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3.図書館ではお静かに・王族へも黙礼で

「ギャ〜〜〜〜〜」


ソフィーがベルンに続いて図書室に入ろうとすると、地鳴りのような叫び声が聞こえた。


図書室はこの数日、常に5人ほどの令嬢たちがいて、チラチラとベルンを見ながら、それでも静かに本を選ぶ様子を見せていた。『図書室では私語禁止。王族に対しても挨拶は黙礼で』という規則もあるくらいで、だれも話しかけてくることもなかった。


しかし、年頃の女の子が集団になると怖いものなんてないに等しい。今日はうわさが広まりすぎて、何十人もの令嬢が王子を待ち構えていた。さらに、興奮が最骨頂になったときに、ババーンと「ご本人登場」となった。何かがはじけ飛んだ女の子たちは、日頃の慎み深さもかなぐり捨てて、人気役者を追いかけるように王子に迫ってきたのだった。


「ギャーーー王子様よ、初めて見たーーー」

「イヤーかっこいいーーー素敵ーーー」


猛獣のような令嬢たちが一気に王子に迫ってくる。ベルンの美しさに頭をやられてしまったのか、女の子達がベルンに触れようともみくちゃになって、ドミノのように倒れている令嬢たちもいた。


ベルンを守らなきゃ!ソフィーは必死だった。


入り口で立ったままのベルンの前になんとか出て、鬼気迫る表情の令嬢達から王子の身体を守ろうと手を広げた。


「なんなの、あんた邪魔しないで」


血走った目をした令嬢が邪魔をするソフィーの腕をぐいっと引っ張ってきて、挙句の果てに別の令嬢にどんと押されて横にふっとんだ。


「いいかげんにしろ!」


ベルンが吠えた。ベルンも状況がつかめず、少しの間動けなかったらしい。ベルンのよく通る低い声は、一瞬で混乱した図書室を制圧した。


「いったい何なんだ。この状態は何だ。誰か説明しろ。」


周りをにらめつけるように見渡し、ベルンの一番前にいた令嬢に


「おい、お前、どういう状況か説明してみろ。」


と言い放った。急に水をぶっかけられたように興奮から冷めた令嬢たちが、ズリズリと後退し始めると、ベルンは横に転がっているフィーが見えた。


「フィー!フィー!どうした、大丈夫か?」


ベルンはすぐに駆け寄って、怪我はないか確認する。


「ちょっと転んだだけ!大丈夫だよ。怪我なんてない」


ソフィーは心配そうなベルンを安心させるように微笑みながら言ったが、ベルンはフィーを抱えながら顔をしかめている。


「シュラウド!」


ベルンはソフィーから目を離さずに近衛兵を呼びつけた。


常に3メートルほど間を開けてベルンに付き従っている騎士である。シュラウドはかなり腕の立つ騎士で、実は機転もきく。図書館に入るときにも先に入って安全を確認したが、王子が入った瞬間、まさか令嬢たちが雄叫びを上げて暴徒化するなんて想像もしなかった。うら若き女性たちが王子に迫ってきても、あっけにとられて反応が遅れた。


「はい!ベルン様!」


「この図書室を直ちに閉鎖。この中にいるものの退室は禁止。こいつらの身分を調べた上で、こんな展開になった事情徴収を命ずる」

「承知!」

「図書室長!」

「はい!」

「今すぐ宰相と国王にこの事態を報告」

「か、かしこまりました」



「そ、そんな、私たちはただ、、、」


令嬢たちは急に現実が見えたようで、さすがにこの状況はまずいと思っていた。私たちは、ただ憧れの王子様をひと目見たかっただけなのに。しかも、あんなに恐ろしい人だとは思わなかったのに。あんな人だと誰かが教えてくれていたら、こんなことにはならなかったのに、、、


絶望的な顔をする令嬢たちをよそに、ベルンはさっとフィーを横抱きにすると図書室からさっそうと出ていった。ソフィーは両手で顔を覆いながら「恥ずかしい」と小さくつぶやいた。

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