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第3.5章 初めての友達

こちらは、ラストイヤーに何ができる、第3勝を読んでから読むことをお勧めします。

高校生活がスタートし、また新たな仲間と楽しく過ごせるはずだった。大好きなあの人の近くに久しぶりに行くことができて、またときめきの日々が始まる、そう思っていた。それでも、現実は違った。

高校に入って久しぶりに聞いた声。出会った時からすこし低くなった?いや、大人っぽくなったというのが正しい。最初はなんと声をかけようか、というより、彼は自分の言雄覚えているだろうか。もし覚えられていなかったら?それはそれで、また1から関係を始めればいい。中学の時とはすこし違う新たな関係を始めればいいのだ。

声をかけなければ関係は始まらない。彼は自分から声をかけてくれるような人ではないし、いつも積極的になるのはこちらのほう。それでも、そんなふうに接していて、いつか彼が自分の気持ちに気づいてくれたら、それほど幸せなことはない。

そんなことを考えながら、日々の高校生活を無難にこなす岩崎百合。クラスは少人数だし、中学のころからそんなに勝手が変わらないから、すぐに女の子同士で仲良くなれた。

「岩崎さん。今度カラオケしようよ。」

そして、岩崎はルックスのよさもあってか、男子から声をかけられることも多かった。

「カラオケかあ。じゃあ、メンバー集めしようか。」

そんな男子たちの誘いも華麗にかわす岩崎。それはすべて、あの人との再会を果たすため。

そんなある日、岩崎は一つのうわさを耳にした。

「藤浪先輩、卓球すごいできるんだよ。部長のわたしが見とれるぐらい。」

「へえ、そうなんだ。望のお眼鏡にかなう相手なんて、中谷君ぐらいだと思ってたんだけど、そんなところにもいたんだね。」

「なに?sの、わたしが強い人しか相手にしないみたいな言い方」

「あ、ごめんごめん。望は優しいから、そんなことないか」

確か、卓球部といえば2年の高山望み、中谷正樹が中心になって動いている部活だ。大好きな彼は中学の時は音楽をしていたから、音楽系の部活がない高校では部活に入っていないと思っていたのだが、まさか卓球部にいたとは、といった感じで驚きを隠せない。

もし、高山の言う通り、大好きな彼が卓球がすごくできるんだとしたら、自分が彼に卓球を教えてもらうことで、また距離も縮まりそう。話しかけるきっかけがなかったし、1度体育館に行ってみると何かがうまく行くかもしれない、岩崎は直感です思った。

卓球部は基本的に平日は活動していると聞いている。今日早速行ってみることを決意した。


それから数時間後、岩崎は泣きながら体育館の外を一人寂しく歩いていた。体育館に行って、卓球部の彼に会うことはできた。しかし、卓球を教えてくれということに対しての返事はno.彼はこちら側の誘いをきっぱり拒否したのだ。

中学の時のかれじゃない。あのとき、自分を受け入れてくれた彼とは何かが違う。後輩に対して優しい彼ではなく、自分の良さを求める彼に変貌を遂げていたことをその場で知ってしまった。

もう、自分に対して振り向いてくれないのだろうか。前みたいに、一緒に何かをすることもないのか。2年という空白の時間は自分たちの関係をさらに遠いものに変えてしまったことを岩崎は実感する。

「あれ?岩崎じゃね?どうしたんだよこんなところで」

岩崎が一人寂しくグラウンドを眺めていると、一人の男子生徒に声をかけられた。

長身で細身の体格。いかにも力業ではなくスピード勝負にたけていそうな体つき。それでも、信念をしっかり持ってそうな目。そう、たしかどこからどう見ても完璧で、自分とは釣り合わなくて、クラスの中でも自分に対して興味がなさそうな男子がそこにはいた。

「熊谷……。そっちこそ、なんでこんなところにいるの?」

そんな男子が自分に話しかけてきたことにいくらかの疑問を抱きながら、自分の気持ちを隠すように岩崎は話題をそらす。

「なんでって、俺陸上部だから。グラウンドは野球部も使ってるけど、今日は陸上部の練習日だからな。俺がここにいたって、全く不思議ではない。」

「そっか……。そういえば、熊谷は1年生ながら陸上部のエースなんだっけ。すごいなあ」

岩崎は、目の前の男子のことをよく知らない。同じクラスで、陸上部で、周りから人気。それ以外のことを何も知らない。ほかのメンバーとは違って彼から誘いを受けた小尾はないから、一緒に出掛けたこともない。

「いやいや、まだ始まって1か月だからエースってことはないな。ていうか、今度の大会で上位とって国体にでも呼ばれない限り、俺はまだまだひよっこだ。」

なぜ彼とは絡んだことがないのか、岩崎は冷静に考える。すると、彼はスポーツ以外に興味はなくて、きっと自分に興味なんて持っていないのだろうという結論に至った。でも、それじゃあ、なんで今日は話しかけてくれたんだろう。すぐに別の疑問が浮かんできた。

「やべ。おれ、トレーニングの途中だったんだわ。練習戻るわ。」

「待って。」

岩崎は必死に彼を呼び止めてから我に返る。今の自分はいったいどうしたんだ?なぜ、彼を呼び止めたんだ?自分の気持ちに対しても疑問が浮かんでくる。

「今の岩崎は、まるで大好きな人に振られたような顔してるよな。いつもクラスの人気者な岩崎はどこへ行ったんだ?て感じ。違うか?」

「え……。そんなこと…あるような、ないような。別に、ふられてなんかないし。ただ、ちょっと冷たくされただけで。」

「そうか。岩崎の好きな人って、校内にいるんだろ?なんなら俺が協力してやろうか?」

「いいよ」

目の前のクラスメイトは、びっくりするぐらい自分の気持ちを見通してくる。こちらは何も言っていないのに、まるで、「お前のことは何でも知ってるよ」て感じで、岩崎に問いを投げかけてくる。

「はは、そうだよな。いつもの自信たっぷりな岩崎なら、こんなちょっとしたことで倒れるようなことないもんな。だって、クラスメイトからの誘いをうまく受け流したいぐらい、その人のこと好きなんだろ?その気持ちと、岩崎の行動力があれば、いつかその人も岩崎の気持ちに気づくんじゃないかな。」

熊谷は、岩崎に対してにtt笑う。その表情はまるで、「期待してるよ」て伝えているかのようだった。岩崎もそんな熊谷の表情を読み取ったのか、さっきまでの泣きそうな顔とは違い、あこがれな彼を追いかけて奮闘するときの笑顔になる。

「わたしと初会話なくせに、なにその偉そうな言い方。わたしの気持ちからかけ離れてるんだけど。まあ、せっかく応援してくれるっていうから受け取っておこうかな。」

岩崎は、あえて思っていたことと逆の言葉を彼に投げていた。ここで素直になったら、彼に余計な期待をさせてしまうかもしれない、自分が思っているのはあの先輩だけだよという意味を込めて目の前の彼をわざと突き放す。

「嫌いじゃないぜそういうの。ま、俺は応援してるとでも受け取ってくれればいい。同じクラスだし、クラスラインから連絡先もある。なんかあったら、いつでも連絡くれよ。」

わざと突き放してみても、目の前の彼のやさしさは変わらなかった。岩崎は、この学校に来て初めて、本当の友達になれそうな相手と会話を交わしたのだ。

「んじゃ、今度こそ俺いくな。こんなところにいると、また誰かに絡まれるぞ。とはいえ、俺の有志を見てってくれるのは大歓迎なんだがな。」

そういうと、岩崎の返事を待たずに手を振ってから熊谷が走ってグラウンドに戻っていく。結局、素直じゃないのは岩崎だけではなく、熊谷も同様だったようだ。


グラウンドに戻った熊谷は、先ほどのことを思い出していた。クラスの中で話したかったけど話せなかったあこがれの岩崎百合という存在。別に、自分は話しかけるのが苦手とかそんなんではない。事実、彼女と初めて話せた先ほどは我ながらうまく会話できたと思っている。

ただ、今までわかっていたけど結局変えられなかった事実。岩崎には好きな人がいる。しかも、その人は岩崎が何年も思い続けている人。当然、高校に入ってから彼女に注目するようになった自分がとても割り込めるわけもなく。

岩崎はもとから人気が高くて、クラス内、先輩からも多数の誘いを受けていた。それでも、岩崎がその誘いを正面から受けたことはない。いつも受け流しているように熊谷の目にはうつっていた。

ならばこのまま彼女と話すことはなくあきらめることが最善の選択だろう、熊谷はそう考えて彼女とはかかわらない方針でいた。

それなのに、陸上部の練習中にたまたまグラウンドの前を通りかかり、そこでたたずんでいた岩崎はなんだか寂しそうな顔をしていて、熊谷には、彼女が好きな人と何かあったのだとすぐに理解することができた。

ずっと岩崎を見ていた熊谷は、今声をかけるしかないと感じ、岩崎に対して声をかけた。がらにもなく、本心でもなく、励ますようなこともした。

熊谷の本心とは裏腹に、岩崎は笑顔を取り戻し、再び好きな人を追いかけることを選んだ。

彼女の役に立てればそれでいい。そう自分に言い聞かせながら、一連の流れを振り返った熊谷は、もくもくと陸上部のメニューをこなすべくトレーニングに戻っていった。


われながらすごいことを言った自信があります。

岩崎の良き理解者になった熊谷ですが、実は岩崎を陰から追いかけていたのです。

「好きな人が幸せなら」て思うことありますよね。

でも、そう思うためには相当な覚悟と相手に対する尊敬が必要なんですよね。

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