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16.撤退戦

 ハヤトは暗いマンションの階段を一段一段ゆっくりと下っていく。【隠匿】を使っているから気づかれないだろうが、この前のような隠密破りの事例もある。慎重にいかねば。それにクリスティーナさんもいなくなってしまったのだから……と考えているうちに、ローザがピタリと足を止めた。ハヤトが、どうした、と聞く間もなく、ローザはハヤトの口を手でおさえて、二人で階段でしゃがんだ。諜報スキルが功を奏したのかはわからないが、この先に敵がいると感づいたようだった。よくよく考えてみれば先ほどのテッテルも階段を下って行った。下でまとめてハチの巣にする作戦に出てきてもおかしくはなかった。


 ハヤトはポーションで回復を図ったものの、負った傷が深く、俊敏な動きができるほど回復しきれなかった。


 ローザの負傷個所の回復のためにもポーションを消費してしまったため、もはやここからは回復なしの普通の戦闘になる。


 もしクリスがこの戦いに参加していないのならば、残りの戦闘員はテッテル含め二人。ローザとハヤト二人固まって行動していれば挟み撃ちにされる可能性がある。【隠匿】を使っているからその可能性は低いだろうが。一度居場所がばれてしまえばまずい。


 ところがハヤトはこのタイミングで嫌な音を聞いた。


 カチ、カチ、カチ。この音は。ハヤトは記憶をたどるでもなく反射的に気づいた。隠匿破りだ。つまりだいたいの場所のあたりを付けられている可能性が高い。もしこの場所ーー階段ーーがばれてしまえば先制攻撃を許す形になってしまう。


 どうする、あまり考えている暇はない。先に撃って出るか、それともばれないように脱出するか。


 そこでローザが動いた。どうやらやる気らしい。なら乗るしかない。後一日とちょっとの辛抱だ。

 多分。



 それは突然のことだった。ローザがハヤトに合図を出さずに階段を静かに駆け下り、そして暗がりに向かってサブマシンガンを連射した。ダダダダダダダダと弾がはじき出され、薬きょうがからりからりと落ちていく。


 しかしその暗がりから光の粒子が飛び散っていく様子はない。


 するとローザの横の扉から人影が飛び出してきた。まずい、もしローザの前方に敵がいたら挟み撃ちになる。ハヤトは階段を駆け下りた。と同時に勢いよく開いた扉から出てきた人影が、ローザに向かってサブマシンガンを撃った、ように見えた。


 いや、たしかに撃ったのだ。


 ただし、その速度は眠たくなるほど遅かった。ハヤトは剣をさやから抜き、サブマシンガンから連射された弾をことごとく切り捨て、至近弾一つローザにはあてさせず、ローザの前を通り過ぎてドアの中にいた人影に向かってハンドガンを撃った。二発。バァン、バァン。音が響いた。ゆっくりと。そして気づくとその人影は光の粒子になって消えていった。


「お兄、さま?」


 ローザはぽかんとして呆けた。兄がいつの間にか目の前にいて、敵を倒していたのだから仕方がない。


「ローザ、もう一人を!」


 ハヤトは気を緩めることなく指示を出す。


「は、はい!」


 そうしてローザは弾を撃った方へとかけていった。ところがその先には誰もいなかった。あの勘の良さ、クリスティーナさんとは違った【予知】をもつテッテルだろう。


 ハヤトもローザに追いついたが、ローザが狙撃スキルを使って何発かアサルトライフルを撃ち終わっていた。もはやことは済んでいた。


 逃げられたのだ。ハヤトも先ほどの妙な時間の流れを感じることもなく、ただ傷が痛むだけでテッテルをしとめきる手段は何もなかった。今回の復讐は成功とは言えなかった。クリスティーナの喪失を考えれば失敗ともいえた。


 テッテル。他で死んでいなければ彼女一人だけがあのパーティーでライフを二つ持っている。他の二人に関しては残り一つ。パーティーはもはや瓦解したといえるが、ハヤトとローザはアサシンとして、全員をエントランスホール送りにするまで、そしてクリスティーナの仇をとるまで、戦いからは逃れられないのだった。

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