プロローグ
春の暖かい日差しを浴びながら、
少年は少女の歌声を聴いていた。
その歌声は、辺りの野に咲く勿忘草のように可憐で、
それでいて柔らかだった。
歌い終えたとき、少女は涙を流していた。
少年も同様に涙を流していた。
別れのときが近づいてきたからだ。
少女は、「また会おうね。」とだけ言った。
少年は泣きじゃくり、何の言葉も返すことができなかった。
少女は自らの涙を抑え、大きな声で泣く少年の濡れた頬を優しく撫でた。
少年はその腕をグッと掴み、震える声で言った。
「一緒に居て。」と。
少女は、少年のもう片方の手を取り、
そっと唇をつけた。
そして言った、「またね。」と。
そして少女は、少年の手を優しく自分の腕からはずし。
後ろを振り向かずに走っていった。
暖かい風に揺れる勿忘草の咲く野には、少年の泣く声だけが響いた――――――
こんばんわ、甘味です。
自身初の恋愛小説です。主人公の心情や、
それに対したヒロインの気持ちを感じ取っていただきたく思います。
いない暦=年齢の私が恋愛小説を書くのって
ちょっと虚しい気もしますが・・・。
どうか連載中の『あおしろ』『勿忘草』、
完結済みの『パラベル』を
よろしくお願いいたします。