第五話:出会いの始まり
放課後。
私はボーっとピアノを弾いた誰かのことを考えていた。
今思えばアレは私に向けて弾かれたものなのかも知れない。
なーんて自分に都合の良いことを考えてみたり。
でも、私の歌っていた歌と妙に合っていたのはもしかしたら・・・まぁ、有り得ないだろうけど。
「ハーーッカ・・!ハッカってば!!!」
「ほ、ほぇ?!何?!」
私の友達の柊がいつの間にか目の前にいた。
「ほぇじゃないでしょ!さっきからずっと呼んでるのにあんたは・・・。」
「あ、うーん、ごめんごめん・・・。」
ハッカと言うのは私のあだ名。白香なのに担任に白香さんって呼ばれたことから呼ばれ始めた。
・・・まぁ、どうでも良いのだけど。
「ま、いいよ。で、今日は分かってるよね?」
「え?何かあったっけ?」
「合コン!ハッカ行くって言ってたじゃん!」
「え?私そんなこと言ったっけー・・・?」
柊がほら見ろ!と携帯を見せる。
日付は一週間前、・・・あぁ!思い出した。眠くて適当に「あーうんー、わかったー」ってだけ送ったんだった!・・・。
アレは合コンの話だったんだ・・・。
「えーっとぉ、私やっぱりキャンセルでー・・・。」
「ダメに決まってるでしょ!今更人数変えられるわけないじゃん!!大丈夫だって!今回うち頑張っていい人集めたから!」
いい人とか関係ないのに・・・。・・・だって、あの雰囲気が好きじゃない。
それに、今私が気になってるのは別の人だもの。わざわざそんなところに行かなくても・・・。
「えーっと、一番年上の人だとー、何だったっけ、金融関係の仕事に就いてるとか言う人とかー。
他の学校の人だけど何かモデルやってる人とか!びっくりじゃない!?私の人望っ!」
あーあー。どうでもいいよー・・・。
「えと、あっ!ごめん!私、今日は少し用事が・・・。」
「あっ!何て今思いついたような顔して信じられるわけないでしょ!大丈夫だって!さっき言った一番年上の人が全部払ってくれるんだって!
さ、行こっ!!」
そう言って柊は私の腕を掴み教室から引っ張りだした。
別に私お金のことはどうでもいいんだけどー・・・。
柊には敵わない。いつもこんな調子で丸め込まれてしまう。
柊は私を引っ張りながら廊下を走って言う。
「ほらっ、あと、この学校で何か音楽ですごい人とかも来るんだよ?あー、でもそれはどうでもいいかぁ。」
「ホントにッ!?」
柊は私の過敏な反応に少し驚いた顔をして言った。
「あー、うん、何かピアノで全国のコンクールで賞を取ったとかどうだとか・・・。」
もしかしたら、それはあの人かもしれない。
きっと、きっとそうに違いない。
「ハッカ?」
急に黙り込んだ私に心配したのか柊が私の顔を覗く。
「大丈夫っ!さぁ、行こっ!!!」
「おっ!何か急に乗り気だね?」
期待に胸を膨らませる私は、柊と共に学校を飛び出した。
こんにちは、甘味です。
前回の更新から大分経ってしまいました。
設定を纏めたデータを失ったりで滞ってしまいました。
今日何とか新たにストーリーが自分の中で繋がったので、
更新を再開していきたいと思います。
では、これからも『勿忘草の歌を聴く』をよろしくお願いします。