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第二章 アイドルと冒険者達

『別に主でもない登場人物の紹介』

センターアイドル:アイドル。

【転移者】ノリコ:異世界でアイドル産業を始めた女性。センターアイドルのボス。

【転移者】ヨシダ:転移者のクズ。

   第二章 アイドルと冒険者達



 以前僕が「冒険者はクソみたいな環境だ」と述懐したが、その理由はざっとこんな感じだ。

 【薬草の採取】報酬300。【壁のペンキ塗りの手伝い】報酬1000。【倉庫の整理】報酬800。【畑の収穫の手伝い】報酬500。【鼠スレイヤー】報酬2000。【お婆ちゃんの相手】報酬300。

 これらが本日この冒険者事務所が請け負った依頼の数々である。はっきり言おう、報酬が安い。更には安定していない。特に何の記述も無い場合、この国の通貨であるソルで支払われるのだが、この街の物価だとまともな昼食を摂るのに大体800から1000かかる。ペンキ塗りよりキツそうな倉庫の整理や収穫の手伝いの方が報酬が安いのは、全て依頼者の任意だからだ。更にクソなのが報酬の1割を手数料や冒険者協会の維持費と称して事務所が持っていく事だ。とはいえ、報酬が見合ってないとしてもやらなければ助成金の出ない底辺冒険者である僕みたいな存在は生活が出来ない。

 こんな依頼ばかりでも、ありがたく思って達成しなければ。

『はぁ~、今日もつまんなそうな依頼ばっかりね。ドラゴン退治とかないの?』

 食わなくても大丈夫なお化けは黙ってろ。

「おはようございまーすっ!」

 本日のメニューの様な感じで依頼が書かれている黒板の前で、さてどれから片していくかと僕が考えていると、いつもやたらテンションの高い新米がやって来た。

『この娘は今日も元気ね~。今の内にペンキ塗りの依頼とか受諾しといた方がよくない?』

 ――お化けに言われて気付いた。彼女がやって来てすぐにイノシシ騒動があったから完全に忘れていたが、もしかしたらこれからは、数少ない報酬を巡って新米と骨肉の争いを繰り広げるのでは……?

 しかしまあ、こんな小娘相手にみっともなくがっつく様な真似はしない。先輩の余裕を見せて、僕は残った依頼でも優雅にこなすとしようか。

 そしてキツい肉体労働だけが残った。



 倉庫の整理は依頼者のおっさんの煮え切らない態度により、やれ「そっちじゃなくてこっちにしよう」だの「引っ掛るから一度真っ直ぐにして」だの「やっぱり横にしよう」だので、想像以上に時間が掛かり体力も使った。これでは午後の依頼は乗り切れない、肉だ、肉を食おう。

『あれ、どうしたの? いつものトコで食べるんじゃないの?』

 道すがら、珍しく生息域を外れて行動する僕に、お化けが疑問符を向ける。まあ、周りに誰もいないなら返事をしてやる事もやぶさかではない。

「ほら、昨日イノシシの残骸を肉屋に持って行っただろ。解体して貰って、使えそうな部分はくれる事になっているんだよ」

 普通はそんな事を頼めば費用が掛かるのだが、過去に依頼で店を手伝った事などもあってか、金はいらないと快く無料タダにしてくれた。手に入れたブツはいつもの飯屋で調理して貰おうと画策し、肉屋の扉を開ける。

「こんにちは、昨日のイノシシなんですけど――」

「すまん、無理だった」

 ――が、店主から返って来たのはその一言だった。

 聞けば、解体しようとはしたのだが、やたらと皮膚が固く、文字通り歯が立たなかったらしい。

 どうしたものかと悩んでいるとある人物がやって来て、どこで聞きつけたのかは知らないがイノシシの残骸を指定し、丸ごと引き取って行ったそうだ。

「なんか悪いなぁ……。だけどよ、あんなもんどうやって狩ったんだ?」

 お詫びとして結構な量の肉を貰ったので、むしろこっちが悪く感じる。それにしても、アレを引き取って行ったという人物が気になるが――

「見ろぉ、この【転移者】サトウ様の新たなる装いを! ダーク(中略)ワイルドボアの毛皮から出来た革鎧だぜ! さあ婦女子共、シックでナウなデザインの装備を身に着けたサトウ様と一緒に、草原を駆け抜けろ!!」

 またお前か。

 噴水広場で『顔面偏差値の高い女性に限り、パーティーメンバー募集中』との看板を掲げたサトウ何某は、『ぬののふく』ではなく新たにイノシシの毛皮を身にまとっていた。無理矢理剥ぎ取ったであろう、大小様々な大きさのそれを紐で巻き付けるという、随分とみすぼらしい姿になっている。これを革鎧と言い張る勇気、自称か他称かは知らないが、流石は勇者だ。僕は彼の視界に入らない様に、遠回りして飯屋に向かった。



 調理代を支払い作って貰った大量の肉料理を何とか胃に貯め込め、午後の依頼に挑むべく一度事務所に戻ろうとした僕は、扉の前に来客が居る事に気付いた。ちょっと待ってて下さいと声を掛け、とりあえず所長に知らせようと中に入る。しかし、責任者は酒瓶片手に寝転がっていた。

「所長、来客なんですけど……」

「あたしが応対するとロクな事にならないし……もう不用意な発言は控える事にしたから………あなたが応対して……」

 昨日のショックが未だ尾を引いているのか、こちらを振り向きもせずにヒラヒラと手を振る所長。いつも以上に役に立ちそうにない。とりあえず事務所の美観を著しく損ねているこの女は仕切り等で隠しておき、仕方なく僕が来客の相手をする事となった。

「お待たせして申し訳御座いません。所長代理の者です。お客様、ご依頼でしょうか」

「どうも初めまして、私はこういう者です」

 そういってスッと差し出された名刺には、『芸能プロダクション:ノリコ 代表取締役:ノリコ ヤマダ』とあった。

「実は私は【転移者】でして。魔王を倒せとこの世界に呼び出されたのですが――私のチート能力『偽りの姫君』は、対象を自分の所持している装備品に一瞬で着替えさせるという実にショッパイもの……。とても戦闘の役には立ちそうもありません。どうした物かと思い悩んでいると、ある日天啓を受けました。聞けばこちらにはアイドル産業が無いらしく、そこで新たに事業を起こし、『偽りの姫君』を用いて歌と踊りの力で世界を救おうと一念発起したのです!」

 熱く語り出したノリコ女史。歌と踊りの力でどうやって世界を救うのかは謎だが、少なくともサトウ何某よりはまともそうだった。

「はあ、アイドル……ですか? それで、ウチにはどういったご用件で……」

「それは近々行う興行で、会場の設置や出店の手伝いなどをお願いしたく――」

 途端、バタバタと慌てた様子で、新たに一人の青年が事務所に転がり込んで来た。何事だろうか。随分と血相を変えている。

「社長大変だ! 【転移者】ヨシダ達に鉄道が襲撃されて運行を停止した。このままじゃメンバーの到着が間に合いそうもない!」

「何ですって!? くっ、ヨシダ・サンめ……私とあの子が魔王討伐をリタイアしたのが、そんなに気に食わないの……!」

「どうしましょう社長、やはり興行を中止するしか――」

「それはダメよ、この活動もようやく軌道に乗って来たのに……。それに、美しき蝶達が煌びやかに舞う瞬間を待っているファンの方々に、申し訳が立たないわ! あの子はこの街に居るから最悪センターは大丈夫だけど、問題は残りのメンバー達ね――」

 ノリコ女史と青年は僕をそっちのけで話し合いを始めた。何やら大変な事になっているようだ。残念だが、一冒険者でしかない僕では力になれそうもない。重ねて言うが残念だ。さて、依頼でも片付けに行くとするか――

「寝坊したわ」

 僕が出て行こうとすると、悪びれもせずに黒子がやって来た。そしていつもの調子で自分のデスクに着くと、窓から差し込む陽光で日向ぼっこを始める。

「ただいまです! 桃色先輩とはそこで会いましたー」

「その桃色先輩っていうの、やめてくんない……? とりあえず顔拭きなさいよ。ほら、じっとしてなさい」

 続けて、頭からペンキでも被ったのかやたらカラフルになっている新米と、桃色ツインテールが続々と入って来る。

「こ、これは……!」

 まずノリコ女史は濡らしたタオルで顔を拭いてやっている桃色ツインテールをじっと見つめ、やがて残りの二人へと視線をずらした。次第に彼女は目を輝かせると、得心した様子で一人頷いた。

「――そう! これよ、これだわ!!」

 どれだよ。

下にある広告の更に下にある星を5個にして評価すると、幸せになれる人がいるそうです。

ちょっとお手本を見せますね。ここをこうして……こうやると……

「自分の作品には評価・感想を送信できません。」

うあああああああああああああ(発狂)

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