことがないのでわからないです」
強がったら迷惑をかけるだけなので、素直に言う。
「まあ、そうだよな。じゃあ休憩後、広場を出たところで道から平原に入ってから身体強化をかけて走るから。先頭は俺、ニーナに並走でロウ、最後尾にカイの順番な。限界が近いと感じたらニーナが声をかけてくれ。スピードは俺たちがニーナに合わせるから気にしなくていいぞ」
「はい」
水を飲んだし、貰ったクッキーを食べ終わった。
きっともうすぐ出発なので恥ずかしいけど安全のために声をかけておくべきなんだけど、恥ずかしくて小声になってしまった。
「すみません。用足しに行きたいと思うのですけど何か休憩所でルールありますか?」
気を使ってくれたのか、当り前のことなのか平然とダンさんが答えてくれた。
「広場から少し草原に入ってするのと、クリーンを自分だけじゃなくそれにもかけて綺麗にするぐらいだ。ただ、恥ずかしいからと草原の奥に入りすぎると当然危険が増すからそこは注意しろよ」
うなずいて草原の中に入った。
すこし離れてから、いつも狩猟の時にしているようにスライムのうちの1体に大きくなってもらい、しゃがんだ私を覆うようにドームになってもらう。
他の2体は周りを警戒してもらう。
その中で私が外が見えないバリアを張って土魔法ですこし穴を掘って用を足してクリーンを全体にかけて穴を戻して終了です。
いつもは人が近くに居ない状況だったから、この状況が恥ずかしく感じてしまう。
この世界では旅をする上では当たり前なんだけど。
恥ずかしさを隠して皆さんのところに戻る。
「ただいま戻りました」
「おう、お帰り」
どうやらロウさんも用足しに行っているみたい。
「じゃあ、俺も行ってくるな」
私が戻ってきたから、ダンさんが交代で行くみたい。
全員が交代で用足しした後、片づけをして出発する。
先に話した通りに先頭にダンさんでその後を私とロウさん、最後をカイさんの隊列を組んで身体強化をして走り出す。
他の人は私のスピードを様子を見ながら調節する余裕がある。
なんか悔しさを感じるけど、私が今することはバリアとサーチを維持したまま身体強化をして走ることなのでそれに集中する。
今までも身体強化は出来るだけやれるときにやってきたけど、こんなに運動しながらやり続けるのは初めてなので慎重に疲労感を探り続けている。
身体強化をして走り続けてどれくらい経ったか、町が近づいてきた。
石の街壁もなく、木の壁はあるけどもやっぱり頼りなさそうに見える。
「町が近いから、一度スピード落とすぞ」
徐々にスピードを落として身体強化前の速度位になったので、一度身体強化を切った。
走りながらだと効果はないかもしれないけど、瞑想を意識して呼吸の際に魔力を取り込む意識をする。
休憩しながらするよりも効果は無いかもしれないけど、瞑想のレベルが上がるかもしれないので一応意識して走り続ける。
町から離れたことにダンさんがまた声をかけて身体強化で走り始める。
気を付けているけど、先程よりは疲労してきたがまだ大丈夫なので身体強化を続けて走る。
時々、並列して走っているロウさんが様子を見てくれているのが分かる。
ロウさんが見て無理そうならストップをかけるのが役割なのかもしれない。
しばらく走ってそろそろ声を挙げようかと考えた時に休憩所よりも広い広場が見えてきた。
「もう少しで野営地だ。もうちょっとだ頑張れ」
ロウさんが声をかけてきた。
疲れてきたのが分かっているが休憩が近いから走りきらせることにしたみたい。
野営地に近づくにつれてスピードを落としていった。
野営地の空いている場所に行き、椅子を出して座って呼吸を整えることに集中した。
「よく走り切ったな。ここでお昼を食べて少し休憩するぞ」
ダンさんが自分も椅子を出したりしながら褒めてくれた。
カイさんも頭を撫でてくれて、自分の休憩の用意を始めた。
呼吸が落ち着いてきたので、顔を上げることが出来た。
いつの間にかルルが肩から降りて、触手でつんつんしてきていた。
"マスター、私椅子になるよ"
大きくなってくれて、座りやすいような形になってくれた。
今座っている椅子より確実に快適に休めそうなので、お礼を言って座らせてもらった。
背もたれも作ってくれているので本当に楽に休憩できる。
"ルルありがとう。本当に楽だよ"
私が座っているからか、揺れたりせずに嬉しそうな感情だけを伝えてくれる。
ロウさんがルルに座っている私をみて笑った。
「食べられるようになったら、昼を食べろよ」
ロウさんに返事をした後、瞑想を行って魔力を回復する。
結局私だけ疲れはててしまったのは、走っている間に魔力を消費して持続力強化がおろそかになったからだろう。
走るのを止めて身体強化を止めたことで、持続力強化に魔力を回せるようになったので体力も回復し始めたからちょっと座っているだけで呼吸も落ち着いてきた。
「ニーナ、ヒントだ。単純作業している時に作業しながら違うことを考えることがあるだろう」
ダンさんがニヤって笑いながらいきなりヒントをくれた。
どうやら考えていることはバレバレだったみたいだ。
「ありがとうございます。考えてみますね」
なんか悔しいからニコって笑って答えた。
回復したので、椅子に戻ろうかと思ったけどルルにこのままって言われたので甘えさせてもらう。
机を出してお昼をしっかり食べながら瞑想を起動しつつ考える。
ふと答えを実行していることに気が付いた。
(お昼を食べながらも瞑想を起動して魔力回復を早めているじゃない、それにさっき街に近づいた時身体強化を切った時には瞑想を意識して呼吸していたのに身体強化し始めた時に瞑想を意識するの止めてた)
ダンさんのヒントは既に答えを実行していることを気付かせるためのヒントだったんだ。
お昼食べながら瞑想を起動していたように、走りながら起動すればいいんだ。
(よし、この後の走りで実践してみよう)
ふと前を向いたら、気が付いたロウさんが干した果物を差し出してくれた。
お礼をいって食べると、自然な甘さが凝縮していてとても美味しい。
「これ美味しいですね。こんど見つけたら買って収納することにします」
「お、気に入ったかい。気軽にかじれるから持ってると便利だよ。これとりあえず収納しとけ」
まだ入っている袋ごと渡そうとするから遠慮すると、まだ持っているからって渡されてしまった。
「ありがとうございます」
ありがたく収納しておく。
皆食べ終わっているからそろそろ休憩も終了に近いだろうから、一言いってから用足しに草原に入る。
恥ずかしさはあるけど、公衆トイレなんてものはないから仕方がない。
さっきの休憩と同じように交代で用足しをして、その場を片付けて同じ隊列で出発する。
次こそ疲れはてずに走り切れるように頑張る。
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