第13話 雨の日
ポヨポヨ頭に感じて目を覚ます。
今日もちゃんと起こしてくれたルルとマリンを抱え込んで抱きしめる。
「おはよう」
""おはようマスター""
もしかして今日は雨が降っているのか、音が聞こえる。
木戸をそっと開けると、しとしととした雨が降っていた。
バリアを雨除けを意識すれば濡れずに済むだろうけど、雨の街の外にどんな危険があるかわからない。
(足元も悪いだろうし、今日は街中の依頼を探してみていいのがあったら受けてみよう)
今日の方針を決めて、広場に行く。
雨が降っているときのバリアとそれを張っているときの運動を試しておきたいので今日も運動しに行く。
汚れはクリーンで綺麗になるので出来る事ではあるんだけど。
広場には人が居なかった。
(やっぱり雨の日は活動しないのが普通なのかな)
雨を入れないのを意識してバリアを張って外に出る。
無事雨に濡れずに歩けるし、靴も濡れずに済んでいる。
ただ、滑るようになっている個所はやっぱり滑るのでそれは注意が必要みたいだ。
雨の中をバリアや魔力の流れを早くしてランニングをする。
誰もいないので、ルルとマリンも広場を楽しそうに動き回っている。
どうやらスライムは水が好きみたいだ。
(今度水浴びさせてあげよう)
今日は街の外には出ないので、いつもより長くランニングをする。
広場から建物内に入る時に濡れていないけど念のためクリーンをかけて入る。
朝食前に人がいつもより少ないので、依頼掲示板を見に行ってみる。
街中で完結する依頼を見てみると、給仕などの仕事や建物解体や建築現場の力仕事が多いみたいだ。
動物の捜索依頼や失くし物の探索依頼、下水管の掃除依頼もある。
やっぱり冒険者ギルドって何でも屋だよね。
給仕は身体の大きさ的に難しそうだし、工事の解体や建築現場は雨だから今日は避けた方がよさそう。
そうなると何がいいのかわからない。
カウンターをみると人が少ないからか、待機している職員さんがいる。
(ちょっと相談してみよう)
カウンターに行き職員さんに声をかける。
「すみません。相談したいのですが大丈夫でしょうか?」
「はい。何でしょうか?」
「雨なので街の中で完結する依頼を探しているのですが、私は小さいのでどのような仕事があるのか相談させてもらえたらと……」
素直に今困っていることを話す。
「そうですね。ニーナさんの身長では給仕や工事系はできなくはないですが、依頼主が難色を示す可能性が高いですね。うーん、ちょっとお待ちいただけますか?」
待つことに了承すると、職員さんはカウンターを離れて何かを調べに行った。
戻ってきた職員さんは一枚の紙を持っていた。
「お待たせしました。こちらギルドの依頼なのですが宿泊所の1階の中庭の雑草が凄いことになっているんです。しばらく1階に泊まる方がいなかったためなのですが……。この雑草処理をしていただけませんでしょうか?」
依頼書をみると、木(低木含む)以外の雑草除去の依頼書で報酬は200ルー。
安いのは、街中で安全なのと場所が狭いからかな。
「わかりました。依頼を受けます。抜いた雑草はスライムに食べさせて大丈夫ですか?」
「雑草の処理はお任せします。受注ありがとうございます。終わったらカウンターにいる職員に声をかけてください。確認してから依頼終了になります。」
「わかりました。丁寧にありがとうございます。」
依頼を受注したので、宿泊所に戻るついでに延泊の手続きをしてもらって部屋で朝食を食べる。
「木は食べちゃダメだなんだけど、ルルとマリンに雑草を食べてもらおうと思うんだけど大丈夫?」
"木を食べないで雑草食べれるよ"
"マリン 出来る"
私は中庭の隅で、近くの雑草を収納してかわいいスライムたちの非常食を蓄えておこう。
「3人でやれば早く終わるよね。そしたら資料室で勉強しようと思うけどルルとマリンには退屈だよね?」
"大丈夫"
"周り見るの楽しいから大丈夫"
食べ終わったらクリーンをかけて片付ける。
このクリーンもすごく助かっている。自分にクリーンをかける時に口の中の清潔を意識すると口の中も清潔になっている。
歯磨きを見つけていないから、本当に助かっている。
(クリーンのおかげで清潔に暮らせているけど、お風呂には入りたいな……)
切実な願いだけど、ほとんどの人がクリーンを使えるために入浴文化が基本無いらしい。
片付けも終わったので、部屋を出て職員さんに依頼票を見せて中庭への行き方を教えてもらう。
中庭に着いたので、バリアを張りながらルルとマリンに食べていい範囲を念のため伝える。
私はせりだした屋根の下のあまり濡れていない草をむしることにする。
非常食の雑草はそれなりに確保しているし、雨の中動くのも楽しそうなので大部分はルルとマリンに任せようと思う。
今後も薬草採取の際に非常食は増やしていく予定だし、決して雨の中に出たくないからではない。
もくもくと雑草をむしっていると、結構なスピードでルルとマリンは雑草を根こそぎ食べている。
(ルルとマリンもアイテムボックスが使えれば非常食保管出来て便利なのに)
途中休憩兼ねてルルとマリンの様子を見ていたりしたら、気が付いたら中庭が綺麗になっていた。
自分の手とルルとマリンにクリーンをかけて、カウンターまで行って終了の報告をする。
少し待たされて、無事に終了の確認をしてもらえたので200ルーを受け取った。
予定通り資料室に行って勉強しようと思う。
資料室に行き、ギルドカードを見せてスライムたちの管理をしっかりするように言われた。
スライムはなんでも食べちゃうからね。
ルルとマリンは肩に乗ったり下りたりしながら待っていてくれた。
しばらく集中して資料室の本を読んでいるとお昼の鐘が鳴ったので、部屋に戻ってお昼を食べることにした。
お昼を食べたら片づけをして、広場に向かう。
大分弱まったけどまだ雨が降っているので、誰もいなかった。
屋根がある場所に椅子を出して座って木の板を取り出す。
「人が来るまで広場で遊んでいいよ。ここにあるものは食べちゃダメだからね」
""はーい""
とてもいいお返事を聞いて、木の板に視線を向ける。
この板に自分が知っている限りの地図を描こうと思っている。
あの手紙の小さな文字を信じるなら、何度か繰り返せば地図に関するスキルが取得できるかもしれない。
筆記用具は無いので、人差し指の先に燃えないくらいの熱を発生させて焦がすことで地図を描こうとしている。
失敗した時に部屋では大変なので、屋根があるところとはいえ広場に出て試そうと思ったんだ。
焦げるくらいって注意してまずは街を表す四角を木の板の中央に描く。
いい感じに焦げて指を動かすことで線が描けた。
それからは、自分が知る限りの情報を木の板に書き込んでいく。
街の四角に門を追加し、街道を描き森を書き込み、草原の位置では薬草や角ウサギなどの情報を書き込む。
書き終わった後、自分を鑑定してみるが新しいスキルは表示されていなかった。
より書き込もうにも行ったところが少ないから書き込む情報がない。
地図じゃないけど、かけるものを思い出して新しい板を出した。
今度はギルドの見取り図を描き始める。
もちろんギルドの全てを見て回ったわけではないけど、かけるものが他になかったから仕方がない。
自分が知っている限りのギルドの見取り図を描き終えた。
もう一度自分を鑑定してみると、地図ってスキルが生えてた。
小さくガッツポーズをとってしまったが、早速地図のスキルを使用してみる。
鑑定の時と同じように半透明なウィンドウみたいな地図が浮かんでいる。
視界の邪魔にならないところにイメージすると地図が移動して、小さくイメージするとかなり小さくなった。
とても便利だけど、地図をみると今まで私が通ったところだけ地図になっている。
草原はずいぶん広い範囲が地図化されているけど、もしかしたらサーチで認識したところも地図化されているかもしれない。
(明日採取の際に確認してみよう)
気が付いたら雨は上がっているし、雲が少なくなっていたので明日は採取に外に行けそうだ。
「ルル、マリン、そろそろ終わりにして食堂に行くよ」
何かをしていた2体を呼び戻して、食堂で夕飯にする。
明日も早く起きて薬草採取をして地面の状況によっては角ウサギの狩猟に行こう。
早々に食べ終えて宿泊所に戻り、いつものようにクリーンをかけてベッドに入る。
「ルルとマリン、大活躍だったね。中庭では雑草を食べてくれてありがとう」
照れてるように触手を揺らしている。かわいい。
「広場では何していたの?」
"マリンにバリア教えていた"
"バリア 出来た"
てっきり遊んでいたんだと思っていたのに、バリアの練習をしていたようだ。
「ルルもマリンもすごいね。バリアあったら安心だね」
"マリンの体当たり耐えられた"
"体当たり 壊れた"
どうやらルルのバリアはマリンの体当たりを耐えられて、マリンはまだ耐えられないみたいだ。
「ルルのバリアすごくなっているね。マリンは最初なのにバリア出来てすごいよ」
2体を抱き込んでもみもみしちゃう。
「もうかわいいのに、本当にすごいよ」
寝っ転がりながらもみもみしていたら、眠くなってきちゃった。
「眠くなってきたから寝るね。明日も今日と同じくらいに起こしてね。おやすみなさい」
""おやすみなさい""
スライムたちから返事をもらって、もみもみしながら寝てしまった。
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