第三話:心の別れ
放課後、私はいつものように、
彼の机の元で彼に思いを馳せていた。
いつまでこんなことをしているんだろう。
こんなことをしても何にもならないのに。
そんな事も考え始めていた。
でも、どうしたら良いのかわからない。
また彼と話して、また彼と遊んで、また友達になる自信がない。
彼は引っ越して来た日から私に対して、
何か変わったものを見るような目しか向けてはくれなかった。
そうだよね・・・いきなり『初対面』の人にあんな風に話されたら、驚くよね・・・。
変だと思うよね・・・・・・。
私はまた涙を流していた。
彼のことになると感情がひどく表面に出てしまう。
・・・・・・トーン・・・・・・♪
ピアノの音。
長く続く一音を初めの音として弾かれたその曲は、
草木を優しく揺らす風のように滑らかで、それでいてどこか寂しそうな曲だった。
誰が弾いているんだろう、そう思った私は少し離れたところにある音楽室へと向かった。
音楽室へ近づくほど、その曲は私の耳に響き、脳に響き、心に響いた。
時に曲調を明るく変えたかと思うと、その明るさは幻だったかのようにすぐに消え、
静かな曲調に戻った。
よく分からない曲・・・でも、そんな曲に私は心を揺さぶられていた。
音楽室の目の前まで行くと、足音に気付いたのか、
ピアノの音は止み、ガタンッ!とピアノのしまう音を立て、
ドタドタと裏口から出て行ってしまった。
どうやら先生か何かと勘違いされてしまったようだ。
こんな時間にピアノを弾いていたのがばれたら怒られてしまうだろうから。
誰だったのだろう、
裏口を出るときに見えたのは、男子の制服だった。
音楽部だろうか。合唱部だろうか。
誰とも知れないその人に、
私は会ってみたいと感じていた。
私はその時気付いていなかった。
初めて彼との唯一の繋がりである机から、
自ら手を離してしまっていたことに――――――