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24.黄金の剣とファンタジー

 魔法使いの男はぐいぐいと心臓を抑えながら後ずさりしていき、しりもちをついた。そしてついにはばったりと倒れた。


 蛇は生きたままだが、魔法使いは死んだ。


 これで、勝てる!


「ローザ! もう一度だけ舌に捕まってくれ!」


「はい!」


 そしてふたたび霹靂の一閃、白金の剣で蛇を内側からうろこまでガリガリと切り裂いて……、内臓の行き止まりで、剣を奥に向かって思い切り突き刺す。グサリと。


 するとどうだろうか、さっきまではまったくダメージを受けていなかった蛇が、どさりと倒れ、そのまま動かなくなってしまった。




「勝った、のか?」


「お兄様、やりました、ね」


 といって、ローザは倒れる。


「大丈夫か!?」


「大丈夫です。ちょっと、疲れてしまいましたが……」


「すまない、おとり役ばっかやらせて。一つ思うことがあってな。無理をさせて悪かった。とにかくよかった、疲れた程度で」


 怪我でもしていたら大変なことになっていた。ポーションも残りわずかだ。ここでドロップするアイテムに期待するとしよう。




 しばらくすると蛇も魔法使いも消え、奥の方で光る何かが見えた。奥の洞窟の中、魔法使いと蛇が出てきたところに何かあるらしい。


 ハヤトはローザを連れだって、その洞窟の中へ入っていった。するとそこにあったのは、


「黄金の、剣、か」


 まぶしい光を放つ黄金の剣がそこに刺さっていた。その剣を抜くと、スっと、背中から重みが消えた。白金の剣がどうやら消えたらしい。


 そうしてハヤトは背中に黄金の剣をしまった。


「これでミッションは終わりって、へ?」


「あっ!」


 その瞬間、二人は宙に浮いた。床がすっぽり消えたのだ。


 そのまま二人はすべり台のようにすいすいと地面を滑っていったが、不思議なことに地面を滑っているというよりは本当に滑り台を滑っているかのようななめらかさだった。




 そうして傾斜が緩くなり、たどり着いた先は賑やかな街だった。天井は、なかった。二人がポカンとして後ろを振り向くと、そこには城があった。上には青空があった。そして城の中から出てきたのはあのときのターバンの女。今はすっかりその装いを、雰囲気を変えて、シンデレラかと見まがうようなドレス姿になって、王子のような男と手をつないで出てきた。


 そしてシンデレラは言う。


「邪悪な魔法使いを倒してくださり、そして勇敢にも蛇を倒し私の呪いを、人々を呪いから救ってくださりありがとうございます」


「なんとお礼を言えばいいかわかりませんが、とにかく、ありがとうございました」


 そういうのは王子だ。


「妹のおかげです。ローザ、よく頑張ったな」


 ところがローザからは何の返答もなかった。


 ハヤトは心配して横にいるローザを見た。ローザは王子とシンデレラを見て、


「ああ、これがファンタジー……」


 と言って両手を合わせていた。


「お前もたいがい変な奴だよな……」


 ハヤトのぼやきも顧みず、ローザは目をキラキラさせ続けていた。


「お二人にはどう恩を返したものか」


 王子は言う。


「黄金の盾、黄金の盾をください!」


 とローザは噛みつくように言う。


「黄金の盾はないが……、黄金の盾となるネックレスならある。それをつけていればきっと君たちに幸運がもたらされることだろう」


「本当ですか! やった! やりましたねお兄様!」


「あ、ああ。そうだな」


 ネックレスをかけられてぴょんぴょんはねるローザをしり目に、ハヤトはクールだった。


 黄金の剣に黄金の盾、か。もう何でもできそうだな。と自嘲気味に思っていると、


「せっかくだから君たちに何かふるまおうか。わたしも呪いが解けてようやく自分の食事にありつけるというところだ」


「せっかくですがそれはお断りしておきます」


「お、お兄様!?」



 ローザが驚く。


「俺たちにも優秀なシェフがいるもんですから。彼女をおいてちゃっかり食べ物にあずかるのもあれかと思って」と言って頭をかいた。


「ほう、さすが邪悪を切り裂いた勇者だ。仲間のことを気遣うとは。私も見習わなければ」



 そうして二人との別れを死ぬ気で惜しむローザを引きずりながら、ハヤトは二人に別れを告げてはじまりの街へ戻ろうとした。


 一段とにぎやかにはなったが、ここは「次の街」だ。はじまりの街への戻り方は簡単にわかった。ハヤトがはじまりの街へと戻ろうとしたところで、後ろから声がかけられる。


 今度は何だとやや疲れ気味に振り返ると、そこには銀色の防具を全身にまとい、頭だけかぶとを脱いでいる二人の騎士がいた。一人は金髪で、もう一人は黒髪。ローザとハヤトと同じ組み合わせだ。


 ハヤトは髪の毛の色のことをぼんやり考えていた。すると二人のうち快活そうな金髪の騎士が口を開いた。


「君たちがあの蛇と魔法使いを倒したんだね。見事だったよ。俺たちも何度か挑んでいたんだけれど、なかなか倒せなくてね。プレイヤーでも苦戦するくらいなのに、あんな離れ業を連発してるんだから俺もびっくりした。一体君たちは何者なんだ? 特に黒髪の君」


 金髪の騎士から問われる。


「え、俺はただのアサシンですけど、あなたたちこそ何者なんですか」


 とやや塩対応気味で答えた。


「ああ、失礼した。まだ名乗っていなかったな。俺の名はシン。冒険者をやっている。ちなみにこいつはオースティンだ」


「シンにオースティンね」


「二人で冒険者をやられているんですね」


 とローザ。


「ああ、そうだ。それでついさっきなんだが、妙な噂を耳にしたんだ。だからお互い情報交換をしないか。君たちもNPCなんだろう?」


「ええ。情報交換、ですか。あんまり提供できる情報は持ってませんが、その妙な噂、ってのには興味があるので、ぜひお願いします」

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