第24話 スライム達の特訓の成果
今日はポヨポヨと振動しながらくっついて起こされました。
「おはよう。いつも起こしてくれてありがとう」
明日は南の街に移動なので、今日は出来る限り角ウサギを狩猟してお金を稼いでおかなくちゃ。
背伸びをして、広場に急いで移動する。
既に数人いる人の邪魔にならない場所で丸を書いて昨日と同じ攻撃をよける特訓をする。
"いくよー"
どうやら今日もルル教官の出番らしい。
今日も最初はゆっくりのタイミングで、それが出来たら早いタイミングになるみたい。
それどころか体当たり自体のスピードも緩急つけられている気がする。
(特訓に協力してくれるのは嬉しいんだけど……)
3回目だからか大分よけるのにも慣れてきたのもあるんだろうけど、ふとしたタイミングでスムーズな動きでよけられるようになってきた。
「ちょっと休憩」
声をかけて体当たりを止める。
自分を鑑定すると、無事に体捌きが生えていた。
"みんなありがとう。無事に体捌きのスキルが生えたよ"
わーいってみんなで喜んで、朝の特訓は終わりにする。
部屋に戻って朝食を食べる。
食べている間、スライム達はベッドの上で何かやっているようだ。
(秘密にされている特訓でもしているのかな?)
食事を終えて、延泊の手続きを忘れずにして街の外に移動をする。
南門を出る時に丁度夜明けぐらいだった。
明日はこの時間に待ち合わせして遠出をするのかと思うとドキドキしてくる。
(明日からのためにも、今日は出来るだけ角ウサギを狩猟しなきゃ)
普段の辺りまで道を持続力強化で走って移動してしまう。
"今日は血抜きは最後にまとめてやってもらうね"
"""はーい"""
草原の中に入って、角ウサギをサーチする。
最近狩猟しているからかここら辺にはいないみたいなので、少しサーチをしながら移動して探す。
いつもより離れた場所でようやく3体の角ウサギのグループを見つけた。
少し距離を開けてきちんと目視して水球を発動する。
動きが止まって鑑定でも確認して、とりあえず収納して次を探す。
角ウサギじゃなく野良スライムを見つけたのでスライム達に討伐をさせることにする。
少し離れたところでスライム達を降ろし、ここで待つことを伝えて送り出す。
待っている間に、呼吸からの魔力回復を試みる。
呼吸をするときに大気中の魔力も体に入り、自分の魔力として吸収する。
そうイメージして呼吸を繰り返す。
薄く広がっている大気から魔力を集めるイメージで呼吸とともに魔力を吸収するイメージで……。
集中しながらもサーチには気を配っているので、スライム達が戻ってくるのが分かった。
使用した魔力は回復したけど、自然回復なのか呼吸の効果なのかまだ分からない。
一応鑑定しても、まだ新しいスキルは生えていなかった。
スライム達が戻ってきた。
"みんな怪我はない?大丈夫?"
"""大丈夫"""
"良かった。じゃあ、次の角ウサギ探そうか"
サーチをかけるとより森の方に角ウサギの反応があるのが分かる。
森に近いのが気になるが、サーチには特に危険な反応は無いのでいつも以上にサーチを気にかけながら進むことにした。
草原だったのが森に近づくにつれてぽつぽつと木が増えていく。
以前木を切り倒したのはもう少し森から離れた位置だった。
(こんなに森に近づくのはこの世界に来た時以来かもしれない)
そろそろ視認できてもおかしくない位置について、慎重に周りを伺う。
(見つけた)
草で見づらくなっているが、ここも3体グループだったようだ。
3体に狙いをつけて水球を発動させる。
動かなくなるまでじっと待って、鑑定で確認して急いで角ウサギを収納する。
ふと横の木を見て思ってしまった。
野営に薪が必要なんではないかと。
サーチで確認しても、近くに危険反応は無いので切り倒して収納だけしておくことにした。
切り株も乾かせば薪になるだろうから、ナイフに鋭い氷刃をまとわせて、木の周りの地面をザクザクと円形に切って土魔法で根に絡んでいた土を落とす。
森と反対方向に幹を押すと、斜めになったので、露出した木の真下の根を氷刃で切ってしまう。
倒れた木を収納して出来た穴を土魔法でなくした時、サーチで今まで出会っていないタイプの危険反応を感じた。
まだ距離があるので自分にバリア、ステルスがかかっていることを確認して身を潜めて草むらに隠れる。
危険反応の方向に遠見を使用すると何かが1体動いているのが見える。
遠見で見えているものに鑑定がかけられるかわからないけど、鑑定をしてみる。
ゴブリン
右耳が討伐証明
食用不可
繁殖力強い
ゴブリンは二足歩行をしているが、思ったよりも人っぽくなかった。
今はまだ距離があるし、ゴブリンもこちらには気が付いていない。
(あそこはもう森の中だ。まだ森の中は準備出来てないから引き返そう)
サーチで全方向に気を付けながら、後ろ向きに徐々に下がっていく。
幸いあのゴブリンも森を出るつもりはないみたいで反対方向に向かっていった。
完全に見えなくなって、しばらくしてから森から離れる方向に向かって移動した。
普段狩りをする草原まで戻って、サーチで安全を確認してようやく緊張を解いた。
「はあ、お昼にしよう」
机と椅子を出して、スライム達を降ろしてあげる。
「お昼食べている間、好きにしていいからね。食べ終わったらさっき狩猟した6体の血抜きをお願いするね」
"""はーい"""
お昼を食べて、水を飲んで一息つく。
サーチを気にしながらも、今も呼吸の際に魔力を取り込むのを意識し続ける。
目指すは常時魔力回復量がアップするようなスキルだから。
「ご馳走様でした。みんなは大丈夫?ここに角ウサギ出すからお願いね」
角ウサギを6体出して口の中を傷つけて血抜きをお願いする。
その間に切り倒した木の枝を落として、幹はそのまま収納しておく。
丸太はまだ収納したままなので、長さが必要な時に必要な長さに切れるようにこの木は枝だけ落として収納しておく。
落とした枝はドライで乾燥させて薪として確保しておく。
そこまでやったら、血抜きが終わったと教えてもらったので角ウサギにクリーンをかけて収納しておく。
明日は早くから移動なので、今日はあまり遅くならないうちに街に戻りたい。
でも、出来ればもう一度狩猟しておきたい気持ちもある。
サーチで道の方向に角ウサギが居ないかを探ると、2体グループの角ウサギを見つけた。
(この角ウサギを狩猟したら街に戻って残り時間は荷物の確認をしよう)
そうと決めれば、行動は素早く角ウサギに向かって移動する。
角ウサギの顔が見える角度にちょっと回り込んで、水球を発動する。
鑑定で確認して、この2体はこの場で血抜きしてクリーンで綺麗にして収納する。
その後は欲を出さないようにして街に向かって帰路につく。
ギルドに無事に戻ってきて、買い取りカウンターで角ウサギ8体の買取をお願いする。
奥の机に8体出した後はカウンター前で査定が出るのを待つ。
今回は2体が小さかったみたいで、4,700ルーで買い取りしてもらえた。
"まだ夕飯には早いから広場に行く?私は荷物の確認をしてからランニングするけど"
"""行く!"""
広場はいつもより少ないけど運動している人が居た。
いつものように邪魔にならない端に行って、スライム達を降ろす。
"明日からの荷物確認してからランニングするからね"
"私たちは特訓してる"
スライム達は3体でくっついて、何やらやっている。
(まあ、いつか教えてくれるだろう)
荷物の確認と言っても、アイテムボックスに雨除け用マント、毛布、食料を確認したらおしまいだ。
遠出して必要だと思ったら南の街で購入することもできるってダンさん達が言っていたし。
南の街の宿代はいくらくらいか聞いておけばよかった。
とりあえず、悩む時間がもったいないからランニングを始める。
結構走ったので、スライム達の近くで座って休憩する。
呼吸を意識して休憩しているのだが、吸収がスムーズになったのが分かったので期待を込めて鑑定したら瞑想が新しく生えていた。
(新しいスキルゲットは嬉しいけど、思ってたのとは違ったな)
瞑想スキルは瞑想っていうか呼吸を整えて大気中の魔力を吸収して自分の魔力を回復するって感じみたいだ。
まあ、これで魔力を回復する手段が自然回復以外にもあるのは心強い。
バリアと瞑想を併用する練習をしていると、うれしそうなスライム達がこちらに向かって跳ねてきた。
""できたー""
"マスター、出来た。鑑定して"
どうやらなにか成功したみたい。
皆を鑑定すると、今まで無かったスキルが表示されていた。
"すごい、凄いよ。アイテムボックス(中、時間停止)じゃない"
皆嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねている。
"夕飯食べて、部屋に戻ってからやって見せてね"
"""はーい"""
どやって雰囲気で返事をもらった。
もう急いで食堂に行って夕飯を食べて宿泊所に移動した。
急いでクリーンをかけて、みんなでベッドの上に乗る。
「ここなら大丈夫だから、みんなの収納や取り出しを見せてもらえるかな?」
"""はーい"""
皆は大事にしてくれている従魔のコインを外に出して、改めて体に触れたらコインがどこにもなくなった。
「おー、収納成功だね。今度は取り出してくれる?」
スライム達は素早くコインを出して、身体の中に取り込んでいった。
お気に入りみたいで、コインをこちらに見せながらドヤって雰囲気を伝えてくる。
一気に3体を抱きしめた。
「凄いよ。本当にすごい。もう、大好き!」
3体を順番にモニュモニュしまくる。
楽しくなって皆でくっつきながら笑っていた。
「明日はいよいよ南の街への移動だよ。今日は早く寝なくちゃね。今日と同じくらいに起こしてね」
触手で丸印を作ってくれる。
お休みなさいを言うとお休みなさいを返してくれる。
頑張り屋さんのうちのかわいいスライム達。
大好き。
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