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初恋〜捨てられなかった第二ボタン

作者: ネコノコネコ


ちょっと遅れてるだけかな?

でも、ドレス汚したくないしなあ〜。

もしかしたら、、、

でも、まさか、、、ね?

そんな軽い気持ちで検査した。

ドキドキしてる、、、


、、、あっ、、、そっか、、、

嬉しい、、けど、、、

ん〜これは、、、どうしよう、、、


ベッドで眠る彼の顔を見ながら

今日はまだ知らせなくても良いかな?

と思い悩む、、、

だって、最後の日なのだから、、、

知らせたら、きっと止められる。

出かける準備をしながら

バックの隅に手が触れる。

これ、、、、久しぶりに触った、、、

そろそろ

どうにかしないとなあ〜


久しぶりの地元だからかな、、、

モヤモヤしながらも

懐かしい気持ちで

それを手に取り眺めた、、、




貴方に出会ったのは

小学校の入学式、、、

「かっこいい子だな」

くらいの気持ちで目についた。


それは

時間が過ぎていくうちに

「あれ?好き?なのかも?」

と思うようになった。


仲良くなると

「大好き」

が増えた。


まだまだ子供だったから

見ているだけで良かった。

側にいれるだけで良かった。

声が聞けるだけで良かった。

仲良しの女友達で良かった。

だって

それが一番

幸せな気持ちになれる。

この想いは知られない方が良い、、

そう思った。


中学生になり、貴方に初めて彼女が出来た時

「良かったね」

と、自分に嘘ついた。


彼女と喧嘩するたび

「早く仲直りしてきな!」

って、また自分に嘘ついた。


彼女と別れて落ち込んだ貴方に

「また、次があるじゃん、元気出して!」

と励ました。

貴方を好きな女の子はたくさんいたけど

慰めて〜と私にだけ甘えてくれる事が

嬉しかった



いつまでも

貴方と一緒にいられる気がしてた。

ずっと、ずーっと大人になるまで

貴方の側で

友達でも良い、、、

この関係が続くのだと、、、

思ってた。


卒業式が近づくと

貴方の周りはソワソワし始めた。

同級生も後輩も、、、

貴方の第二ボタンを欲しがった。

好きな人にあげるものなのだと

後で知った。


誰かにとられるくらいなら

貴方の第二ボタンが欲しいと思った。


学校が離れても

友達だからいつでも会える。

家も近いし、学校も近い。


でも、、、


これからは

毎日姿を見れるわけじゃない。


貴方に会えなくなる、、、

そう思ったら

第二ボタンじゃなくても

貴方の物を何か一つ

持っていたいと思った。

思っただけ、、、

自分の気持ちを伝える事はしなかった。

出来なかった。

そして自分の気持ちに蓋をした。


卒業式の日

私の所へ

何人も後輩達がきた。


「先輩の第二ボタンが欲しいので、

一緒に行って、頼んでもらえますか?」


それは出来ない

周りの気持ちも

自分の気持ちも

苦しくなるから、、


「一人だけ、特別扱いは出来ないから」


と言って

全て断った。



卒業式も終わり

クラスの集まりも終わり

これでもう最後だからと

たくさんお別れをした。

教室を出て

写真も撮った。

最後だからと告白する子達、、、

みんなそれぞれの別れを形にしてた。


また会えるのにね。

でも、もう会えないかもしれない。

みんな、きっと同じ気持ちだったのかな。

泣いたり笑ったり忙しい。

時間だけが過ぎていった。


貴方の周りには

人、人、人

近づけない。

いやでも目に入る。

今日はもう

話も出来ないだろうな、、、

それにきっと

ボタンもなくなっただろう

それは見たくない。


タイミングよく

「そろそろ帰れよ〜」

と先生方から声がかかる。

なんだか、ほっとしている自分がいた。


荷物をまとめ始めた時

教室に忘れ物をした事に気付いた。


「ごめん、ちょっと教室行ってくるね」


一緒に帰る友達に声をかけて

校庭を離れる。


さっきまで賑やかだった教室

もう誰もいない。

電気は消え

本当に卒業したのだと

淋しい気持ちでいっぱいになる。

窓際の一番後ろ、、、


あーやっぱり置き忘れてた。

全員に渡された一輪のチューリップ。


「忘れ物?」


突然の声に身体が強張る。


あー

もう、、、

心臓がうるさい、、、

声だけで

ドキドキが止まらない


「そっちも?」


入り口に目を向けると、いきなり


「、、、、ほら、、これ、、落とすなよ」


「は?あっ、ちょっ、、、投げるなっ、、、」


⁉️


「ナイスキャッチ!上手いじゃん」


教室の入り口から

窓際まで小さなものを投げてきた。

!!え?!!


「これ、、、何?」


手の中のボタンを見ながら聞く


「第二ボタン」


「誰の?」


「俺様の」


「へー、、、って!!はあ?」


「やるよ」


「誰に?」


「お前に」


「何で?」


「いらないなら捨てて」


「だから、何で?」


あーもうパニックだ、、、

入り口と窓際で良かった。

ドキドキが止まらない、、、


「なんか、意味あんだろ?たかがボタンに」


「みたいね、、、気にしないであげちゃえば?」


自分で言って、胸が苦しくなる。


「いや、それこそ面倒。

他のボタンなんてもぎ取られた、怖いよマジ。」


「あーさっきね、お疲れ、、、モテるのも大変だね」


あんな囲まれた中でも取らせなかったってこと?

もう、頭の中ぐるぐるしてる。


「知らないやつに渡るなら、お前が良い。

それに、、、

四月から学校離れて淋しいだろ?

俺だと思って、持ってろよ」


「、、、、、、呪われそう、、、」


憎まれ口しか言えない自分に腹が立つ、、、


「あはははは!やっぱ、お前に渡して良かった、

サバサバしたとこがずっと好きだったよ、

じゃ、またな」


⁉️⁉️⁉️

ちょっと待て、、、、、

人の気持ちも知らないで、、、、

最後の最後に爆弾落とされた!

混乱して言葉が出て来ない。


笑いながら校庭へ戻る貴方の背中に


「ばあかー変な冗談言わないでよ!心臓止まるわ!」


やっと出た言葉、、、

こんな事しか言えない、、、

貴方は手を振り去って行った。


一人残された教室

まだドキドキが止まらない

苦しい、、、

考えないようにしてきた

蓋をしたはずの気持ちが溢れ出す。



もう毎日会えない

声も聞けない

こんなボタン一つじゃ足りない

一緒に居たい

誰にも渡したくない

貴方の側にいたい


あーそっか、、、

こんなにも心が苦しくなるほど

貴方を好きで好きで仕方なかったのか。

それなのに、、、、



涙が溢れて止まらない

冗談でも貴方からの

「好き」

って言葉が

身体中ぐるぐる回って

気持ち悪い

嬉しいはずなのに

胸が痛い、、、

こんなに苦しいのなら

聞きたくなかった。

考えても

考えても

答えは出ない。


なかなか戻らないからと

探しに来てくれた友達に声をかけられるまで

涙は止まることはなかった。


「どうしたの?なんかあった?」


教室で泣いてた事に驚いてたけど

急に卒業が寂しくなっただけだと

誤魔化した。

この気持ちは誰も知らない、、

知られたくもなかった。


友達が来た事で

少し落ち着いたのか

涙が止まった。


「そっか、、、じゃあもう帰ろう」

「ありがとう、、、」


なにも聞かない彼女に

感謝した。

貴方じゃなければ

こんなにも素直な気持ち言えるのに

左手に握り締めたままの

ボタンを制服のポケットに押し込んだ。


それから

貴方の事

考えるのをやめた。


考えても

考えても


答えは出ないから、、、



卒業してから

貴方に会う事はなかった。


遊びの誘いも

同窓会も

成人式も

時間が経てば経つほど

逢う事が怖くなり

地元からも離れた。


何度も連絡くれたのにね

大人になりきれなかった。


彼氏が出来ても

どれだけ時が過ぎても

貴方を忘れる事はなかったのに




明日私は結婚する。


独身最後だからと

式に参加出来ない友達が

昔よく行った居酒屋で祝ってくれた。

久々の地元だった。

だからかな、、、

ちょっと浮かれてたのかな、、、

突然現れた貴方に

言葉を失った。


駅までの道

みんなから少し離れて

二人で歩いた。

お店では話しも出来なかったから。

でも、、、なにから話していいのかわからない

こんなことになるなら

逃げなきゃ良かったなあ〜、、、、、


「結婚おめでとう」


貴方が呟く。

いきなりそこ?久しぶりとかじゃなく?

なんてツッコミたくなる、、、

モヤモヤしながらも


「ありがとう、、、」


あれ?素直に言えた、、、、

沈黙が続く、、、

隣を歩く 貴方の横顔を見て

やっぱり好きだなあ〜

と思ってる自分が

なんだか可笑しくて

もうどうにでもなれ!

って思ったら


「あのさ、、今更なんだけど、ずっと好きだったよ」


って伝えてた。

驚くかな?

なんて色々考えてたのに、、、


「うん、知ってた」


と笑って言われた。


「、、、もしかしなくても両思い、、だった?」


ずっと、それだけが心のどこかで引っかかってた。


「最後の日に冗談と軽く流されて、、、

その後は会うのも拒否されてましたけどね」


「、、、ごめん、、、

あ〜でもマジで好きだったから逃げちゃった」


「好きだった、挙句逃げられてたの?

今更なのに、、、

どれだけその言葉に傷つけられてんの、、、俺」


は?わざとらしい、、、


「いやいや、貴方もう先に結婚してますから!」


あーあの頃に戻ったみたい、、、

普通に笑って話せる事がこんなにも嬉しい。

どんどん気持ちが軽くなっていく。


「あれ?なんだ、知ってたんだ」


二人で顔見合わせて笑った。



もう駅に着く、、、

少し離れた場所でみんなが待ってる。

そして、迎えに来てくれた彼の姿も見える。


「幸せになれよ、絶対に」


真面目な顔で言ってくれた、、、

それだけでもう十分だよ、、、


「ありがとう!偶然だとしても、今日逢えて良かった。

やっと伝えられたし、、すっきりした、、、

好きになってくれてありがとう!」


やっと笑って言えた、、、

何か言いたそうな顔、、、

でも、もう聞かない、、、

軽く貴方に手を振って、彼の元へ歩き出す。

もう、振り返らない。

携帯を見てた彼に

背後から抱きつく。


驚いた顔の貴方が見えた。

でもすぐに笑ってくれてありがとう。

貴方が安心してくれたのが、

離れた今ではよく分かる。


急に抱きつかれオタオタしてる彼が

なんだか愛おしい。

貴方の姿を見送り、彼から離れる。


「急に、どうした?」


不安そうな彼、、、

慣れない事はするもんじゃないな、、、

彼の手を引いて、友達に紹介する。

みんなにも御礼と別れを告げて

ホテルへと歩いた。


「なんかあったの?」


「どうして?」


「なんとなく、、、機嫌も良いし、、、

ちょっと変」


「ん〜あのね、なんかスッキリしたの」


「そっか、、、じゃあ一緒に居た彼の事は聞かない」


、、、、ちょっと拗ねた言い方、、、、

なんだ、見られてたのか、、でも、もう大丈夫。

苦しくならない。


「じゃあ、教えない、パパ一人で拗ねてなさーい」


あー言ってしまった、、、

気付かないかな?

言葉の意味、、、

ホテルの部屋の前で立ちつくす彼。


「、、、え?、、、パパ?、、、えー⁉️」


良かった、気付いてくれた。

でも、、叫ばれると、なんか恥ずかしい。


「いつ?いつ分かったの?俺、パパなの?」


部屋の中で、一人興奮してる、、、


「今朝だよ、、、式の途中で生理きたら嫌だし、、

ちょっと遅れてたのも気になってたから、

軽い気持ちで検査したの、、、黙っててごめんね」


「知ってたら今日、部屋から出してないよ!

ずるいなあ〜相変わらず。今更だから怒れない。

でも、、、嬉しい!本当に嬉しい!

そうだ、名前、、、早く考えなきゃ!どっちかな?

あっ、それよりも、明日の式大丈夫?

辛くない?親にも知らせないと、、、それから、、」


さっきまで拗ねてたのに、、、

もう興奮MAX!一人でブツブツ騒いでる。

この人で良かったと

嬉しくて笑った。


「え?なんで笑ってるの?あっ、知らせても良い?

誰かに話さないともう落ち着かない、、、」


そう言って、自分の両親の部屋へ行ってくる〜

と、出て行った。


明日の結婚式、、あんなに興奮してて大丈夫かな?

と不安にもなったけど、、、

幸せだなぁ〜って心から思えるから。


今も鞄の奥にひっそりと隠して持ってた

第二ボタン、、、、

もう、強い想いはないけれど、、

捨てるのはやめにした。

だって、、、

産まれてくるあなたが、女の子だったら、、、

これを見せて

ママの「初恋」をきかせてあげたいな〜

パパには秘密で、、、ねっ。

なんて、、

それまで、大事にまた隠しておこうと

笑顔の彼を見ながら

心に決めた。




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