第10話 身体強化……失敗
ギルドに戻ってきた。
(なんだかギルドにも大分慣れてきたな)
慣れた動作で、買い取りカウンターで薬草を15束を600ルーで買い取ってもらえた。
いつもなら2階にすぐに上がるのだけど、今日は奥のドアを通って広場に向かう。
夕方前なのに、広場には数人運動している人たちがいた。
先に運動していた人たちの邪魔にならないところでバリア付の走り込みを始める。
バリアはトランポリンに洗剤が塗られていて、柔軟なのに滑って攻撃をよけるイメージだ。
多分、攻撃の受け流しってこんなイメージだろうって作ったバリアだ。
走りながらも他の冒険者の運動を観察する。
私と同じように走りこむ人、筋トレしている人、1人で剣を振るっている人などがいる。
その中で気になる動きをしている人がいる。シャドーボクシングみたいに、敵を想定して剣を振るっているみたいなんだけど、時々人に出せる速度かってスピードで移動したり飛び跳ねたりしている。
あれほどではなくても、あの身体能力は真似できたら今後の討伐に絶対に有利になる。
休憩を装って広場全体を見るようにしてシャドーしている人に注目して観察を続ける。
最初はスピードを上げるスキルが存在するのかと思ったのだが、スピードだけでは跳躍力は説明付かない。
(魔力を使用して身体能力を向上させてる?)
色々考えてみるけどさっぱり分からない。
日も暮れてきたので食堂で考えながら食べることにした。
何時ものように分けて収納したあと、先程の身体強化を考え続ける。
怪我の治療は外から魔力を使用して肉体に影響を与えている。
つまり魔力は肉体に影響を与えることができるのは確定よね。
さっきの人は私が広場に来る前からやってたみたいだから、魔力の消費はかなり小さいんじゃないかな。
身体強化と考えると、強化は身体全体にかけないと強化されてない部分がちぎれたり切れたりしそうだし。
だとしたら魔力を1度外に出すと効率が悪そうだよね。
そんなことを考えながら食べていたらいつの間にか食べ終わっていた。
宿泊所へ戻り、昨日と同じ部屋だけど念の為クリーンをかけてからベッドに乗る。
「ルル、今日は色々あったね。ルルも甘さとかわかるのかな?次食べるときはルルにもおやつ分けてあげるからね」
"ルルも楽しみ"
ルルとおしゃべりをするのも楽しいけどやらなきゃ。
「これからちょっと考え事するから、ルルは好きにしていてね」
"わかった"
ルルにこれからすることを断りを入れて、ベッドの上で座る。
身体強化っぽい人を見て興奮してしまったけど、前の世界で見た定番を色々考えてみよう。
バリア、剣に魔法を乗せるはできた。
身体強化っぽいものを使用している人もいたからきっとできるはず。
他には、オート地図マッピングも定番かな。
これは、明日薬草採取後に木を切り倒して、木の板をたくさん作ろう。
木の板に地図を描いてスキルを取得できるかを試してみよう。
あとの定番は、魔力視などの感知系かな。
感知ってどうやるんだろう?
サーチって感知だよね?魔獣とか何で察知してるんだろう?薬草は?
なんか考えれば考えるほど深みにハマりそうな気がする。
感知系はサーチにおまかせしよう。
サーチが魔力を感知できるなら目でわざわざ見なくてもいいしね。
魔力を意識してサーチしてみると、自分もルルもうっすらと空気にも魔力がサーチで感じる。
もう魔力視はサーチでいいや。
自分の想像だと目に魔力を集めてって感じだけど、そこから想像できない。
(サーチが出来るならそれでいいや)
魔力をサーチしたままルルを見ると、ルルの周りに膜があった。
「ルル何してるの?」
"マスターの真似 バリア"
「凄いルル。バリア出来たの?」
"分からない マスターなにか投げて"
確かに効果を確認しないと出来てるかわからないよね。
手元にあった枕をルルに向かってそっと投げる。
ルルの手前で枕は落ちたけど、サーチで感じてた膜が無くなっていた。
「ルル凄いね。バリアになってたよ」
"でも 壊れちゃった"
「最初だから仕方ないよ。でも最初から凄いよルル」
"頑張る"
本当に凄いのでルルを撫でて褒めてると、ルルは嬉しそうに揺れていた。
「よし、もう少し考えてから寝るね。明日は夜明け前に起きて広場で走ってから薬草採取とスライムの討伐に行こうと思うんだけどルルはそれでいい?」
"ルルも討伐する"
ルルを撫で撫でする。
魔力をサーチしたまま自分を見ると、ゆっくり流れているのがわかる。
(これを早く流したら身体強化になるかな?)
「私はもう少し考えるからもう少し好きにしててね。寝る前には声かけるね」
ルルは触手を振って了解を示してくれた。
サーチのおかげで魔力がゆっくり流れているのが分かる。
この流れのスピードを変えるには、魔力が生み出される量を増やす?
身体が保有出来る量を超えてしまった時が危険よね。
モーターみたいな物をイメージして動かす?
これなら生み出す量を変えるより危険はなさそうだけど、なんか怖いな。
魔法を使う時に感じていた違和感が魔力を取り出しているってことなら、魔法を使うように意識したら動くかな?
色々考えてみたけど魔力なんて元の世界に無い物なんだし、わかってなくてもイメージで魔法が使えているなら流れているスピードが速くなるイメージだけでいけるんじゃなかろうか……。
(とりあえず試してみるか)
もう何も考えずにサーチで自分の魔力の流れを感じながら、この流れが徐々に早くなるってイメージした。
なかなか流れが変わらない。先程色々難しく考えちゃったからかな。
流れが速くなるイメージをしっかり持って、再びサーチしている魔力に注目する。
他に何も考えないように、ただ流れが速くなっている状態だけをイメージする。
徐々に流れが速くなってきた。でもまだ遅い。まだまだ早くなるイメージ。
しばらくイメージを続けていたら、身体の中を流れていた魔力の流れはすっかり早くなっていた。
(これで身体強化になるのかな?)
ベッドから降りて、ベッドを持ち上げようとしてみるが重くて持ち上がらない。
魔力の流れは速いままだったので、どうやら身体強化ではないみたいだ。
(この状態に何の意味があるのか、色々実験もしてみなきゃ)
「今日の実験は失敗だったよ」
"マスター 大丈夫?"
ルルに心配されてしまった。
すっかり暗くなっていたので、光の球をだして部屋を明るくする。
魔力の流れを早くしたままでも魔法を使用できるみたいだ。
「大丈夫だよ。ただ実験に失敗しただけだから。いつも寝る時間より遅いからもう寝ようか。明日は早起きしなきゃね。ルル起こしてくれる?」
"マスターを起こす 今日と同じくらい?"
冗談半分でルルに頼んだら、ルルが起こす気になってくれている。
「そう、今日と同じくらい。お願いしていい?」
"明日マスター起こす"
頼まれたのが嬉しいみたいで、揺れながら返事をくれた。
「ありがとう。明日起こしてね。お休みなさい、ルル」
"お休みなさい、マスター"
明かりを消して、お休みなさいの挨拶をして目を閉じる。
身体の中の魔力の流れは落ち着いている。
明日の朝は魔力の流れを速めながらランニングしてみよう。
何か違いがあるかもしれないし。
(ルル、本当に起こしてくれるかな)
明日起こされるのを楽しみにしながら眠りにつく。
身体が幼いからか寝つきがいい。
あっという間に意識は闇の中に落ちていった。
ブックマーク、評価、いいねをありがとうございます。
大変励みになります。
これからもよろしくお願いします。