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41.ラストダンス3

 ハヤトとローザはキスをした。


 そうしてハヤトは心臓がバクバクするのを、全身の血がたぎるのを感じた。今まで感じたことがないような感覚が二人の全身をしびれさせた。時計の針が止まった。


 二人はもう愛し合っているのだ。クリスティーナはもはやその世界にいない。


 ハヤトとローザは再び調子を取り戻し、クリスティーナに相対する。


「ローザ、いけるな!」


「はい! お兄様!」




「セイッ!」

 二人は構え、ハヤトは今までにないほどの威力のかまいたちで、一定の打撃をクリスティーナに与えた。


 そのすきにローザは、素早い動きでクリスティーナにサブマシンガンを浴びせ、動きをできる限り抑え込み相手の隙を作る。


 そうして作られた隙を今度はハヤトが利用し、クリスティーナに向かってスローモーションの世界に入り切りかかる。


「どうして……!」クリスティーナは嘆いた。「あれだけ打撃を受けておきながら、どうしてまだそんなに動けるの? 兄妹のくせに生意気ね……!」


 クリスティーナはギリギリのところでハヤトの剣と切り結んだ。しかし力負けし、何とかハヤトの剣の力を受け流す形になった。


「っ、容赦ないわね」


「そちらこそ」


 ハヤトはすかさずハンドガンを抜き、クリスティーナに向かって撃った。しかしクリスティーナは必死に回避した。


 しかし。


「まだだ!」


 ハヤトは剣を思い切り振り上げ、そしてクリスティーナに向かって斜めに振り下ろした。


 クリスティーナは斜めの剣の勢いを何とか自らの剣で殺し、攻撃を防ぐ。


「ちっ、こうなったら……!」


 クリスティーナは一度ハヤトたちからとびのき、自分のコピーを何体も生み出した。


「なるほど、卑怯だな」


 ハヤトがつぶやく。


「黙りなさい。あなたたちをちょっと見くびっていたわ。悪いけれど、何としてでも私は最高の物語を作るのよっ!」


 というやいなや、四方八方からクリスティーナが切りかかってきた。


「おーい! あたいたちをおいてくなよなー!」


「俺もやる」


「ハヤト、よく頑張ったな」


 見ると、アカリ、オースティン、シンが電子の空間に入り込んできていた。


「お前ら……!」


 ハヤトとローザに向かって風が吹いてきた。二人はその風にすがすがしさを感じていた。


「このおおお!」


 クリスティーナがかまいたちを起こそうとするのを、ハヤトの剣技とローザの銃撃で防ぐ。


 そしてハヤトはスローモーションの世界に入った。自分の体が耐えられるほどまで全力で体を動かして。


 ハヤトはクリスティーナの黄金の剣を頭の上まで剣で持ち上げ、そして剣を一度引き、心臓をえぐり出そうとする。クリスティーナもスローモーションの世界入っているのか、その動きに対応しようとするが、今回ばかりはハヤトの方が一歩速かった。


 ハヤトは思い切り剣をクリスティーナの腹に突き刺した。


「速いわ、ゲホッ、いったい何が……、どうして……」


 クリスティーナはその場に尻もちをつく。そして完全に戦意を喪失した。


 彼女は腹に剣が突き刺さったまま、必死にしゃべり始めた。


「私は、ハヤト君のことを慕っていたのよ? レべリアを銃で撃ち殺す姿、襲い掛かってくる敵を容赦なく切り殺していく姿、この城に入るために六人を殺す姿、そのすべてが素晴らしかった。そして今、私を殺すのだから、ぞくぞくするほどたまらないわ。でもどうして、今日はこんなに強いのかしら。もしかして」


「そうだ。俺たちは兄妹じゃない。俺たちは」ハヤトは一拍いおいて言った。「恋人同士として、愛し合っているんだ」


「お兄様……」


 ローザはハヤトを見て嘆息した。


「お互いに想い合っている。だからこそお前は追い付けない。今日はそれを確認出来て本当によかったよ。機会を提供してくれた礼を言おう」


 そういってハヤトは慇懃に礼をしようとした。


「ふん、礼なんていらないわ。あなたたちが主人公としてこれからの物語を紡いでいく、それには変わりないような気がしたの」クリスティーナは徐々に衰弱しながら言う。「……、だから、妥協したまでよ」


「お前も強情だな」


「あなたたちがこれからどんな物語を紡いでいくのか、とくと、見せてもらうわ……。お父様には近付けなかったかもしれないけれど、今回は、多少はましなシナリオをかけた気がするわ」


 そうしてクリスティーナは光の粒子となって消えていく。


「それはよかった」


 そしてクリスティーナの分身たちも次々に消えていった。




 部屋はとたんに静かになった。とうとうデスゲームの支配者がいなくなって、このゲームは終わったんだ。


 そう思った瞬間、ハヤトは急に疲労感を覚えた。急に杖を失ったそのとき、


「悪魔がささやく」


 いつの間にか真っ暗になった部屋で、聞き覚えのない声がハヤトの後ろから聞こえた。


「なんだ?」


「それが福音なのかどうか、さて、それは君次第だ。だが君には見込みがあるようだ。私が最後のダンスをもう一度躍らせてあげよう。さあ、私の手を、取りたまえ」

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