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38.ゲームマスター

 ハヤトは群衆を前に声を振り絞って叫んだ。


「この六つの石畳には、とある意味が込められている!」


 ローザはそれを聞きながら、緊張した面持ちでRの字の上に立っていた。


「それは!」ハヤトは一呼吸おいてから、「この文字の上で、血族が誰かひとり死ぬと、鍵が解除される、ということだ!」


 あたりがシーンとする。その静寂がしばらく続いた。そしてその後で、あるものが声を上げた。それは本当なのか。AURORAで本当に合っているのか。殺す必要があるのか。どれもハヤトにはもっともな質問に思えたし、これはある種の賭けだった。ハヤトには確信があるとは言い切れなかった。ただ、勘がそう告げているだけだったのだから。




 そしてしばらくの間、怒号やら喧嘩するような声やら議論する声やらが聞こえてきて、ある瞬間、空間がピンとはった。急速に静かになっていった。すでに血族の人間は後ずさりし、それ以外の人間がそれを追いかけるかのような形になっていた。その中でただ一人、ローザだけが石畳の上に立っていた。


 血族以外の集団がやれ、という雰囲気を発した瞬間、それは起こった。

 血族の中の何人かがそれに反抗しかかったその瞬間、その反抗した者たちが次々と血を流しながら倒れたのだ。そして六つの石畳の上には六つの心臓が置かれていた。




 しばらくあたりを静寂が包んだあと、誰かが悲鳴を上げた。






 どれだけ長い間そうしていただろうか。


 それはこう答えられるべきだろう。「門の扉が開くまで」。


 果たして門はあの惨劇の後、古めかしい音を立てながら開いたのだ。ハヤトの推測、行動、何もかもが正しかった。少なくともハヤト自身はそう思っていた。


 いよいよだ。ハヤトは思った。いよいよアウロと戦い、このデスゲームを終わらせる時が来たのだ。


 その時ちょうど、殲滅隊の総攻撃がハヤトたちクーゼルの人々を襲撃しにきた。彼らはクーゼルの人間とごちゃ混ぜになって、城の中になだれ込んだ。


 そして中の広いフロアに入り、そこにアウロが現れたとき、そのけたたましい騒ぎはスッとおさまった。無駄な犠牲が出る前に。


「おめでとう諸君。君たちはめでたく、そして懸命にもデスゲームの隠された回答にたどり着いた。そして今から君たちは僕の乗ったゴーレム、ロボットともいえるが、それと戦う。そして見事勝利したら君たちをデスゲームから解放してあげよう。ただそれだけの話だが、理解はできたかな?」




 アウロに向かって総攻撃が発せられるまで時間はかからなかった。すさまじい魔法や剣技や銃撃が浴びせられ、そして幾多もの人間がその岩のゴーレムに吹き飛ばされていった。




「クーゼルの皆さん! 線路は敷きましたね!?」ハヤトが叫ぶ。


「うん」クリスティーナが代表でこたえた。


「では、お願いします! 例のやつを!」




「なんだ、いったい何だというのだね?」アウロは叫ぶ。「この僕に逆らうものが、いったい何ができるというのだね? 何にもできるはずはない。僕は偉大な存在なんだ。でもそれは僕だけじゃできなかった。僕以外の人間が必要だったんだ。でもそれは、お前らじゃ、ない!」


 そういいながらアウロはまとわりついていた人々を吹き飛ばしていった。



 するとそこへ暴走列車が突っ込んだ。すさまじい勢いで。轟音を立てて突っ込んだ。アウロの言う「お前ら」とやらが城の中へと全速力で突っ込ませた列車が、ゴーレムを粉々に粉砕した。


「おのれらああああああああああああああああああッ!」


 アウロはそう叫びながら消えていった。



 クーゼルの人々は勝利の歓声を上げた。六人の死者のことも、消えていったNPCのことも忘れてみんな涙を流しながら喜び合った。オースティンも、アカリも、シンも、誰も死ななかった。みんながみんな、喜んでいた。


 ただ三人を除いて。


 ハヤトが叫んだ。


「アウロはもう死んだ! これでこのゲームは終わりだ!」ハヤトは一拍おいて言った。「だがみんなに伝えておきたいことがある。このゴーレムが突っ込んだ壁の先には、ある特殊な空間がある。それがこの青い光だ。そこにもう一人の敵がいる。アウロが死んだ今、このデスゲームを終わらせられるのはそいつだけだ。そしてもう一つ、この城を開けるために死んだ六人のことを覚えているか? あいつらはな俺が殺したんだ」


 それを告げると、なんだと、ふざけるな。どこかから怒号が飛んできた。しかしハヤトはさも当然かのように話をつづけた。


「俺とこの、隣にいるローザが、だ。そして倒すべき敵は」ハヤトは一呼吸おいた。そして「クリスティーナさん、あなたですね、このゲームの主催者、ゲームマスターは」


 ハヤトは真実を告げるように重々しく、つややかな髪の流れるような女に向かって声を紡いだ。


 しばらくしんとした後、あたりがどよめいた。何を言ってるんだあいつは、という声が聞こえた。


 だがハヤトは構わず話をつづけた。


「クリス、いこう。最後の話し合いに」


 クリスティーナは無表情でハヤトを見つめていた。これといったリアクションを見せなかった。ただ観客席で見世物を見物しているかのような様子だった。


 ハヤトに促されて、呆然とする人々をおいて、三人はゴーレムの先にある空間へと飲み込まれていった。

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