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19.第二次討伐戦

 ハヤトは、気づけば霊廟のベッドの上に寝かされていた。だが思考は、別のところでとめどなくあふれていた。あのローザが、俺を? どうして? 嫌な思考がとめどなくあふれてきた。不機嫌だったからか? いや、それだけで殺すはずがない。


 もしかしたら、と一つだけハヤトが納得する理由があった。いや、納得とまではいかないかもしれないが、ハヤトは思う。ローザは一度死んで、残りライフが二つになっていた。それに対して俺は三つ残していた。それが気に食わなかったのか、それともクリスティーナさんとの絡みも関係するのか。しかしわざわざ看病した相手を殺すような真似をするだろうか……。


 ハヤトは霊廟でしばらくそんなことを考えていた。あの酒屋の部屋のドアには結界が貼ってあった。しかし一歩外に出てしまえばだれでも侵入できてしまうのだった。でも確かにあの声はローザのものだ。一体なぜ……。




 しばらくして、ローザとクリスティーナがやってきた。ハヤトはローザを見た。しかし何もわからなかった。特にこれといったおかしなところはなかった。


「お兄様、何があったのですか?」


 最初に声をかけてきたのはローザだった。早朝のことだった。俺がいないことに気づいて、クリスティーナと探し回っていたのかもしれない、とハヤトは考えた。それともこれは楽観論だろうか。


「ハヤト君、どこでやられちゃったの? 部屋からは出た?」


「はい、出ました」


「じゃあ結界を破られたわけではないのね」


「はい」


 少しの間沈黙がおりる。


「俺は……」ハヤトは逡巡した。しかし言うべきだろう。今日が最後の討伐戦なのだから。復讐の終わりの日なのだから。でも新しい問題を増やすわけにはいかない。どうすればいい? ハヤトは迷いに迷って言った。

「ローザに包丁で殺されたような、いや、殺されたんです」


 少しの間沈黙がおりた。そしてちょっと時がたったところで、場をなごますような笑いが出てきた。クリスティーナだ。


「な、なんですか?」


「ロ、ローザちゃんがあなたを殺すなんて、あるわけないじゃない。ハヤト君ローザちゃんのこと信じてあげてないの?」


「いえ、別にそういうわけでは……」


「そういうわけじゃないならどうなの?」


「言った方がいいかと思って、それで……」


「お兄様」とローザが言う。「私がお兄様を殺すとでもお思いでしたか」


 ハヤトはその迫力に気おされる。


「い、いえ、そういうことは、そんなことはない、けど」


「じゃあ疑わないでください」


 そういってローザは腰に手を当てる。



「悪い……、ただお前の背丈でお前の声だったことは確かなんだ」


「そうですか……。もしかしたら【擬態】のようなものがあるのかもしれません。誰がお兄様を殺すようなことをするのかはわかりませんが……」


 確かにローザの言う通りだ。たとえ擬態スキルが存在してローザに化けて殺したとしても、殺す理由がない。それに擬態スキルを持ちうる人間はハヤトの周りにはいなかった。クリスティーナさんもテッテルも二つともスキルがわれている。クリスティーナさんは【予知】【パーティー強化】テッテルも予知のあり方こそ違えど、まったく同じスキルを持っている。もう一つのスキルを持つ余地はない。


 とにかく今日が最後の復讐戦なのだ。余計な争いをしているわけにはいかない。


 それに。


「俺はお前を信じてるよ、ローザ。ちょっといろいろな可能性を考えてただけだ。お前が俺を殺すなんて本気で考えちゃいないよ」


「お兄様……」


 クリスティーナはためていた息をはいた。


「よかったわ、けんかにならなくて」


「私とお兄様は一心同体ですから」そういうローザもどこか安心した様子だ。


「これで全員残りライフは二つになったわけだが。それでもいけるな?」


 ハヤトがそういうと、三人はうなずきあい、こぶしを軽くぶつけ合って、戦いへの意気込みを共有した。




 ローザの諜報によると、テッテルと残りの二人は居場所を移すため、荷物をまとめて馬車に乗り込もうとしているようだった。場所はとなり街に続く道近くの森の中だった。


 ハヤトもことは一刻を争うと判断し、走って向かっていたその道中にあった馬車を、持ち主に有り金のほとんどを渡して奪取、馬を駆った。うまく走れるか心配だったが、何とか言うことを聞いてくれそうだった。ローザとクリスティーナは荷台に乗った。



 ハヤトは大急ぎで目的地へ向かい、そして目的地に近づくと、馬をゆっくりと歩かせ、隠匿スキルでばれないように行動した。土の道を砂埃が舞わないほどゆっくりと動く。



 その時だった。勝てると踏んだのか、それとも一か八かの戦いを挑むつもりなのか、横合いからテッテルの馬車が飛び出してきた。


 ハヤトはしめたとばかりに馬を鞭ではたいた。ガタンと衝撃が走るほどの勢いで馬は急発進し、テッテルの馬車を追う。砂埃が激しく舞った。


 ハヤトは大声で叫んだ。


「ローザ! 前の馬車の三人は狙えるか?」


「サブマシンガンで届く距離になるまでは、この揺れでは難しいです!」ローザはすでにアサルトライフルでテッテルに向かって撃っていたが、揺れが激しくうまくねらえないようだった。この世界のアサルトライフルは連射が遅いのだ。サブマシンガンが使える距離に縮めなければ。


「くそ、もっと早く走れ!」


 そういって鞭で馬をたたく。馬はいなないてややスピードを上げた。荷物の量の差で、徐々にテッテルの馬車に近づいてはいたが、もうすぐ崖際のカーブに差し掛かる。いったん右にカーブしたあと、左側に崖を見て、左にカーブするため、一時的に視界が遮られる。その先は森のため、一時的に遠距離からの攻撃は難しくなる。


 どうする……。ハヤトは考えた。


 答えは一つだった。


「ローザ、クリスティーナさん! もっと飛ばします! しっかりつかまってください!」


「「はい!」」


 一瞬でも気を抜けば馬から落ちそうなくらいの勢いで馬車は走った。荷台がガタガタと音を立てる。そしてローザはサブマシンガンを構えた。テッテルの馬車まであと80メートルくらい。


 いけるか、ハヤトは焦った。ここで何としても仕留めておきたいんだ。頼む。


「早く、もっと早く……!」ハヤトは激しい向かい風の中、ひたいに汗を浮かばせた。

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