第20話 泳ぐ?スライム
石タライのところに戻ったら、想像していなかったスライム達を見た。
さっきまでは水に浮かんだり沈んだり、水をかけっこしているだけだったのに、水を吐き出して進んでいるスライム達が居た。
水を吐き出す勢いを変えることでスピードを上手に変えているみたいで、まるでモーターボートみたいに動いている。
スライム達を鑑定すると、全員に放水ってスキルが生えていた。
さらにマリンには水魔法が生えている。
「すごいよみんな。放水ってスキルが生えているよ!マリンには水魔法も生えてる!」
声を上げると、スライム達がタライから飛び出してきてくっついてきた。
みんなを撫でてポヨポヨしてねぎらった。
「やっぱりスライムだってスキルを覚えるんだよ。みんな頑張ったね」
みんなのポヨポヨが激しくなった。
もしかしたら、スライムの色は魔法の適性の色と同じなのかもしれない。
「えーと水魔法は私が角ウサギを狩猟するのに水の球を出すでしょ。あれは水魔法だよ。あと、私が他に使う魔法はね……。手がちょっと荒れているのが分かる?これを治すのが光魔法で≪ヒール≫。あまり使わないけど、血の匂いを風で飛ばしたり暑いときには風を当てることもできる≪ウィンド≫。とかがあるよ」
先程の色の予想から適性があるだろう魔法属性の魔法を実演する。
「魔法が使えるなら基礎魔法も使えるよ。バリアはみんな出来るよね。あれも基礎魔法なんだ。あと便利な基礎魔法はクリーン、飲み水が出せるウォーターがあるよ。よかったら次の特訓の時に練習してね」
もうそろそろ帰る時間になるので、大きな石タライも水ごとクリーンをかけて収納しておく。
道に出てからは体力づくりを兼ねてランニングして帰る。
珍しく走っている最中にマリンが話しかけてきた。
"明日も特訓 したい"
それを聞いて、ルルとリトも"したい"って訴えてきた。
スライム達が強化されるのは私にとっても有益なことだし、1カ月なんてあっという間に過ぎてしまう。
"わかった。明日も今日と同じで角ウサギとスライム討伐してから特訓ね"
落ちないようにしながら器用にポヨポヨしながら喜んでいる。
そんなに喜んでもらえると嬉しいし、自分も負けずに頑張ろうってやる気も出てくる。
順調に走って戻り、ギルドで角ウサギの買取をお願いする。
今回は1体が少し小さめだったので減額されて1,150ルーで買い取りになった。
(明日は大きさもちゃんと確認しよう)
減額にちょっとへこみながらも、今日はくたくたなのでさっさと食堂でいつもの食事をする。
「肉食え」
目の前に肉の串焼きが3本乗っている皿が置かれる。
「ダンさん、いつも貰っているのに申し訳ないですよ」
「いいんだよ。この前教えてもらった血抜きの方法を試したら買い取り額が上がったんだ。お礼だお礼」
「血抜き出来たんですね。良かった。そういう事ならいただきますね」
冷たくなる前に2本は収納しちゃう。
一本の串を取ってお肉を食べる。焼きたては本当に美味しい。
「ニーナは本当に美味そうに食べるな」
いつの間にかロウさんとカイさんもテーブルに座ってご飯食べていた。
「だって本当に美味しいんですもん」
わらってダンさんは頭を撫でてきた。
「ところでニーナ。スライム達がこちらに見せつけている中に入っている丸いのはなんだ?」
食べている間にスライム達がそれぞれ従魔の証の木製コインを見せつけていたみたい。
「それ従魔の証になるかなってあげたんです。リボンや首輪はスライムって出来ないじゃないですか」
「いいアイデアだな。これなら従魔だってわかりやすい。で、俺たちは自慢されたのか」
笑いながら目の前にいるスライムをモミモミした。
スライム達からドヤって感情が伝わってくるので、本当に自慢したかったみたい。
「どうやら自慢しているみたいですよ」
余計に笑い声が大きくなった。
お腹がいっぱいになったので、2個残っている串焼きを収納しちゃう。
「ニーナが良かったら、スライムをどうやってテイムしたか教えてもらってもいいか?情報の報酬はこれだ」
机の上にこの前食べて美味しかったクレープを含む色々なお菓子が10個置かれる。
「報酬無くてもダンさん達には色々お世話になっているから教えますよ」
「それはだめだよ。ちゃんと情報の対価は貰わないと」
ロウさんにたしなめられてしまった。
「あ、周りに聞こえないように小声な」
カイさんにも注意されたので、小声で3体のスライムをテイムした時の状況を伝える。
「なるほどな。まずは対価を収納しちゃいな。ニーナはスライムと相性がいいんだな」
ダンさんが納得と言わんばかりにうなずいている。
「たぶんそうだと思います。あまり参考にならないですよね」
「そんなことはないから、さっさと収納しろ」
カイさんに収納を促されてしまったので収納する。
「明日は依頼の予定がないからスライムに行ってみるか」
ダンさん達はスライムのテイムを試してみるらしい。
「スライムかわいいですからね。テイムできるといいですね」
スライムのかわいらしさを自慢しようかと思ったけど、ダンさん達がスライムをテイムしてからスライム談義をしようと思って我慢をする。
楽しく会話をしてたんだけど、やっぱり今日は特訓で疲れていたのか眠さに負けそうになってきた。
ダンさん達にお肉とおやつのお礼を言って先に失礼する。
ベッドに入ったらすぐに寝てしまいそうなので、明日も今日と同じように起こしてほしいとスライム達に伝えながら歩く。
宿泊所に入って、クリーンをかけてベッドに入ると案の定すぐに眠気が強くなってきた。
「おやすみ」
かろうじで言えた言葉にスライム達がお休みなさいを返してくれたのを感じながら、あっという間に意識は眠りに落ちていった。
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