12.二人の想い
クリスティーナとハヤトは霊廟に向かった。残りライフが存在する者は霊廟で復活するのが普通だ。
巨大な霊廟に入ると、大広間の壁際に立って心細そうにうつろな視線で前を見るローザを見つけた。恰好は今までのまま、つまり殺された時のまま黒いコートを着た状態だった。血のあとはなくなっていた、
ハヤトはローザに向かって手を振り呼びかける。
「おい、ローザ、こっちだ!」
するとローザははっとしてハヤトの方を向いた。
「お兄様! お待ちしておりました!」しかしローザは少しむっとして、「どうして二人で来られたのですか」とふてくされた。
「ごめんなさい。わたしがいながらやっぱり結果を変えられなかった。私のせいです」
「いいんですよ、クリスティーナさん。クリスティーナさんのおかげで改めて考えることができて、あらためて行動を起こそうという気持ちが生まれたんですから。感謝したいくらいです」
ハヤトはようやく気持ちが落ち着いてきた。
「感謝なんて、そんな」といってクリスティーナは少し気持ちがほぐれた様子だった。
「それにしてもお兄様、ここに来るのはスキルをチェンジして以来でしたね。あの後もう一つのスキルは開花したりしませんでしたか」
ローザは自分の身を案じるどころか兄の様子をうかがった。クリスティーナは恐るべき兄妹愛だと思った。
「開花はしなかったけど、ローザが無事でよかった。たまに魂のままさまようやつがいるって聞いたことがあったからな。そうならなくてよかった」
「お兄様、やはり仇討ちはやってくださいませんか。私のためにも」
とローザが切り込んだ。
ハヤトは視線を落とした。
「ああ、そのつもりでいる。ただクリスティーナさんの言った通り、お前の命が危険にさらされるのも確かだ。残りの命が二つになった今、あえて身を危険にさらすのも、俺はどうかと思うところもないではない」
「そうですか……。お兄様がそう思われるのなら私もお兄様に従いますが、私はかたき討ちをしていただきたいです」と闘志を燃やした。
「ローザちゃん……」
「ローザ、こういうのもなんだが、お前が死んだ今、向こうはかたき討ちを果たしたと思って満足している可能性もないわけではない。俺たちは一度かたき討ちを果たしてるんだ」
と、ハヤトはローザを説得するように言った。ハヤトは思った。ローザがいなくてもアサシンとして活動することはできる。きっと。
「やつらは今ものうのうと生きているかもしれないのに、ですか」
「でも俺たちだって」ハヤトは少し言葉を詰まらせながらも続けた。「まだ生きてるじゃないか」
「ごめんなさい、二人とも」とヒートアップしかけた二人を制するようにクリスティーナが割って入った。「私の予知が機能している限り、あなたたちに死が迫っているかどうかは予測することができます。だからもし死が二人に迫ったらかたき討ちをする、というのはどうかしら」
「なるほど俺は賛成したいところだけど、ローザ。お前はどうだ?」
ローザは両手を軽く握りしめた。しかししばらく何も答えなかった。
それを見て取ったハヤトはローザに近づいて抱きしめ、耳元でささやいた。
「今度こそ俺が助けてやる。お前が望むならかたき討ちもしてやる。だからお前は余計な心配はしなくていい。一人で抱え込む必要もない。俺ができる限りのことをしてやるから、だから俺のそばを離れるな。困ったときは俺を頼ってきただろ? 俺にとってもお前の存在が頼りなんだ。なんなら俺が一人でかたき討ちをしてやる」
そういうとローザはほっとしたようにハヤトを抱きかえした。
「お兄様……。でもかたき討ちには私も参加させてください。私の気持ちの問題です」
「そうか」
ハヤトは自分の中で何かがたぎるのを感じた。それが何かはわからなかったが、とにかく何かローザのためにしてやりたいという思いが切々と募っていった。今まで味わったことのない苦難の中でえた、ハヤトにとって初めての感覚だ。
二人がそっと抱き合う中で、互いが互いの鼓動を感じているような気がしていた。




