29.ツインテールの少女
コンコンコン、ドアをたたく音がマンションに響く。その音で、ハヤト、ローザ、クリスティーナは目を覚ました。
ハヤトはベッドから起き上がり、ドアを開いた。するとそこには少女がいた。ハヤトは見た瞬間にまた変なのが来たな、と思った。
少女の背丈はハヤトより頭ひとつ小さく、ツインテールをしており、頭部は黒髪、右側は緑、左側は黄色。真っ青なジャージ姿で、下はズボンをはいている。背中には弓矢と矢筒を背負っている。
「おはよう!」少女が言う。
「おはよう……、何の用ですか」ハヤトが寝ぼけ眼をこすりながら言う。ずっと夜のままだから時間はわからないが、おそらく早朝だろう。
「あたいの名前は多川アカリ! 首元にAのマークのあるいかした女だ! よろしくな!」
首元にAのマーク? ローザと同じタトゥーか。こいつも手掛かりになるかな。いったいなにを表してるんだ? まあともかく、こいつは見た目以上に面倒そうだ。ハヤトは思った。
「よろしく……。で、何の用だ? こんな時間に」ハヤトが問う。
「あたいはプレイヤーのパーティーにいたんだ。でもこの前のアウロってやつが出てきたせいであたい一人になっちまった。だから他のパーティーに入れてもらいたくてここにやってきた! このあたりでセーフティーゾーンを作っているとかいうシンのパーティーのリーダーなんだろ? お前。だからお前にパーティー加入の是非の投票を問いに来たんだ! もちろんOKだよな? シンが言うにはこのパーティーは五人パーティーなんだろ? シンはあたいをぜひ入れたいと言ってくれた」
まじかよ、とハヤトは思った。
「だからリーダーのおまえにも聞く。あたいをパーティーに入れてくれ! そしたらきっと今よりずっと強いパーティーになるぜ! あたいが保証する!」
どうやって保証するんだよ、とハヤトは思いながらも、今はパーティー人数は多いほうがいいんだったな、と思い、気になっていたことを尋ねる。
「お前のスキルはなんだ?」
「あたいのスキルは【転移】と【弓矢強化】だ! どっちも自分にしか効かないぜ!」
自分だけかよ、とハヤトは思いながらも、転移はなかなか使えそうなスキルだと感じた。
「わかったよ。シンがいいっていったんだし、お前を一人のまんまにするのも気が引ける。一応入れてやる」
するとツインテールの少女はよっしゃ! とガッツポーズをして喜んだ。ずいぶん個性的な奴だ、とハヤトは思った。
「ローザ、クリスティーナ、かまわないな」
とハヤトは振り向いて尋ねる。ローザがこくりとうなずき、クリスティーナがそれに続いてうなずく。
「それじゃああたいは今日からお前たちの仲間だ! よろしくな!」
それからしばらくして、ローザの諜報でシンとオースティンが殲滅隊と戦闘状態に入り、シンが深手を負ったということが分かった。四人はすぐに駆けつけ、遠距離攻撃の三人を援護に回し、ハヤトとオースティンはシンの救助にあたった。
シンは右胸に火の矢を受けたようだった。
「俺のことはもういいから、お前たちは殲滅隊を何とかしてくれ、俺が死ねばお前らは生き残れるかもしれないんだから」シンが言う。
「そんなこと言うな! そしたら俺がずっとお前の呪縛に捕らわれちまうだろうが!」と、オースティン。
「へ、まったくお前は言い回しがくどいな。正直に俺に生きてほしいとでも言ってみやがれ。とにかく、俺はもう無理だ」
と言うシンへ、ハヤトは問答無用で大ポーションをその口に突っ込む。
「お前は運のいいやつだ。矢は貫通しているし、右胸は肺があるだけだ。ポーションで回復して矢を抜けば何とかなるはずだ。だから気を緩めるな。気持ちが肝心だからな」とハヤトは言う。
「けっ、レベリアちゃんは死んじまったのに俺は生き残るのかよ。悔しいな」と言ってシンは心底悔しそうに涙を流し、右手でそれをぬぐった。
三人の援護もあって、オースティンとハヤトはシンを前線から退かせ、手当てをすることができた。
矢を抜いてポーションで傷をふさいだシンは、再び前線に立ち果敢に殲滅隊と戦い、彼らを撤退に追い込んだ。
シンにしてみればレベリアの敵を討てなかったことが心底悔しかっただろうが、オースティンなどほかのパーティーメンバーは、仲間からまた死者が増えなくてよかった、と思った。
しかしハヤトは迷っていた。このまま殲滅隊と戦い続けていいのだろうか、と。彼らだって何も好きでやっている奴らばかりではないだろう。自分が生き残りたくて人を殺しているやつもいる。そういうやつを責めることこそできるが、だからといって殺すことまで許されるのだろうか? ハヤトにはその迷いがぬぐいきれずに胸のうちでわだかまっていた。だがどちらかに思いを決めることもできず、ハヤトは殲滅隊と戦うことを否定することができなかった。自分と同じNPCを殺して消すことをNOということができなかった。何かのために人を殺すことが許されるのだろうか、ハヤトはずっと考え続けていた。




