32,デスゲーム1・2回戦
シンとクリスティーナのペアは、クリスティーナの死亡予知ともいえるスキルにより、敵の直接攻撃を予知することができたために死亡による色の変化を食い止められた。そしてその敵の攻撃をかいくぐりながら、シンが剣によるかまいたち魔法によって水晶の色を変え、二人は勝利することができた。
そして敵の二人組は光の粒子となって消え、シンとクリスティーナのライフが一つずつ増えた。
二回戦目は敵のグループが変わり、アカリとオースティンのペアが戦う。
「あたいが転移スキルで敵を引き付けるから、あんたは兵站スキルで強めの弓矢を量産してなさい! 30秒たったところであたいはあんたの所に弓矢を取りに行くから。あんたも弓矢強化スキル持ってんでしょ? そしたら残り30秒弱で総攻撃に出るわよ。あんたは右、あたいが左に行く。状況に応じて戦術は変える、わかったわね!?」
「お、おう……、一応」
見るからに非常に温度差の大きい二人組だ。
ハヤトの不安が届いたのか、オースティンが振り向いた瞬間、試合開始のホイッスルが高く鳴り響いた。
地形は再びリセットしなおされ、先ほどとは違うものになっていた。
オースティンが振り向いている隙に、アカリは瞬間移動をして、敵二人組の前に立ちはだかった。
「水晶の色を変えたかったら、あたいを倒してからにしな!」
「何言ってやがる!」
相手の弓使いと思われる青色の髪の男が、目の前3メートルのアカリに向かって矢を放つ。しかしアカリに届く前に彼女は位置を変えてしまう。しかし。
「ふんっ」
図体のでかい男が放った矢がアカリに突き刺さり、アカリは粒子になってスタート地点に戻った。試合開始から5秒での出来事だ。
「ふふん、あのやたら体のでかいやつのスキルの一つは予知だな」とやたら体の小さいアカリが言う。
アカリはオースティンが兵站スキルで量産された矢と弓を持って森の中へと突入した。相手の予知スキルがどのような特性を持っているかはわからないが、妨害されるのは間違いない。そうアカリは思った。
開始から20秒たち、相手陣地に近い湖の中にある水晶が相手チームの色、つまり赤色に変わる。
「さも当たり前かのような顔してる。気に入らないね」アカリはそう言って水中に瞬間移動し、水晶の色を変える。色は自分チームのもの、つまり青色だ。そして再び瞬間移動し、予知スキルを持った男の前に立ちはだかる。そして再び殺され、スタート地点に戻る。
弓は一度に多数打ててなおかつ射程の長い弓がスキルによって生まれていた。だがアカリはそれをとらなかった。オースティンは一瞬アカリの行動の意味が理解できなかったが、一回戦での予知スキルの強さを思い出して、その弓を自分の手で使うことにした。彼は弓矢強化のスキルを使い、火の矢を多数上空から雨のように降らせた。
「試合開始だな」アカリは言った。残り試合時間は30秒だった。
予知スキル持ちが案の定オースティンを狙って突撃してくる。よし、ここまでは読めたぞ。アカリは心の中でガッツポーズをした。そして弓矢強化と魔法を使い合わせてその男を殺した。ナパーム弾のよう、とはいかなくとも、適当に散らばった複数の矢の一つが男に命中したのだ。当たり所もよかった。
「あたいが必ず勝ちをもぎ取って見せる」
しかしその時だ。
「アカリ! 戻ってこい!」
その直後、アカリの背後ですさまじい爆発が起こった。そうして森林エリアは半壊し、砂漠エリアのように視界がよくなってしまった。どうやら青い髪の男は何らかの爆弾スキルを持っているようだ。アカリはなるほど、と思った。図体のでかいやつが予知で爆発を見て、自らおとりになったのだ。
その爆弾によってオースティンの近くにあった森林エリアの水晶がむき出しになる。そして敵の色に変わっていた。
オースティン、あとはまかせたぜ、と心の中で呟きながらアカリは予知スキルを持った巨体を瞬間移動で翻弄する。スキルも体力を消耗する原因の一つにはなる。残り17秒くらい、オースティン、頼んだぜ。
だがアカリにはひとつ気になることがあった。それはオースティンがアカリを爆発の前に呼んだことだ。一体何がしたかったんだ? アカリは瞬間移動を繰り返しながら、徐々に目が回っていくのを感じつつ考えた。しかしすぐに答えの出るものではなかった。
残り十秒、アカリは一つの答えを導き出した。
「そういうことか!」
アカリはオースティンのいるところへ向かって砂漠エリアを走った。その途中、自分チームの色に変わった水晶を守っていた、青い髪の男に威嚇射撃をされる。それに巨漢も加わった。意地でもオースティンのところへは行かせないつもりらしい。
残り二つの水晶の色は無色のままだ。完全にあの水晶の色で勝負を決めるつもりだ。アカリはそう感じた。
オースティンの横顔をちらりと見て、アカリはにやりとした。あいつも人使いが荒い奴だな、案外。彼女はそう思った。
オースティンは持てる限りの最大限のスキル威力で爆弾付き弓矢を放った。そう、爆弾を使っていたのは青い髪の男ではなく、オースティンだったのだ。そして仲間を殺すことはできない。つまり。
水晶の周りで巨大な爆発が起こり、風圧で遠くから放たれた矢の数々が吹き飛ばされる。そして青い髪の男が矢を放つ。
「おらあああああああああああああああああああ!!」
アカリが爆弾を横目に放った矢が、爆風の影響をほとんど受けることなく水晶に向かって放たれた。その直後、アカリの視界から水晶が消える。
その後しばらくの間、ドームの中が静寂で包まれた。みんな爆風によるほこりがなくなるのを皆が待っていた。
そして。
爆風が晴れた後、水晶の色は果たして無色、でもなく、青色、でもなく赤色だった。
アカリは再びにやりとした。オースティン、あんた案外やるやつだな、と。
あの一瞬にいろいろなことが起こっていたのだ。予知スキルを持った男の矢により、アカリの矢は奇跡的にはじかれ、水晶には当たらなかった。しかしオースティンの放った爆弾は二発だったのだ。一発目の爆撃は青い男の矢により無効になった。このとき水晶は無色か青色だっただろう。しかしすかさず放たれた二発目により水晶は打撃を受けた。そして赤色になった。アカリが矢を放った後に爆風に包まれたのは、その二発目のせいだったのだ。
「巨体の男、あんたの予知は当たらなかったな! あたいらの勝ちだ!」
巨体の男は膝から崩れ落ちつつ、光の粒子となって消えていった。
それを見とどけつつ、オースティンは思った。アカリが予知スキルを持った男の注意をひいていなかったら、二発目の爆弾の後、敵に矢を放たれ死ぬことになっていただろうと。あの予知スキルによって、アカリの矢を防ぐという神ワザのために男の頭が埋めつくされ、爆弾が当たったのだと。
「まったく」オースティンがため息をつく。
こうしてハヤトたちの二回戦は勝利で終わった。




