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44.ハヤトの死

「俺は必ずローザを手に入れる!」


 ハヤトは叫んだ。


「ほう、いい心がけだ! できるものなら私を倒してみろ!」


「言われずとも!」


 ハヤトはすさまじい勢いでクリストファーと切り結んでいく。ギン、カキン、と刃と刃がぶつかり合う音が室内に響く。


 ハヤトはスキルのない中、相手の動きをスローモーションのときのように見切って避け、確実にかわして、相手の体力を削っていく。


「ふむ、やはり中々骨のある男だったな! せいっ!」


 ハヤトは低く横合いから来る剣を一歩飛びのいてよけ、クリストファーに向かって駆け出し、思い切り突きを腹に向かって食らわせようとした。


 ローザはすんでのところでそれをかわしたが、内心はひやひやしていた。


 ガキン、と剣と剣がぶつかり合う。


「俺は! お前を! 必ず! 倒す!」


「やれるものなら!」


 クリストファーはハンドガンを即座に抜きハヤトに向かって撃つ。しかしハヤトはそれを剣で切ってのけた。もはやハヤトの反射力はハンドガンを見切れるほどまで研ぎ澄まされていた。




 ハヤトは一瞬呆然としたクリストファーに向かって、ローザの体に向かって銃を三発撃った。


「くっ」


 三発ともローザの体の胸から腹にかけて命中した。そしてクリストファーは剣を杖にするようにして何とか立っているような状態になった。




「本当に撃つとはな……」


 クリストファーが言う。


「お前は確かに言ったな。人間を突き動かすものの一つは愛であると。まったくその通りかもしれないな……、だが!」


 クリストファーは体に鞭打つようにして再び二足で立ち上がった。


「私にも信念というものがある!」


「最高のエンターテイメントを作り、人々を笑顔にすること! そのためなら、人々を楽しませるためなら、何度でも戦おう。どんな手でも使おう。この心が朽ち果てるまで! せええええええい!」


 クリストファーは駆け出した。ハヤトも相手の動きに合わせてハンドガンを撃ったが、相手に見切られ、弾切れとなった。装弾しているひまはない。彼はクリストファーの底力に驚きつつも、何とか相手の剣を防ぐ。


 ローザの体は血を吐き出し、そして言葉をつむぎはじめた。


「お前は本当に、主人公のようだな。だが私も負けてはおられん!」


「お前に負けるような俺じゃねえ!」


 ハヤトは必死になって剣にかかる力を受け止める。



 二人は5分の制限時間も無視して何度も何度も剣で切り結び合った。何度も何度も何度も何度も何度も、切り結んだ。しかしそのうちに二人の底力の間の差によって、徐々に押されるようになっていた。それはクリストファーの方だった。戦い始めてから30分もたっていた。


 クリストファーは必死にハヤトの攻撃を防ぎ続けていたが、ハンドガンの打撃による消耗感がどうしてもぬぐい切れなかった。


 それに。


「俺は絶対に、ローザのすべてを手に入れる!」


「ちい!」


 クリストファーはハヤトを憎々しく思いながら見上げた。その目はまさに必死の目だった。


「お前はもう、この体は惜しくないのか?」


 クリストファーが問う。


「もちろん惜しいが、俺はローザと一生を約束したんだ。体なんか関係ねえ」




「こんのおおおおおおおおおおおハヤトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 クリストファーは最後の一撃とばかりに、全力で剣を振り下ろす。


「クリストファアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 ハヤトもそれにこたえ、剣と剣がすさまじい勢いでぶつかり合った。


「俺は、ローザのすべてを、手に入れる! うぉおおおおおおおおおおおおおお!」




 ハヤトは全力で剣を押し切り、クリストファーを吹き飛ばした。


「がッ……」


 ローザの体は床を転がっていき、最後には床に寝転がる形になった。


 クリストファーは言う。


「はは、これでお前の、妹は、死んだな……」


 ローザの体は這う這うの体で言う。


 ハヤトはクリストファーに歩み寄り、彼に向かって言う。


「いいんだ。死はかならず人をそのバスに乗せていく。そうだろ? そしてローザの生と死は俺のものだ。だからローザが死ぬなら俺はローザと一緒にいく」


「は……?」


「俺はここで死ぬ。そしてローザの乗るバスに俺も乗る。あいつと俺はいつまでも、いつまでも同じバスに揺られていくのさ。だから俺はここで死ななくちゃならない。だからお願いだ。ローザを俺のもとにやってくれ。俺は彼女と旅に出るから」




 そうしてハヤトは、自分の心臓にクリストファーから奪った銃を向け、そして引き金を引いた。


「やめろっ!」


 クリストファーが叫ぶ。だがもう遅い。


 そうしてハヤトの意識は途絶えたのだった。

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